第9回「おふぃす・ふじかけ賞」の授与式が7月21日、上野の森キリスト教会(東京都台東区)およびオンラインで開催された。同賞は、クリスチャンで臨床心理士の藤掛明氏が2015年に自身のブログを通して立ち上げた。毎年、藤掛氏の「独断と偏見」により、キリスト教を背景としたカウンセリングやカウンセリングと類似の発想を示した良書を選定して授与式を開催している。
例年同様、阿部伊作氏(図書館司書)の司会により開会。主催者である藤掛氏のあいさつに続き、各受賞作の発表と受賞者によるスピーチが行われた。
今年の「本賞」には堀川寛著『心の時代のキリスト教』(地引網出版)、平良愛香監修『LGBTとキリスト教』(日本キリスト教団出版局)、栗原加代美著『DVからの家族再生』(いのちのことば社)の3作品、「特別賞」にはカウンセリングの現場で「コラージュ」を実践してきた花野井百合子(東京基督教大学学生相談室、臨床心理士)と谷口基子(視能訓練士)の両氏が選ばれた。
自身も公認心理士、臨床心理士の資格を持ち、広島市内の中学・高校でスクールカウンセラーを務める堀川氏(日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団三滝グリーンチャペル牧師)は、出版の経緯について「ある教会で生きづらさをテーマに講演をしたのがきっかけ」となり、それをもとに始めた連載が後に単行本として出版されることになったと振り返った。当初は執筆に積極的ではなかったものの、「引き受けた説教と食事は断らない」という座右の銘に従って奮闘したという。
同じく本賞を受賞した平良氏(日本基督教団川和教会牧師、農村伝道神学校校長)は冒頭、「私はキリスト教が好きではありません」と断言。十字軍や植民地開拓など、負の歴史とされる出来事を回想しつつ「物事を美化するのではなく、反省することが大切」と語った上で、LGBT当事者として監修に携わった『LGBTとキリスト教』についてもさまざまな反応があったことを紹介。「線引きをしているのは人間であり、神は一切線引きをしない」という理解を深めることが大事であり、「キリスト教という枠に収まるのではなく、神とつながる方法をいつも模索したい。この本がそういう役目を果たせれば」との期待を語った。
栗原氏(女性人権支援センター「ステップ」理事長)は、実際にDV加害から回復した当事者らの体験をまとめた『DVからの家族再生』の内容と、その基となった「選択理論」(すべての行動は自らの選択であると考える心理学)について解説した。
授与式の後半では、森真弓氏(臨床心理士)の司会のもと特別賞を受賞した2人が登壇し、コラージュの方法と意義について紹介。コラージュは遊びであると同時に「コラージュ療法」という一つの心理学プログラムとしても認められている。紙を自由に切り貼りし、気持ちを表現する作業を通して、カウンセリングとは異なる角度から自身の内面と向き合うことができる。
今回は、2人が「今の気持ち」を表現したそれぞれのコラージュ作品をその場で鑑賞し合い、コメントを送り合うという実践も披露され、出席した関係者らもそのやり取りに聞き入り、コラージュの魅力を体感していた。