緊迫するミャンマー情勢に何ができるのか? WCRP、ミャンマー特別セミナーを開催

ミャンマー軍の弾圧が激化し、多くの尊い命が犠牲になっているという現実を受け、ミャンマー特別セミナー「ミャンマー国民の叫びー政治・宗教・国際社会の役割」(主催:世界宗教者平和会議トラスティーズ・日本会議、アジア宗教者平和会議、共催:世界宗教者平和会議・日本委員会)が10日、ZOOMウェビナーを使ったオンラインで開催された。約500人が視聴した。

今回のセミナーで基調講演を行ったのは、上智大学総合グローバル学部教授の根本敬(ねもと・けい)さん。ミャンマーの近現代史の専門家で、1910〜40年代を中心としたビルマ・ナショナリズムの思想や行動および対英・対日関係が主な研究テーマ。この日は、「ミャンマー近現代史から見たクーデターの背景」と題して語った。

続くパネルディスカッションでは、在日ミャンマー人女性、衆議院議員で日本・ミャンマー友好議員連盟会長の逢沢一郎(あいざわ・いちろう)さん、世界宗教者平和会議国際副事務総長の杉野恭一(すぎの・きょういち)さんら3人がパネリストとして参加。ミャンマーの緊迫する情勢に対して、政治、宗教、国際社会に何ができるのか、それぞれの立場から発言した。

根本敬さん

講演の中で根本さんは、軍の政治DNAには、「政治に関与する軍」「国家を正しい方向に導く軍」「議会制民主主義に不信感を持つ軍」があり、これらは1962年、88年のクーデターから存在し、今回のクーデターにも引き継がれていると話す。軍が抱くシナリオは、国軍が作った議会制民主主義を監視する憲法を土台にしたまま軍好みの政権をその上に乗せ、その体制を恒久的に実現するというものだ。

今回のクーデターで軍にとって想定外だったのが、国民による不服従運動(CDM)の発生と広がり。与党NLD(国民民主連盟)は、CDMを追い風にして、連邦議会代表者委員会(CRPH)を設立し、国連と国際社会への影響力を行使した。CDMは、西欧政治思想でいう「市民的抵抗権」ではなく、「市民的抵抗義務」で、その源流はガンジーがインド独立運動で用いた非暴力不服従運動になる。

軍は、CDMの広がりとNDLによるCRPHおよび臨時政府の設立に対して、武力武装封じ込めを展開し、4月7日時点で、死者590人以上となっており、狙撃兵により男女を問わず子どもと未成年者が数多く撃ち殺されている。このようなミャンマーの現状に対して、国際社会はそれぞれの国家事情により一致できない状態にあるという。そのため、国連安保理の議長声明も抑制的にならざるを得ないという。

そういう状況の中、日本に対して根本さんは、「G7の一員としての自覚を持ち、中国ファクターを『逃げ口上』にせず、対応を強めるべき」と進言し、「ミャンマー国民が日本に対して抱く親近感を悪化させたら、未来の両国関係にヒビが入る」と警告した。

また、国家同士の関係だけが国際関係ではないと述べ、グローバル化した世界では市民同士の連携を深めることが大切だと力を込めた。支援の具体的な方法として、SNSを使っての情報発信の拡散や、クラウドファンディングによるミャンマー国民の生活支援、宗教界によるミャンマーの平和と人権のための祈りと連帯などをあげ、国家を超えた市民による動きに期待を寄せた。

市民を制圧するミャンマー軍

続いてのパネリストの一人である在日ミャンマー人女性が、クーデターから2カ月半、恐怖とやるせない気持ちで毎日を過ごしているミャンマー国民の心の叫びを代弁した。15歳未満の子どもも含む25歳未満の多くの若者が犠牲になっていることや、負傷者を乗せた救急車に発砲したり、デモに参加して亡くなった人の墓を壊したり、軍の非人道的な行為を次々と明らかにした。ためらうことなく市民を殺す軍に対して、「殺人鬼」という言葉でその残虐さを伝えた。

この女性は、ヤンゴン出身で、ミャンマーの中心をなすビルマ民族。軍の独裁政治の時代に育ち、「軍こそが全て」という教育を受けてきた。しかし、来日して視野が広がるにつれ、ミャンマーの少数民族たちが長年苦しめられてきたことを知るようになったという。さらに今回のクーデターをとおして、虐げられてきた少数民族の辛い思いを知り、本当に申し訳ないと思っていると胸の内を語った。そして、次のように訴えた。

子どもたちは、軍人と警察官を見ると逃げて隠れます。誰が子どもたちを守のでしょうか。軍は長年にわたって無惨なことをしているのに、どうして裁かれないのでしょうか。悪いことをしたのにどうして裁かれないのか、子どもたちもそう思っています。国際社会が国軍と警察を制圧してくれることを願っています。

逢沢一郎さん

続いて、WCRPの国際活動の場で尽力する衆議院議員の逢沢さんが、政治・国際社会等の役割に焦点を当てて話した。逢沢さんは、国も経済界も、軍のクーデターを絶対認めない、軍によるミャンマー支配を完全に否定する立場であることを伝えた。そのうえで、「国際社会の連携、特にASEAN(東南アジア諸国連合)との意思の連携が大切。最善を尽くしていきたい」と語った。

杉野さんは、こういった暗黒の暗闇の中に、ミャンマーの将来の灯(ともしび)があると考えていると話す。それは、2007年に差別と弾圧により国際社会からも非難を受けたロヒンギャンが、連邦議会代表者委員会に入っていることだ。

杉野恭一さん

そこには、不服従運動の代表も、青年たちも入っている。そうした連邦制国家の設立のために憲章も出来上がり、臨時政府の閣僚も任命されつつある。それを受けて「国家承認がある場合は、我々は、臨時政府を正当な政府として認めていくと」と宗教界の強い決意表明を示した。

最後に根本さんが、次のように総括した。

現在、ミャンマーで起きていることは、戦争犯罪と同じで、それをやめさせることを私たちは真剣に考えなければならない。国家が動けないならば、市民・国民が動くというのが私の意見でもあるし、宗教者の意見でもあると感じた。また、数年前、ロヒンギャの人たちがされてきた弾圧や差別の惨さがやっとミャンマーの多数派の人たちに通じた。これをきっかけにミャンマー国民のロヒンギャに対する偏見が減り、仏教徒とイスラム教徒との和解も進むかもしれない。国軍を共通の敵と認識し、民主的なミャンマー連邦を作っていくということに共に力を注ぐ。こういう希望を、我々が支えていくことをパネルディスカッションを通じて理解した。

 

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