日本カトリック司教団が震災10年でメッセージ「連帯のきずなを希望の光に」

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 日本カトリック司教団は東日本大震災から10年を迎えた3月11日、「連帯のきずなを希望の光に」と題するメッセージを発表した。カトリック教会は災害発生直後の3月16日、仙台で復興支援のためのセンターを立ち上げ、東北一帯を管轄するカトリック仙台教区を中心にした活動を始めた。3月末には、全国16の教区が結集し、10年間にわたり復興支援活動を行うことを決議。これに基づき、これまで東北沿岸各地に延べ8カ所のボランティアベースを設置し、全国からのボランティアを受け入れてきた。

 メッセージは、復興支援活動を支えた国内外の支援者に謝意を述べた上で、2019年に来日した教皇フランシスコの言葉から、「一人で『復興』できる人はどこにもいません。だれも一人では再出発できません。町の復興を助ける人だけでなく、展望と希望を回復させてくれる友人や兄弟姉妹との出会いが不可欠です」を引用。「物質的な支援に留まらず、世界に広がる連帯のきずなの中で、『展望と希望を回復』するために、友人として、兄弟姉妹として、東北の皆さんとともに歩み続けたい」との決意を新たにした。

 また、原発事故を受けて2011年11月に公表した司教団メッセージ「いますぐ原発の廃止を」に基づき、改めて原発の即時廃止と生活スタイルの見直しを提言。コロナ禍にあって「助けを必要としている人、孤立し、いのちの危機に直面している人のもとへ出向いていこう」「互いの連帯のきずなのうちに、いのちを生きる希望の光を見いだし、ともに手を取り合って歩んでまいりましょう」と呼び掛けた。

 メッセージの全文は以下の通り。


連帯のきずなを希望の光に ~東日本大震災復興10年を迎えて~

兄弟姉妹の皆様

 未曾有の大災害が、東北の太平洋沿岸部を中心に東日本を襲ってから10年となりました。この間、亡くなられた方は2万人近くに及び、行方不明者は2,500人を超え、現在でも4万人以上の方が避難生活を続けておられます。あらためて、亡くなられた方の永遠の安息を祈り、すべての被災者の皆様に心からお見舞い申し上げます。

1. ボランティアと募金者・支援者への感謝

想像を遙かに超える被害の中、国内は言うに及ばず、世界各地から多くの方が支援に駆けつけました。東北各地の復興に寄り添い歩みをともにするボランティアの活動は、世界に広がる連帯のきずなを生み出し、その後の各地で頻発する災害支援活動に繋がっています。

日本のカトリック教会も、災害発生直後の2011年3月16日に、仙台において復興支援のためのセンターを立ち上げ、東北一帯を管轄するカトリック仙台教区を中心にした活動を始めました。その後3月の末には、全国16の教区が一丸となって力を結集し、10年間にわたり復興支援活動を行うことを決議しました。この決議に基づき、これまで東北沿岸各地にのべ8カ所のボランティアベースを設置して、全国からのボランティアを受け入れてきました。1

この10年の間、教会内外、そして国内外から、ボランティアベースに駆けつけ、被災地の方々と歩みをともにする活動に参加してくださった多くのボランティアの皆様に、心から感謝申し上げます。ボランティアの皆様の存在なしに、復興支援活動はあり得ません。またカトリック教会のこの活動に理解をいただき、ともに働く機会をくださった、各地の自治体や社会福祉協議会の皆様に感謝いたします。

またカトリック教会の人道支援団体であるカリタスジャパンは、世界各地のカリタス組織からの資金援助を受け、さらには国内からの多くの方の募金をいただき、東北における復興支援活動を側面から支えてきました。募金活動は、震災直後から数カ月、数年にわたり、善意の輪を広げつつ行われました。この10年にわたる復興支援活動を支えてくださった、国内外の多くの支援者の皆様に、心から感謝申し上げます。2

2. さらなる「新しい創造」へのあゆみ

カトリック教会は、災害の前から地元に根付いてきた存在として、一時的な救援活動に留まらず、東北のそれぞれの地の皆様と将来にわたって歩みをともにする中で、いのちの希望を生み出すことを目指してきました。被災地を管轄するカトリック仙台教区は、復興支援の先頭に立つとき、「新しい創造」をモットーとして掲げ、過去に戻るのではなく、希望を持って前進を続ける道を選びました。教会の活動は、10年という節目をもって終わってしまうわけではありません。3

2019年11月に日本を訪れた教皇フランシスコは、東北の被災地の方々との集いにおいて、「日本だけでなく世界中の多くの人が、……祈りと物資や財政援助で、被災者を支えてくれました。そのような行動は、時間がたてばなくなったり、最初の衝撃が薄れれば衰えていったりするものであってはなりません。むしろ、長く継続させなければなりません」4と指摘されました。

10年が経過した今、すでにその活動を終了したボランティアベースもあれば、NPO法人などに発展したボランティアベースもありますが、日本のカトリック教会はこれからもかかわりの形を変えながら、それぞれの地にある教会を通じて、地域共同体のさらなる復興に微力ながら貢献させていただきたいと思います。

教皇フランシスコは、次のようにも述べています。

「食料、衣服、安全な場所といった必需品がなければ、尊厳ある生活を送ることはできません。生活再建を果たすには最低限必要なものがあり、そのために地域コミュニティの支援と援助を受ける必要があるのです。一人で『復興』できる人はどこにもいません。だれも一人では再出発できません。町の復興を助ける人だけでなく、展望と希望を回復させてくれる友人や兄弟姉妹との出会いが不可欠です。」5

日本のカトリック教会はこの言葉に導かれ、物質的な支援に留まらず、世界に広がる連帯のきずなの中で、「展望と希望を回復」するために、友人として、兄弟姉妹として、東北の皆さんとともに歩み続けたいと思います。

3. 原発廃止とエコロジカルな回心

震災から8カ月後の2011年11月、司教団は福島での原子力発電所事故を受けて、「いますぐ原発の廃止を」というメッセージを公表しました。わたしたちはその中で、神の賜物であるいのちを守る信仰者の立場から、原発の即時廃止を呼びかけ、同時に「何よりも神から求められる生き方、つまり『単純質素な生活、祈りの精神、すべての人々に対する愛、とくに小さく貧しい人々への愛、従順、謙遜、離脱、自己犠牲』などによって、福音の真正なあかしを立てる務め」の重要性を説き、社会のあり方の見直しを提言しました。6

残念ながら、時間の経過とともに、現状はこの呼びかけとは異なる方向に進んでいると感じます。事故発生から10年にあたり、わたしたちはあらためて原発の即時廃止と、生活スタイルの見直しを呼びかけます。

カトリック教会は、人間のいのちは、神からの賜物であると信じています。教皇フランシスコの訪日テーマも「すべてのいのちを守るため」でした。わたしたちは、教皇が呼びかけるように、すべてのいのちが例外なく守られ、その尊厳が保たれ、また一人として忘れ去られる人がいない社会の実現を目指したいと思います。

今、コロナ禍にあって、世界は『すべてのいのちを守るため』に連帯しています。教皇フランシスコは対立と分断、差別と排除、孤立と孤独が深まる現代世界にあって、助けを必要としている人、孤立し、いのちの危機に直面している人のもとへ出向いていこうと呼びかけます。

あの未曾有の災害に襲われたとき、わたしたちは、人間の知恵と知識の限界を感じました。自然の力を前に、どれほどわたしたちが弱いものであるかを知りました。そのときわたしたちは、互いに助け合うことの大切さ、いのちを守るために連帯することの大切さ、いたわりの心の大切さを、心に刻み込みました。大震災10年の今、世界はまさしくその大切さを思うことを必要としています。

東日本大震災から10年を迎えるにあたり、あらためて亡くなられた方の永遠の安息を祈り、被災された多くの方に神の祝福と守りがあるよう祈ります。互いの連帯のきずなのうちに、いのちを生きる希望の光を見いだし、ともに手を取り合って歩んでまいりましょう。

2021年3月11日
日本カトリック司教団

 






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