【くめさゆりの DAY BY DAY】第2回 デビュー40周年コンサートは中止したけれど 久米小百合

 

皆さん、お変わりありませんか。

「緊急事態宣言」はようやく解除されましたが、まだまだ人が集まるところにはウイルスももれなく付いてくるようです。解除後も、学校や病院でクラスターが発生したりで、安心できませんね。そういえばこの数カ月、「ロックダウン」とか「ソーシャル・ディスタンス」、そして都民の皆さんの気分も赤信号(!)の「東京アラート」と、耳慣れないカタカナ言葉にギクシャクの久米です。

実は今年はデビュー40周年ということで、この6月はソニーミュージックさんからお声をかけていただき、先輩の渡辺真知子さんやサーカスの皆さんと一緒に久々のコンサートを行う予定だったのですが、コロナ・ショックの影響で来年の1月に延期されました。まあ、すでに引退をしている身なので、当初は「周年記念のコンサートなどおこがましい」と思ったのですが、ソニーさんから口説かれた時のこのひとこと、「久米さん、この業界、40周年というのはあるんですけどね、50周年て、ほとんどないですから……」(苦笑)。なるほど! これで決めました。

思えば引退後、まだ神学校も出ていない頃から、伝道会やチャペル・コンサートに招いてくださる多くの方々は、「異邦人」(※1979年に久保田早紀としてデビューした時のシングルでミリオンセラーとなった)世代の昭和の芸能界を懐かしんでくださる同世代の牧師さんや伝道師さんでした。やはり「異邦人」久保田早紀を世に送り出してくださったかつてのCBSソニーさんにはご恩があり、お引き受けさせていただいた次第です。

ということで、今頃は晴れてコンサートが終わり、同じ事務所の先輩だった真知子ちゃんとの楽屋トークなども今日はお伝えする予定だったのですが、見事に予定が狂ってしまいました。また来年、コンサートの様子をお伝えできればと思っています。もちろん、讃美歌や聖歌も歌わせていただく予定ですので、一般の音楽ホールではありますが、懐メロだけでなく、クリスチャン音楽の素晴らしさも会場の皆さんと共有できれば嬉しいです。

このコロナ禍の時期、本当に多くの音楽家、舞台やミュージカルの役者、ダンサーなどが仕事を失い、悲鳴を上げています。ライブハウスも劇場も、人が集まって感動が生まれる場所ですよね。無観客公演やユーチューブでは伝えきれないもの、臨場感や熱気というものまで奪ってしまった新型コロナ・ウイルスって無情です。

このしわ寄せを受けているのは一般のミュージシャンだけではありません。巡回伝道やチャペル・コンサートで地域の教会の宣教を担っているクリスチャン・アーティストたちにとっても大打撃なんです。礼拝が再開されなければ、チャペル・コンサートや伝道イベントも中止となります。特にゴスペルやクリスチャン・ミュージックを中心に活動しているクワイアーやアーティストは、「歌う」という行為で飛沫(ひまつ)感染が心配されるため、いまだに仕事の再開は未定という人も多くいます。

米国などと違い、一般の音楽界のようなプロダクション業務も整っていませんし、休業中の手当などもない若いクリスチャン・アーティストは、生活していくだけでもたいへんです。「そんな彼らをサポートしたい」ということで、先月、CAS(クリスチャン・アーティスト・サポート)という支援をスタートさせました。現在はクラウド・ファンディング形式で献金を募っていますが、生活に困窮するクリスチャン・アーティストには、返済の義務なく支給できるように整えています。

幸い全国から少しずつ献金が寄せられており、皆さんの温かいお気持ちに感謝しております。5000円以上を献げてくださった方には、CASの働きに賛同するクリスチャン・アーティストのCDを返礼品としてお贈りしています。ロックではサルーキ=、ジャズでは市原康、Steve Sacks、入江新一郎、Manna、ゴスペルでは塩谷達也、CCMでは神山みさ、横山大輔、菅原沙樹、岩渕まことと由美子ほか(敬称略)、さまざまな分野で活躍するアーティストたちの素敵なアルバムですので、ご興味がある方はぜひCASのサイトをご覧になってみてくださいね。

「衣食住が足りればOKじゃない? 音楽やアートなんて二の次」というお声も時々聞かれますが、本当にそうでしょうか。風のささやき、大空に虹を描く大きな指、漆黒(しっこく)のドレスを飾る星々のネックレスなど、神様こそが凄腕(すごうで)のアーティスト。その似姿に創(つく)られた私たちも、もっとアートを大切にできたらいいですね。

この記事もおすすめ