「永住資格取り消し法案」に反対 在日大韓基督教会、日本福音ルーテル教会が緊急声明

技能実習に代わる「育成就労制度」の新設を柱とした出入国管理法などの改定案が国会で審議入りしたことを受けて、在日大韓基督教会の梁栄友総会長と申容燮社会委員長は5月2日、「私たちは『永住資格取り消し法案』に反対します」と題する緊急声明を発表した。

声明は、「今回の法案では『特別永住者』は対象となっていませんが、日本に長年暮らして『永住者』となっている韓国人信徒・教役者が多くいるため、法案について私たちの意思を表明することにしました」と前置きした上で、「『永住資格取り消し法案』は、日本に在住するうえで最も安定した在留資格を持って生活基盤を築いている外国人住民の『永住者』に対して、重大な不利益をもたらす差別的な法案である」と表明。税金や社会保険料の滞納、退去強制事由に該当しない軽微な法令違反に対しては、日本人に対するのと同様に、法律に従って督促、差し押さえといった制裁措置をとればよいのであり、外国人であるがゆえに在留資格「永住者」を取り消すのは、外国人に対するあからさまな差別だと訴えた。

また日本福音ルーテル教会社会委員会(小泉基委員長)も9日、同法案の廃案を求める要望書を岸田文雄首相、小泉龍司法相宛に送付した。

要望書は、今回の法改定は、「いったん取得した永住資格を行政の恣意的な運用によって簡単に取り消すことができるような内容」となっており、「どれだけ日本で生活し、家族と共同生活を営み、生活の基盤を築いたとしても、事業失敗などで税金や社会保険料を滞納しただけで、日本社会で生活していく根拠を剥奪する」もので、「日本が加入する人種差別撤廃条約の第2条(締約国の差別撤廃義務)と第5条(非差別・法の前の平等)、自由権規約の第2条(締約国の差別撤廃義務)と第26条(非差別・法の前の平等)にも、明確に違反している」と指摘。

法案が成立すれば「外国籍住民は日本社会で安心して生活できなくなり」「日本社会に定住し、住民としての責任を果たしていこうという社会形成への責任的思いすらも阻害しかね」ないとし、「聖書が教える共に生きる社会の実現のために、外国籍住民が安心して社会で生活していくことが出来るような、包括的な外国籍住民の保護法である、外国人住民基本法の制定」を改めて求めた。

声明の全文は以下の通り。


私たちは「永住資格取り消し法案」に反対します

日本の国会では4月から 「永住資格取り消し法案」 の審議が始まりました。

私たち在日大韓基督教会は、 特別永住者の在日韓国人だけではなく、韓国から起業や就労、 留学、 結婚 などで渡日した韓国人や、日本人をはじめさまざまな国籍の信徒・教役者で構成されています。今回の法案 では「特別永住者」は対象となっていませんが、 日本に長年暮らして「永住者」となっている韓国人信徒・教 役者が多くいるため、 法案について私たちの意思を表明することにしました。

「永住資格取り消し法案」 は、 日本に在住するうえで最も安定した在留資格を持って生活基盤を築いてい る外国人住民の 「永住者」に対して、重大な不利益をもたらす差別的な法案である、と私たちは考えます。

「永住者」は在留期間の制限なく日本に滞在することができますが、 永住許可を得るには原則として10年 以上在留していることに加えて、 納税の義務を果たしているなどの厳しい条件を満たす必要があります。 その ような厳格な審査を経て永住許可を得た外国人住民は、日本で働き、 子どもを育て、さまざまな形で日本社 会に貢献してきました。「永住者」 の数は年々増えて2023年末現在、891,569人となり、 そのうち韓国籍の永 住者は75,675人です。

ところが、今回の法案は、 ①在留カードの常時携帯、7年ごとの在留カード更新、14日以内の住居地変更 届け出などの入管法に違反した場合、②税金や社会保険料を支払わない場合、③住居侵入罪などにより拘禁刑1年以下(執行猶予を含む)が科せられた場合に、永住資格を取り消すとしています。 つまり、永住資格 取り消しによって、長年にわたって築いてきた日本での安定的な生活基盤が奪われるということです。

日本がすでに加入している国際人権自由権・社会権規約や人種差別撤廃条約では、外国人住民に、国 政参政権を除く基本的な権利を保障することを定めています。とりわけ永住者に対しては、 日本人と同等に 扱うよう、国連の自由権規約員会や人種差別撤廃委員会が日本政府に求めています。 税金や社会保険料 の滞納や、退去強制事由に該当しない軽微な法令違反に対しては、日本人に対するのと同様に、法律に従 って督促、 差押といった制裁措置をとれば良いのです。

しかし、外国人であるがゆえに、 在留資格 「永住者」を取り消すというのは、外国人に対するあからさまな差 別です。 人種差別撤廃条約の第2条(締約国の差別撤廃義務)と第5条(非差別・法の前の平等)、 自由権 規約の第2条(締約国の差別撤廃義務)と第26条(非差別・法の前の平等)に違反します。

韓国では、韓国民も外国人も人権侵害を申し立てることができる国内人権機関(国家人権委員会)があり、 また永住外国人には地方参政権が認められています。しかし日本では、国内人権機関もなく、 外国人の地 方参政権も実現していません。日本人も外国人も 「共に生き、 共に生かし合う」 日本社会を作りたいと願う私 たちはこの法案に反対し、日本が先進国にふさわしい人権制度を整えるよう、 要望します。

在日大韓基督教会
総会長 梁栄友
社会委員長 申容燮


 「永住資格取り消し法案」の廃案を求める要望書

わたしたちは、どの国の人であろうとも人としての権利と生活が守られるべきという立場から、現在国会で審議されています入管法・入管特例法改定「永住権取り消し法案」に反対し、同法案の廃案を求めます。

わたしたちの社会には、さまざまな民族的背景や国籍をもった、300万人を越える外国籍の住民が暮らしています。しかしこの法案は、こうした方々が安心して仕事をし、家族を形成し、子育てをして地域社会で生活していく人としての権利を奪おうとするものだといわざるを得ないからです。

日本において「永住許可」を得るには、一般に10年を越える継続的な居住の他、膨大な書類の準備に加えて、申請後も長期間に及ぶ厳しい審査が課せられています。そこまでして永住資格を取得しても、国外に出るにあたって再入国に許可が必要であったり、在留カードの常時携帯が義務づけられるなど、諸外国と比べて一段と厳しい条件が付されています。ところが今回の一連の法改定は、そうした要件を緩和するのではなく、いったん取得した永住資格を行政の恣意的な運用によって簡単に取り消すことができるような内容となっています。この法案は、永住資格を取得した外国人であっても、在留カードの常時携帯、7年ごとの在留カード更新、14日以内の住居地変更届け出などの入管法に違反した場合、税金や社会保険料を支払うことが出来なくなった場合、住居侵入罪などにより執行猶予を含む拘禁刑1年以下が科せられた場合には、その永住資格を取り消すのだといいます。つまりどれだけ日本で生活し、家族と共同生活を営み、生活の基盤を築いたとしても、事業失敗などで税金や社会保険料を滞納しただけで、日本社会で生活していく根拠を剥奪するというのです。このような軽微な法令違反で永住者としての在留資格を取り消すこの法案は、日本が加入する人種差別撤廃条約の第2条(締約国の差別撤廃義務)と第5条(非差別・法の前の平等)、自由権規約の第2条(締約国の差別撤廃義務)と第26条(非差別・法の前の平等)にも、明確に違反しているといえます。

こうした法案が成立すれば、外国籍住民は日本社会で安心して生活できなくなりますし、また日本社会に定住し、住民としての責任を果たしていこうという社会形成への責任的思いすらも阻害しかねません。

わたしたちは、日本にあるキリスト教会として、このように大きな問題をはらんだこの法案の廃案を求めます。また、聖書が教える共に生きる社会の実現のために、外国籍住民が安心して社会で生活していくことが出来るような、包括的な外国籍住民の保護法である、外国人住民基本法の制定を求めます。

主は寄留の民を守り、みなしごとやもめを励まされる。
しかし主は、逆らう者の道をくつがえされる。(聖書 詩編146篇)

東京都新宿区市谷砂土原町1-1
日本福音ルーテル教会
社会委員会委員長 小泉基

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