カトリック正平協 「安保関連3文書」閣議決定に抗議

日本カトリック正義と平和協議会(ウェイン・バーント会長)は国家安全保障戦略、国家防衛戦略そして防衛力整備計画の3文書(安保3文書)が閣議決定されたことを受け12月20日、撤回を求める声明を発表した。

声明は「反撃(敵基地攻撃)能力」の保有を明記し、「抑止力」の強化で安全保障を図る「安保3文書」は、憲法9条が禁じた「武力による威嚇」に他ならず、教皇フランシスコが2019年に来日した際、長崎の爆心地に立って言及した「恐怖と不信の心理から支持された偽りの安全保障」というべきもので憲法違反だと非難。「『反撃(敵基地攻撃)能力』の保有は、安全保障どころか、日本および他国の人々のいのちを危うくすることになった」とし、防衛予算の増額は「日本の軍事大国化を国内外に宣言すること」に他ならず、「戦争に向けた国家総動員体制づくりという政府の意図は露わ」と指摘した。

その上で、万が一軍事衝突が起きた際、「相手国から標的とされるのは国内の基地であり、その結果被害を受けるのは周辺の民間人」「島民の避難などについては自治体が国民保護計画を作っていますが、実際のところ、避難は極めて困難」であり、かつて本土の「捨て石」とされた沖縄の悲劇を二度と繰り返してはならないと訴え、「日本が進むべき道は、日本国憲法の前文と第9条を活かした平和外交であり、紛争を『対話によって』解決する平和の枠組み作りの役割を果たすこと」と強調した。

声明の全文は以下の通り。


内閣総理大臣 岸田文雄 様
防衛大臣   浜田靖一 様

2022年12月20日

日本カトリック正義と平和協議会
会長 ウェイン・バーント
担当司教 エドガル・ガクタン
日本カトリック正義と平和協議会一同

岸田政権の「安保関連3文書」閣議決定に抗議し撤回を求めます

 日本国憲法、とりわけ第9条の非暴力平和主義を強く支持してきた私たち日本カトリック正義と平和協議会は、国家安全保障戦略、国家防衛戦略そして防衛力整備計画の3文書(以下、「安保3文書」)が2022年12月16日に閣議決定されたことに抗議し、撤回を求めます。

 「安保3文書」の決定は、日本国憲法第9条のもとで専守防衛を図る従来の基本方針を事実上放棄し、日本を軍事大国化する全面的転換だと言えます。しかもこのような重大な決定が、国会や主権者である国民の間で熟議されることなく、閣議決定で行われたことは、民主主義を無視する暴挙であり、許されるべきではありません。

 「安保3文書」は「反撃(敵基地攻撃)能力」の保有を明記し、「抑止力」の強化で安全保障を図るものです。これは憲法9条が禁じた「武力による威嚇」に他ならず、教皇フランシスコが2019年に来日した際、長崎の爆心地に立って言及した「恐怖と不信の心理から支持された偽りの安全保障」というべきものであり、過去に政府自らも指摘していたとおり明らかな憲法違反です。しかも、2015年の安全保障関連法成立に伴って同盟国の戦争に巻き込まれるリスクが高まり、「反撃(敵基地攻撃)能力」の保有は、安全保障どころか、日本および他国の人々のいのちを危うくすることになったのです。

 また「安保3文書」にもとづき、政府は、来年度以降の5年間の防衛予算の総額を43兆円とし、2027年度以降は現在の防衛予算のほぼ2倍にあたる対GDP比2%以上を確保するとしています。これは日本の軍事大国化を国内外に宣言することに他なりません。

 そして政府は、空港・港湾などの軍事利用、人員・弾薬・燃料・物資などの輸送への民間船舶・航空機の動員、避難施設(シェルター)の設置や「国民保護」訓練への自治体・住民の動員などの方策を打ち出し、さらに企業や大学などの科学技術を軍事技術開発に利用することで、武器輸出拡大、防衛産業の育成・強化など、軍事で経済・社会・学術を支配しようとしています。戦争に向けた国家総動員体制づくりという政府の意図は露わです。

 万が一軍事衝突が起きれば、相手国から標的とされるのは国内の基地であり、その結果被害を受けるのは周辺の民間人です。長射程ミサイルの南西諸島への配備は着々と進み、島民はすでに不安な日々を送っています。戦争勃発に際しての島民の避難などについては自治体が国民保護計画を作っていますが、実際のところ、避難は極めて困難でしょう。沖縄はかつて、アジア・太平洋戦争において本土の「捨て石」とされました。この悲劇を二度と繰り返してはなりません。

 「民族間、国家間の紛争は、そのもっとも深刻なケースにおいてさえ、対話によってのみ有効な解決を見いだせること、そして対話こそ、人間にとってふさわしく、恒久的平和を保証しうる唯一の手段だということを歴史は教えています。」(教皇フランシスコのスピーチ 東京・首相官邸、2019年11月25日)

 日本が進むべき道は、日本国憲法の前文と第9条を活かした平和外交であり、紛争を「対話によって」解決する平和の枠組み作りの役割を果たすことです。日本政府は、その姿をはっきりと示してください。

以上

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