答えにくい質問にどう答える? 山岡三治 【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】

Q.旧約聖書における男女間の物語や人が殺し合う場面などについて、子どもがしつこく聞いてくるので答えに困っています。(20代・女性)

筆者が園児の時、エジプト王によってたくさんのイスラエルの赤子が殺されたり、イエスの誕生のころにはヘロデ王にたくさんの子どもたちが殺されたという話がありました。それを聞いて、子どもながらにすごく怖くて眠れなくなりました。私だったら必ず殺されていただろうと思ったからです。

兄弟殺しのところでは――当時は兄弟ゲンカばかりしていましたが――ぞっとしたものです。道徳のこととか性のことなどについてはあまり覚えていません。わからなかったのか、あるいは先生がその話を避けていたのかもしれません。

確かに子どもに話すべきか迷う物語が聖書の中に見られます。しかし、日常に世界のどこかで起っている悲劇や暴力や不正義からまったく目をそむけさせて、理想的な世界だけを子どもたちに提示していたら、子どもたちもいつかは現実の世界との乖離のゆえに教会から、親から離れていくでしょう。

フランスで大反響だったジャン・フランソワ・フォルジュの『21世紀の子どもたちにアウシュヴィッツをいかに教えるか』(作品社)という本は、大人でも目を背けたくなる歴史であっても、残酷な事実だけを見つめさせるのではなく、なぜそうなったか、どうしたらそうならないようにできるかを子どもたちと一緒に考えるためによい事例になることを教えています。

旧約聖書には子どもでも知っておかなくてはならない事柄がたくさん書かれています。人生には限界があること、理解できないことがたくさんあること、たくさんの失敗の例。しかし、それでも神が常に生命を与える方であること、また一見バラバラに見える出来事が実は神のご計画の目からすればつながっていて、私たちをずっと導いてくれていることです。

聖書の出来事を子どもたちと一緒に丁寧に取り組んでいく時、子どもたちは自分こそ神のご計画に協力して、よい世界を作っていくのだという使命感を醸成させていくのではないでしょうか。

やまおか・さんじ 1948年東京生まれ。慶應義塾大学(経済)、東京教育大学(文学)、上智大学(神学·神学研究科)を経てグレゴリアーナ大学(ローマ)で神学博士。アメリカ、中国、イタリア、フランス、広島などでの宣教·司牧経験の後、上智大学神学部教授、学校法人上智学院総務担当理事を歴任。カトリック・イエズス会司祭。

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