5月25日 ヨシュア記24章13節

 わたしは更に、あなたたちが自分で労せずして得た土地、自分で建てたのではない町を与えた。あなたたちはそこに住み、自分で植えたのでないぶどう畑とオリーブ畑の果実を食べている。
ヨシュア記24章13節(参考箇所同書24章11〜28節)

イスラエルの民はカナンの地に自らの土地を得ました。かつては先祖たちが住んだ土地でありましたが、すでに400年の時が流れた今、故郷はとっくにカナン人のものになっていたのです。イスラエルが土地を取り戻そうとするなら戦って勝ち取らねばなりませんでした。

戦いの結果、得た土地なのですから、彼らは自らの手による勝利を誇ってよいはずでした。しかし神は、彼らが勝利の美酒に酔いしれることを許されません。彼らは労せずして耕された土地を得たのであり、でき上がった町に入ったのであり、すでに飢えられていたぶどうとオリーブを食べているのだと教えられるのです。

今日の競争社会は、人を押しのけてでも、他者に抜きん出ることをよしとする社会です。他者への無用な同情は生きるための邪魔物ともなりかねません。それだけに社会はぎすぎすとした人間関係がまかり通り、温かさを失ってしまいました。

反面、人は温かさに飢えています。もし受験に成功した者が不合格の者がいたので、今の自分であり得ると思い、地位が昇進したのは、下積みの存在があってはじめて、今の地を保ち得ると思うような世の中であれば、どれほど温かさが人の中に戻ってくることでしょうか。

賀来 周一

賀来 周一

1931年、福岡県生まれ。鹿児島大学、立教大学大学院、日本ルーテル神学校、米国トリニティー・ルーテル神学校卒業。日本福音ルーテル教会牧師として、京都賀茂川、東京、札幌、武蔵野教会を牧会。その後、ルーテル学院大学教授を経て、現在、キリスト教カウンセリングセンター理事長。

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