東京神学大学×東京基督教大学・前編 「見えざる壁」越えて 神学生有志が共同企画 交流と神学議論を目的に

東京基督教大学(TCU)と東京神学大学(東神大)の神学生有志たちによる座談会「TTT」が10月31日、日本基督教団富士見町教会(東京都千代田区)で開催された。両校の学生主体による交流と神学議論のために企画されたもので、教派的背景を異にする神学校同士が共同で主催したのは近年でも稀(まれ)。

ともにTCU大学院2年である福島慎太郎さんと岸ゆたかさんの会話が発端。福音派の教会に所属しつつ日本福音ルーテル教会で研修をする福島さんは、福音派におけるエキュメニカル運動が学生レベルで発生することが必要であると考えていた。対する岸さんは日本基督教団に所属しつつ福音派の大学院で学ぶ学生。NCC(日本キリスト教協議会)の中での福音派との「見えざる壁」を感じており、いつかそれを取り払う必要があると考えていた。この両者の思いが一致し、ともに友人であり、東神大3年の吉岡優介さんへ連絡を取ったところ開催が決定。9月に初めてのミーティングを行い、急きょ1カ月足らずで本企画を成立させた。当日は両校関係者を含め約30人が参加した。

聖書理解の違いに最大の壁
開催はあえて宗教改革記念日に

「TTT」には三つの由来がある。一つ目はTCU、TUTS(東神大の英語表記)、Theologyの頭文字である「字義的意味」。二つ目は神学の隔たりはあるとも、互いに主の前に罪人であるとのことから、イエス・キリストが罪人をパラダイスに導くと宣言したゴルゴタの丘をイメージした「福音的アレゴリー」。三つ目は「T」をルターがヴィッテンベルク城付教会で『95カ条の論題』を提示する際に使用したハンマーをモチーフに、今こそプロテスタント教会におけるプロテスタンティズムが必要であるという「歴史的アレゴリー」。それに伴い、本企画は宗教改革を記念する10月31日に開催された。

TCUの登壇者は福島さん、福士堅さん(大学院1年)、塩原美小枝さん(3年)。また閉会礼拝の説教を岡村直樹さん(TCU神学部教授)が担当した。東神大の登壇者は吉岡さん、浅見和花さん(4年)、小林光恵さん(3年)。また開会祈祷を小泉健さん(東神大神学部教授)が担当した。

開会祈祷で小泉さんは「両者の間に存在する偏見や誤解が解け、主の召しのために一致することが出来るように」と祈った。その祈りが聞かれるように、両校の学生は胸襟を開いて議論を交わした。

初めに両校の間で決定的に異なる点として「実践神学」科目の取り扱いについて語られた。4年と大学院1年のみ夏期研修に参加する東神大に対し、TCUでは1年から大学院2年まで連続で参加を申し込むことができ、多い生徒では6回も経験することとなる。他方、人文科学の科目においては東神大が充実している印象。TCUにない科目として哲学思想史や化学、法学や生命倫理などが講じられているとのことであり、今後TCUでもそのような学びが増えればとの参加者の声もあった。

TCUの桑原善道さん(大学院2年)は、「各校の他宗教に対する学びの特徴は何か」と質問。TCUでは「東洋思想」という科目が佛教大学で学んだ大和昌平さん(TCU神学部長)に講じられているが、そこでの学びは仏教を通じての日本人の精神理解とそこから如何なる伝道が有益かについて論じるもの。他方、東神大では「宗教史」という科目が講じられており、そこではユダヤ教やイスラーム、仏教について歴史的に広く取り扱い理解することを目標としている。この点については学生たちも驚いており、同じ「他宗教への理解」ということが起点にありつつも、その帰結点においては各校の特色が見られるものであった。

また両校の最大の壁は「聖書理解にあるのでは」と声を上げたのは福島さん。神学校というよりも教会や自身に近いコミュニティで耳にしたことと前置きしつつ、「福音派では十全霊感ということを強調しており、それについては個人としても特に異論はない。他方、それ以外の聖書理解を即座に『リベラル』と捉え、自分たちとは相容れない存在であると否定的に論じる傾向があり残念だ」と率直な意見を述べた。それについて東神大側の学生は、「私たちはそれ(十全霊感)を完全には採らないかもしれない。だが聖書は神の言葉であると信じている。大切なのは個人や共同体の一つの意見のみを主張するのではなく、それを土台により広い視野を持ち対話を続けることではないだろうか」と返答した。

今回の「TTT」における最大の議論はこの各校の聖書理解の相違点であった。(次号へつづく)

東神大からの登壇者

*「TTT」は今後、半年に一度のペースで開催を計画中。日本の宣教と神学研究の未来のために、交通費、会場利用費への献金を呼び掛けている。「TTT献金」と明記の上、千葉興業銀行(ちば興銀)店番号490 1121779「フクシマシンタロウ」まで。

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