横浜YMCA会員大会で桃井和馬氏が講演 戦争、環境破壊…地球規模の課題を解決するために

今年創立140周年を迎える横浜YMCA(佐竹博総主事)は2月12日、2023年度会員大会「ピースフォーラム」を南とつかYMCA(横浜市戸塚区)で開催した。フォトジャーナリストの桃井和馬氏(恵泉女学園大学特任教授)が「『戦争』・『平和』・『未来』の作り方」と題して講演し、「未来への教育」「火に油を注ぐ」「ウクライナとパレスチナ」「世界へ、地球へ、未来へ!」の四つのテーマから、喫緊のロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル間の問題を解決し、未来を築き上げる方法を模索した。対面とオンラインで約190人が参加した。

冒頭、未来を作り上げる最も効果的な投資を「教育だ」と述べた桃田氏。それは単なる知識の積み上げではなく「自分の力で仲間と一緒に考えて、行動する力を身に着ける」ことを目的とすべきであると指摘。そのように共同体の中で生きることを前提にした学びは、個人の関心とともに健全な社会の建設につながるという。

例えばNUMO(原子力発電環境整備機構)に基づく調査により核廃棄物をどこに埋めるか議論されているが、実は能登半島もそれに該当していた。日本は核廃棄物の安全保管を10万年と保証していたがその中で予測不能な地震が発生した。このことから「無限に拡大する人間の欲望を制御するのが本物の知恵である」と桃井氏。

また「宗教が戦争の原因」とされることについて「安易な結び合わせ」と非難し、戦後日本において宗教そのものが敬遠されるようになったきっかけは、第二次世界大戦期に国家が神道を恣意的に利用し、多くの死者を生み出したことから戦後教育において「宗教そのものが危ない」と教えられたことにあると言及。実際、宗教が原因の戦争は全体の7%、死者数は2%だという。

ウクライナとパレスチナも根本的には「火と油」問題、つまり従来存在していたものを各国とも境界線を超えて侵略する行為から始まっており、そのどちらにも「誰かと共に生きる社会」や「無限に拡大する人間の欲望」というものに気づけていないという。同じ世界に生きる以上、決してその問題は日本にも当てはまらないわけがない。「私たちの学びや知恵が今、何に生かされるか、何のために体得しているのか、改めて考え直すべき」と訴えた。

かつて自身の著作に記した「大地が破壊されると、その社会は不安的になり、そこから争いが生じる」という事態が、今まさに起こっていると紹介した上で、気温上昇に関してはもはや歯止めの効かない段階にまで進んでおり、SDGsについて真剣に考える必要があると述べた。

また5億年前から6500年前までは平均して1000年に1種の生物が絶滅していたが、現在では1時間に4~5種の生物が絶滅しているとし、「私たちが確実に絶滅の時間を早めてしまっている」と強調。現在の生活水準を維持しながら生活するならばアメリカでは地球5個分、日本では2.8個分が必要となり、当然ながら他の星や移住でもしなければ不可能だという。

最後に「たとえ明日、世界が滅びるとしても、私は今日、リンゴの木を植える」というルターの言葉を引用しつつ、「今私たちに必要なのは急激な変革ではなく、たとえどんな状況であろうが今日も1本ずつ絵リンゴの木を植える、そんな地道な営みこそが未来に大きな希望をもたらすのではないか」と締めくくった。

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