全国の教会、学校がキャンプや修養会の会場として長年愛用してきた天城山荘(静岡県伊豆市)が窮地を迎えている。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、昨年3月末から長期休館に入ったが、営業再開の目処が立たないまま、維持管理を担う日本バプテスト連盟(加藤誠理事長)は譲渡/売却先の候補について検討を進めてきた。
昨年10月の理事会報告では、「2022年度以降、経営権移譲を前提とした天城山荘の建物施設の維持管理は行わない」「2021年度の天城山荘を維持管理するため費用である概算で約1200万円の資金融通以降、連盟会計からの天城山荘への資金融通は行わない」との意向を示し、定期総会でも報告された。
この間、財政負担の少ない「現況での無償譲渡」もしくは売却先について、候補に挙げられた6法人について検討が進められたが、いずれも「採算の見通しが困難」「調査に時間を要する」など、さまざまな事由により決定には至らず、最終的には2022年9月末まで維持管理の期間を延長し、それまでに新たな譲渡先/売却先を選定するとの方針変更が2月15日付で同連盟の諸教会に報告された。引き続き、2022年度も維持管理費の支出が生じることとなる。
天城山荘は1954年、横浜地区の在日米軍バプテスト信者たちの祈りと献金を託されたミセス・M・B・ドージャー、息子のE・B・ドージャー宣教師の尽力により建設された。1964年には、フランク・ロイド・ライトの流れを汲む天野太郎氏、吉原正氏の設計による大チャペルが完成。1967年に完成した食堂は、延べ400人を収容できる他に類のないキリスト教の施設として長く重宝されてきた。
例年は繁忙期の春休み、夏休み期間に多くの学校が修養会などで活用しており、直近でも年間平均1万8000人以上の利用があったが、コロナ禍後はキャンセルや延期が相次ぎ、収益が激減していた。
なお、同規模の研修施設としてYMCA東山荘(静岡県御殿場市)が営業を継続している一方、恵みシャレー軽井沢(長野県北佐久郡)は2020年10月末で営業を終了している。