文化協会がオンラインで講演会 『キリスト教教義学』著者・近藤勝彦氏に聞く 「教義学は〝神への応答的賛美〟」

日本キリスト教文化協会(大島力理事長)は3月1日、元東京神学大学学長の近藤勝彦氏(日本基督教団銀座教会協力牧師)=写真=を招き、オンライン講演会「現代を生きるキリスト教信仰『キリスト教教義学』(上・下)完成を記念して」をYouTubeで公開した。講演はインタビュー形式で行われ、森島豊氏(青山学院大学宗教主任)が聞き手を務めた。

体系的なキリスト教教義学の本格的著作は稀で、日本のプロテスタント神学の歴史に大きな功績を残すものと注目されている。近藤氏は一般家庭に育ち、若いころに父親を亡くした経験からキリスト教信仰に触れる。悩み抜いた青春時代や、カール・バルトの著作を通して得た神学的経験など、人生を振り返りながら『キリスト教教義学』への思いを語った。

まず教義学について、「キリスト教信仰の中心的な部分と幅のある現在の教会とキリスト者の生きている信仰を、筋道立てて言い表す努力」と定義づけ、「常に挑戦されるべき課題」「神への応答的賛美」であるとした。

著書の特徴としては「歴史的啓示」を強調。20世紀神学の中では、「上からの神」「宣教されるイエス」などに焦点があたり、歴史の中で誕生し、十字架の死から復活に至るイエスがやや希薄化されてきた。しかし、同氏にとっては歴史に存在するイエス自身が重要であるとの認識を持つ。「歴史学的なアプローチから神が分かるとは言えないが、イエスその方の存在については認識し続けることができ、歴史的イエスキリストの実在を問い続けることは、決して神の子イエスへの信仰から離れるものではない」

もう一つの特徴として、従来の教義学にはなかった伝道論が教会論の中に含まれているという。20世紀初頭にカール・バルトらが伝道の喪失を指摘しながらも、それをキリスト論的に消去してしまったことを指摘し、「キリスト論的人間論だけではなく、神のみわざに参与する、聖霊論的人間論としての伝道を考える。それは協力者を必要としない神ご自身があえて協力者を立て、その存在を喜んでくださる。その神の喜びの中で人は働いていくのだという理解である」と語った。

さらに教会が、教義学が世界を回復すること、キリスト教的世界政策の可能性についても述べ、キリスト教神学は自然的世界、人類的世界の中に神を失っている側面があると指摘。「神が働かれる場を限定しないこと、人類の歴史という流れの中にも生きて働かれる神がいることを意識することは、世俗主義に押し戻され、心の中の神、また信仰になりがちな現代キリスト教への挑戦でもある。神の場を魂に限定して、社会や歴史、自然世界での神の働きを意識しないでおくことはできない」とし、神の働く現実として、この世界の現実理解というのを深めていく必要性を語った。

「世界に働く神と、世界を完成する神が個人的なレベルから宇宙論的レベルまでどう希望を与えるのかを探求すること。それこそが教義学という学問的表現の中に土台をおいた上でなされるみ国の到来を待つ教会の世界政策と言える」

最後に近藤氏は「100年後のキリスト者へ」へのメッセージとして、「まだ100年後にみ国の完成がなければ、神学には必要な場所がある。聖書の証言、神学的な過去の営みを尊重しつつ、神への応答的な賛美を新しくチャレンジングに表現してほしい」と結んだ。

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