サン=レミ教会も出展 「佐伯祐三 自画像としての風景」展開催中、赤いレンガ壁の空間で名作の数々を

生誕125年を迎える夭折の洋画家・佐伯祐三(1898〜1928)の画業をたどる企画展「佐伯祐三 自画像としての風景」(主催:東京ステーションギャラリー、読売新聞社)が東京ステーションギャラリー(東京都千代田区)で開催している。厳選した代表作100余点が一堂に並ぶ、東京では18年ぶりとなる本格的な回顧展。会期は4月2日(日)まで。

佐伯祐三は現在の大阪市北区中津出身。東京美術学校を1923年に卒業後すぐにパリに留学。本格的画家として活動したのはわずか6年だが、短くも鮮烈な生涯の中で描かれた作品群は今なお強い輝きを放ち、見る者の心を揺さぶらずにはおかない。同展は、大阪中之島美術館が所蔵する国内最大の佐伯祐三コレクションを核に、全国の美術館と個人所蔵家から集めた多くの作品で構成され、佐伯が描いた3つの街(パリ、東京、大阪)での足跡を追いながら、独創的な作品の造形性について検証する。

《ガス灯と広告》1927年、東京国立近代美術館

会場は3つの章とプロローグ、エピローグで構成されており、ときには年代を前後させながら佐伯の作風の変遷や表現、技術にとくに着目してその画業を追っていく。そこには、夭折した伝説の天才画家とは別の顔ーー街に生きた都市風景画家としての作家像が浮かび上がってくる。

《下落合風景》1926年頃、和歌山県立近代美術館

プロローグで画学生時代に繰り返し描かれた自画像を紹介した後、第1章「大阪と東京」では、2年間のパリ滞在を経て、1926年に帰国してからの1年半、集中的に取り組んだ2つの画題、「下落合風景」と「滞船」シリーズを紹介する。パリとは異なる風景に向き合う中で、独自の視点で、電柱や帆柱などから中空に伸びる線を見出していく表現に迫る。

《コルドヌリ(靴屋)》1925年、石橋財団アーティゾン美術館

第2章「壁のパリ」では、《コルドヌリ(靴屋)》などのこの時期の代表作をはじめ、圧倒的な存在感を放つ壁面の数々、その美しく複雑なマチエール(絵肌)を鑑賞することができる。パリの下町の店先を題材に、重厚な石壁の質感を厚塗りの絵具で表現する独自の作風は圧倒的な存在感を醸(かも)し出している。

《モランの寺》1928年、東京国立近代美術館

第3章「ヴィリエ=シュル=モラン」では、28年2月に佐伯が滞在した、パリから電車で1時間ほどの小さな村・モランで描かれた作品が展示されている。この村で佐伯が繰り返し描いたのが、村の中心にあるサン=レミ教会だ。佐伯はこの教会を角度や距離を変え、教会堂の構図を確かめるように何点も書き出している。虚飾のない白い石壁の教会は、簡素でありながら重厚で、全体の構造を太く黒い線で輪郭を取り、筆の勢いによるデフォルメが建物の存在感を強める。モランでの創作は、自らを追い込むような厳しい態度で挑み、体力を消耗させてしまうが、この地は自身の風景画に新しい方向性をもたらす源となり、珠玉の作品群を生み出している。

3月にモランからパリに戻った後、何かに憑(つ)かれたかのように猛烈な勢いで制作を続けるが、持病である結核が悪化して床に臥(ふ)せる日が続くようになる。そんな中で描かれたのが、《郵便配達夫》《郵便配達夫(半身)》《ロシアの少女》《黄色いレストラン》《扉》。これらを描いたのち、筆をとることができなくなり、精神的にも追い詰められ、8月16日にパリ郊外の病院で亡くなった。同展では、エピローグとしてこれら5点全てが展示されている。

《郵便配達夫》1928年、大阪中之島美術館

会場となっている東京ステーションギャラリーは、開館以来、東京駅の歴史を体現する赤レンガ壁の展示室をもつ美術館として親しまれている。重厚なパリの街並みを描いた佐伯の数々の名作を、赤レンガ壁の空間で味わえるのも今回の展覧会の見どころの一つとなっている。同会場での開催終了後は、大阪中之島美術館に巡回される。期間は4月15日(土)〜6月25日(日)まで。

開館時間は前10時〜後6時(金曜日〜後8時)※入館は閉館30分前まで。入館は、一般 1,400円/高校・大学生 1,200円/中学生以下無料*障がい者手帳等持参の方は100円引き(介添1人は無料)。*学生の方はご入館の際、生徒手帳・学生証を提示。日時指定券購入はこちらから。

 






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