カトリック社会司教委員会 関東大震災100年で「朝鮮人虐殺に関する声明文」 「過去の歴史見つめなおす時」

横浜市中央図書館http://www.city.yokohama.jp/me/kyoiku/library/shinsai/index.html, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1517189による

カトリック日本司教協議会社会司教委員会(勝谷太治委員長)は関東大震災から100年目の9月1日、同委員8人の司教による連名で「関東大震災朝鮮人虐殺に関する声明文」を発表した。

声明は、日本政府が朝鮮人、中国人犠牲者について「名前や人数などの実態を調査中と答えたまま明らかにして」おらず、「事実関係を把握できる記録が見当たらないため、回答は困難、真相調査も考えていないとの答弁をくり返してい」ることを非難した。

カトリック教会でもフランシスコ教皇が「カナダ訪問中の2022年7月25日、先住民の子どもたちを親から引き離し、寄宿学校での虐待を含む同化政策にカトリック教会も関与していたことについて謝罪」したことを引き合いに、多くの国で「国家による過去の重大人権侵害の歴史を認め、謝罪し、記憶にとどめるという動き」が強まっていることに言及。

「日本社会に深く根づいた差別・排外的感情が、今日の在日外国人に対するヘイトスピーチを助長している」ことを憂慮した上で、「ヘイトクライムの実態調査を行い、包括的な人種差別禁止法の制定を含む、ヘイトクライム根絶のための実効的な対策をとること」「国家責任としての真相究明、犠牲者遺族への謝罪と補償、資料の開示と恒久的な保存、そしてこの事実についての歴史教育の拡充を実施すること」などを求めた。

 声明の全文は以下の通り。


関東大震災朝鮮人虐殺に関する声明文

「過去をふり返ることは将来に対する責任を担うことです」(聖ヨハネ・パウロ二世)

 1923年9月の関東大震災では多くの朝鮮人、中国人、労働運動家、また朝鮮人と間違えられた日本人などが日本の軍隊や警察、民衆により虐殺されました。とりわけ朝鮮人、中国人犠牲者について、日本政府は名前や人数などの実態を調査中と答えたまま明らかにしていません。国会においても当時の政府や軍、警察などが主導した朝鮮人虐殺についての事実認定とその後の調査、当時の対応に関する現政府の認識などが繰り返し問題提起されていますが、政府はそのたびに、事実関係を把握できる記録が見当たらないため、回答は困難、真相調査も考えていないとの答弁をくり返しています。

 しかし虐殺の実態の記録は、真相の究明に当たってきた各地の少なからぬ良心的な市民と研究者の努力により蓄積されています。それによれば、政府及び軍隊、警察などによる虚偽の情報に誘発されて自警団などが虐殺におよび、さらに事件の隠蔽にも日本政府が関与したことが明らかになっています。植民地化された朝鮮半島において何重にも理不尽な仕打ちを受けた果てに日本にやってきた人々が、突然、狂気に駆られた群衆に取り囲まれ、無残に命を奪われたことの無念はいかほどだったことでしょう。

 現在、多くの国では、国家による過去の重大人権侵害の歴史を認め、謝罪し、記憶にとどめるという動きが強まっています。不当な歴史的事実とその被害者に向き合うことは、人間の尊厳、人権に深く関わる課題です。ローマ・カトリック教会においても、フランシスコ教皇はカナダ訪問中の2022年7月25日、先住民の子どもたちを親から引き離し、寄宿学校での虐待を含む同化政策にカトリック教会も関与していたことについて謝罪しました。

 朝鮮人の虐殺については、日本の朝鮮半島植民地化、それに対する朝鮮民衆の抵抗、「不逞鮮人」弾圧という歴史的文脈において引き起こされた事件だといえます。ここから、わが国では朝鮮半島の人々へのいわれなき差別感情が醸成され、現在も朝鮮学校への公的機関による差別や、社会における排外的な言動が蔓延しています。

 こうした日本社会に深く根づいた差別・排外的感情が、今日の在日外国人に対するヘイトスピーチを助長しているといえます。国連・自由権規約委員会は、2022年11月3日に、日本政府が、ヘイトクライム(差別によって引き起こされる犯罪)を明確に犯罪とする措置をとっておらず、被害者に十分な救済が与えられないことを懸念しつつ、ヘイトクライムの実態調査を行い、包括的な人種差別禁止法の制定を含む、ヘイトクライム根絶のための実効的な対策をとることを求めています。

 私たち社会司教委員会は、日本政府に対して、震災100年を迎える今年、多様性のなかですべての人の人権が尊重され、誰をも取り残すことのない社会を世界に示せるよう、関東大震災朝鮮人虐殺の歴史に真摯に向き合うことを強く要望いたします。そのためには、国家責任としての真相究明、犠牲者遺族への謝罪と補償、資料の開示と恒久的な保存、そしてこの事実についての歴史教育の拡充を実施することが急務と考えます。また小池百合子東京都知事には、東京都墨田区で毎年開かれている犠牲者追悼式への追悼文送付の再開と追悼式典への支援を求めます。

 私たち社会司教委員会は、カトリック教会に属する信徒の皆さん、日本国内のすべての市民の皆さんにも呼びかけます。関東大震災から100年目の今、改めて過去の歴史を見つめなおす時が来ています。なぜあのような虐殺が起こり、そして今日なお、外国人差別はなくならないのでしょうか。私たちはいつも日本にいる外国籍の方々の「よき隣人」だったと言えるでしょうか。過ちがあるなら、その気づきと回心の恵み、そして導きを、主なる神に切実に祈り求めたいと思います。差別や排除のない、誰も取り残すことのない社会を築くために。

カトリック日本司教協議会 社会司教委員会

勝谷太治司教(委員長)
成井大介司教(副委員長)
中村倫明大司教
松浦悟郎司教
ウェイン・バーント司教
山野内倫昭司教
エドガル・ガクタン司教
森山信三司教

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