故人の成仏祈れる? 勝本正實 【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】

Q.教会員の遺族(非信徒)から、「故人が成仏するように祈ってほしい」と懇願されてしまいました。どう答えるべきでしょうか?(30代・牧師)

この依頼をされた方は、ごく自然な気持ちであなたにお願いされたのでしょうね。どんな宗教であれ、亡くなった方の幸せを願わない宗教はないし、弔わない人はいないとの思いでしょう。よもや亡くなった方の成仏を祈らない・祈れない宗教が、存在することなど予想外の範囲でしょう。

今の時代には、「死後の世界はない」「霊魂があるかわからない」と考える人が多くおられます。そして確実に増えていると思えます。このためか葬式はしない、あるいは簡単に家族だけで済ませたいという方があり、また墓も作らないという方もおられます。

それでも一方で、これまでの価値観のとおりに亡くなった方の幸せを願って、供養に励んでおられる方もおられます。それが遺族の務めであり、感謝の表れと考えるのです。このためには、他の人にもできれば手伝ってほしいとの願いでしょう。

亡くなった人への遺族の思いは、複雑に作用します。愛情が深かったときだけでなく、生前にたとえうまくいっていない状態であっても、亡くなってしまうと寂しさや申し訳なさが沸き起こって、償いとして供養をしたりします。そうした場合に、残された人にできる最善策が供養なのです。

「成仏のために祈ってほしい」との依頼に対して、まず頭から拒否するのはやめましょう。そして次のように答えましょう。

「わかりました。お祈りさせていただきます。ただし亡くなった方へは私の祈りは届きませんので、それは神さまにお委ねして、私はご遺族のためにお祈りしましょう」と。

お気持ちはくみ取る必要がありますが、自分の祈りの領域は生きている方にしか及ばないことを伝えてはどうですか。時間をかけなければ、「キリスト教と仏教の供養の違い」は説明できないでしょうから。

 かつもと・まさみ 1950年熊本県生まれ。聖契神学校卒業後、立正大学仏教学部(日蓮宗)を卒業。あわせて僧階課程を修了。その後、仏教大学で仏教学(浄土宗)を専攻。神道や民俗宗教の学びの必要を覚えて、神道宗教学会に加入。郷里熊本で牧会の後、1990年から千葉県流山市で開拓伝道を開始した。後に日本聖契キリスト教団に加入し、聖契神学校講師(比較宗教·日本教会史)を担当。著書に『日本人の生活習慣とキリスト教』『日本の宗教行事にどう対応するか』(いずれもいのちのことば社)など。

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