安倍元首相の「国葬」が27日に行われるのを前に、平和をつくり出す宗教者ネット(事務局=日本山妙法寺内)は22日、参議院議員会館(東京都千代田区)において「安倍元首相の『国葬』閣議決定撤回を求める諸宗教者共同声明」賛同者数集約集会を開催した。キリスト教や仏教の関係者ら30人が参加した。
同ネットでは、安倍元首相の「国葬」を、国民にも、国会にも問うことなく一方的に決定したことに抗議し、8月18日、「諸宗教者共同声明 安倍元総理の『国葬』閣議決定撤回を求める―国民に弔意を強制してはならない―」を宗派を超えた宗教者52人の連名で発表した。国民の弔意が権力によって強制されていいのかと訴える声明に賛同者は、22日時点で2235人となっている。
集会では、弁護士の内田雅敏氏が講演を行った。内田氏は、1945年愛知県生まれ。中国人強制連行・強制労働(花岡、西松、三菱マテリアル)など戦後補償問題、靖国問題などに取り組む。さまざまなメディアに登場し、19日付の東愛知新聞でも、「安倍元首相の国葬に思う」という見出しで発言している。
講演では、森友・加計・桜を見る会、安倍元首相をめぐる疑惑は何一つ明らかになっていないことを指摘。さらに、今回の安倍元首相の襲撃事件によってあぶり出された霊感商法の反社会的団体である旧統一協会と岸信介、安倍晋太郎、晋三の3代にわたる深い関係にも触れ、これらの疑惑を「国葬」によって洗い流してはいけないと話した。また、安倍元首相が2014年の国会閉会中に、集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更を閣議決定したことをあげ、今回の国葬も同じ手法が使われているとし、「銃撃が民主主義を破壊するのではなく、国葬が民主主義を破壊する」と力を込めた。
他の参加者からも発言が相次いだ。
真宗大谷派住職の石川勇吉氏(愛知宗教者平和の会)は、この日のために愛知県碧南市から駆けつけた。「国葬は憲法に違反しているし、宗教者にとっては『思想・良心の自由』や『信教の自由』が脅かされる事態になる。27日までどんな形で国葬問題が進んでいくか予断を許さないが、最後まで反対の声を挙げてていきましょう」と呼びかけた。また、日蓮宗僧侶の小野文珖氏(群馬諸宗教者の集いの会)は、いまもって国葬反対の声を挙げ続けるのは、国民のおよそ8割が反対していたことを歴史に残すためだと話す。歴史に残ることを黙認することは許されないと語った。
共産党参議院議員の井上哲士氏は、岸田首相が「関係を断つ」とした統一協会と最も関係が深い安倍元総理を国葬にするのは矛盾していると述べ、国民に弔意を事実上強制する点でも、国葬は中止すべきだと話した。社民党参議院議員の福島みずほ氏も、国民の大多数が国葬に反対していることや、国葬に関する根本的な法律がないことを問題視し、一人一人に強制しないとしても、学校など弔意を事実上強制される危険性もあり、国葬には強く反対する姿勢を示した。
集会最後のあいさつは、日本キリスト教協議会総幹事の金性済氏が行った。金氏は、旧統一協会が、誤った歴史認識で日本人に取り入り、多くの被害をもたらしたことを知りながら、結託していた安倍元首相を強く非難したうえで、次のように締めっくった。
27日に国葬が行われようとも、引き続き旧統一教会と安倍元首相の関係を問い続け、正体を明らかにし、怒りを怒りとして表明し、政治における正義を求めていくことを、宗教者として訴え続けていきたい。