「話し合いは多く、戦略は少なく」が大切なことのようだ
〈評者〉飛田雄一
本書は、富坂キリスト教センターの研究会「東アジアの平和思想史研究会」(二〇一八年一〇月~二〇二一年九月)の成果である。「平和思想史研究」という学術的な研究会と思われそうだが、本書は研究史の枠を越えて平和の具体的なイメージを与えてくれるものとなっている。
第1章「平和の思想と戦略としての地域形成」(李鐘元)は基調報告的論文。「地域」は単に地理的に決定されるものではなく「創られるもの」であるとして、「東洋」「東亜」「東アジア」「アジア太平洋」へといたる枠組みの変容を論じ、現状と課題について述べている。第2章「中国から見た平和の課題と展望」(謝志海)では、中国から見た平和の課題について、第3章「韓国の平和論と南北コリア平和構築の歴史」(李賛洙)では、「朝鮮半島での平和構築可能性を具体化する理論的土台を築きたい」と論を進めている。評者は日本の侵略に抵抗した「東学」の平和思想史的位置づけに特に興味をもった。ここまでが、第一部「北東アジアにおける平和思想の課題とチャレンジ」。