さて、どこから読み始まるか。まず、新約聖書から読み始まることをオススメします。聖書全体は旧約聖書から始まっています。天地創造物語から、エデンの園の話とかから始まるのですが、これはたいへんなものを読み始めてしまうことになります。とりあえず挫折しないためには、新約から読むことだと思います。
新約聖書の概要を書いておきたいと思います。まず、イエス・キリストの生涯を書いた「福音書(ふくいんしょ)」というものが、はじめに4つ、入っています。次に「使徒言行録」(新共同訳聖書の言い方。聖書によってこの使徒記の言い方はさまざまです)という、イエスなきあとの弟子の様子を描いた書があり、そのあと、「手紙」がたくさん入っています。これらは抽象的なもので、ストーリー性はありません。最後に「黙示録(もくしろく)」と言われる、わけのわからない化け物みたいな話があるのですが、これで終わりです。
まず、福音書から始めましょう。たとえば多くの教派で、毎日曜日に読み上げられる聖書の箇所(よく「聖書日課」と言っています)でも、必ず福音書は入っており、「ザ・聖書」みたいな書物です。有名な話はたいがい福音書に入っており、福音書を読んだら、だいたいのことはわかるのです。では、どの福音書を読むか。これまた、私の思い切った断言をさせていただきますね。「マルコによる福音書」から読むべし! 理由としては、これがいちばん短い。新共同訳で、40ページにもならない。ちょっとした短い小説を読むかのようです。
新約聖書を頭から読んでしまうと、マタイによる福音書というものが最初に来ているのですが、これは、いきなりカタカナの人物名がずらずらと書いてあり、はなから読む気をそぐものです。これらは旧約聖書のスターから始まるイエスの系図であり、「血統主義」な始まり方をするのですが、それが後世の人にありがたがれて、新約の最初に来ているのです。それはともかく、マルコから読み始めることをオススメします。短いというだけでなく、有名なエピソードがたくさん載っており、だいたいこれでイエスの生涯はわかるようになっています。
そして、最も古い福音書でもあるので(他の福音書は、このマルコを参照して書いています。これ、ヨハネもそうかどうかは意見がわかれるので、こう言い切ったらいけないかもしれませんが、まあおおざっぱな話だと思っておゆるしください)、これは、一次資料に当たった方がいいと思う方にも納得していただける「最初に読むべき福音書」でしょう。覚え方をお教えしましょう。「ちびマルコ」と覚えるのです。もう覚えましたね? いちばん最初に読むべき福音書は、「ちびマルコによる福音書」。世界最古のイエス伝です。
マルコが読み終わったら、もう、聖書を読むのをおやめになっても大丈夫です。それくらい、あなたは聖書に詳しくなられました。だいたい聖書を読むにあたって心がけることは、「こんなもの、いつだってやめてやるう~」と思いながら読むことなのです。「ぜったいにやめないぞ!」なんて、かたくなになって読んだら、逆に長続きしないものです。ですから、とりあえずマルコ読みでもいいのですが、たしかに短い福音書ですし、個々のエピソードについて、リアルにていねいに書いてくれるのもマルコなので、逆に言うとマルコだけ読んでも、有名なイエスのエピソードをいくつも読んでいないのも事実です。そこで、次に読むとしたら残り3つの福音書を読むことです。あとは順番はどうでもいいです。あえて私が指定させていただくなら、マルコ→マタイ→ルカ→ヨハネ、ですかね。とにかく最初がマルコであれば、あとはどんな順でもいいと思います。
次回は、(3)読むときに気をつける点。
腹ぺこ 発達障害の当事者。偶然に偶然が重なってプロテスタント教会で洗礼を受ける。東京大学大学院博士課程単位取得退学。クラシック音楽オタク。好きな言葉は「見ないで信じる者は幸いである」。