オルガンで賛美歌は「正統」でない? 平林冬樹 【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】

Q.礼拝の賛美歌でオルガンを使うのは、そもそも「正統」ではないと聞いたことがあります。本当ですか?(20代・女性)

現代の礼拝式で歌われる聖歌や賛美歌の伴奏には、一般にオルガンが圧倒的に多く使用されているようです。また礼拝式の前後に演奏される音楽も、オルガンが圧倒的です。これは、中世から広まったオルガンによる教会音楽の伝統の影響といわれます。

旧約聖書の時代、神への賛歌には、いわゆる竪琴が使われたようです(詩編137編)。詩編には、竪琴に合わせて歌われたであろう曲が、かなりあります。神に捧げる音楽には、弦楽器のほかラッパなど管楽器も使われたようです。

イエスの弟子たちがユダヤ教から離れた時から、教会の礼拝で歌われる曲は、無伴奏で歌われるものが多くなったと考えられます。ローマ帝国による迫害下の教会では、伴奏付きの曲を大きな声で歌うわけにはいきません。長い迫害が終わった後も、西方教会では、単旋律・自由律による無伴奏の聖歌が主流になり、そうした形式のグレゴリオ聖歌と呼ばれる歌がカトリック教会の公式な聖歌になりました。東方教会の礼拝式の歌は、今でも無伴奏です。

プロテスタントは、ラテン語で歌われるグレゴリオ聖歌を採用せず、民衆の歌を聖歌に転用する道を歩みました。伴奏は、当時どの教会にもあったオルガンを用い、それが定着したようです。何をもって賛美歌の伴奏の「正統な」楽器とするかはあいまいですが、少なくとも現在のプロテスタント教会が誕生した16世紀初頭から、賛美歌の伴奏には一般的にオルガンが用いられていたと見て間違いないでしょう。

なおカトリック教会では、礼拝式で使用される楽器は、長くオルガンが独占的な地位を保ってきました。しかし50年前に開かれた第二バチカン公会議では、オルガンが第一の座を占めているものの、部分教会の責任者の裁量によって、他の楽器も使用できるようになりました。

*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。

ひらばやし・ふゆき 1951年フランス、パリ生まれ。イエズス会司祭。上智大学大学院神学研究科博士前期課程、教皇庁立グレゴリアーナ大学大学院教義神学専攻博士後期課程修了。教皇庁諸宗教対話評議会東アジア担当、(宗)カトリック中央協議会秘書室広報部長、 研究企画部長などを経て、日本カトリック司教協議会列聖推進委員会秘書、上智大学神学部非常勤講師。

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