58年の歴史に幕 上智社会福祉専門学校が3月に閉校

学校法人上智学院が運営する上智社会福祉専門学校(=社専、東京都千代田区)が3月、全在校生の卒業をもって58年の歴史に幕を閉じる。

社専は、ドイツの先進的社会福祉育成機関をモデルとして、高等教育と実習施設を連携させた新しい社会福祉専門職育成の場として1964年に創立した。創立者は、上智大学教授のペトロ・ハイドリッヒ神父(1901〜1990年)。ドイツのライン地方出身で、22年にイエズス会に入会し、30年にファルケンブルグで司祭叙階を受けた。33年に来日し、宇部教会の主任司祭などを経て、53年、上智大学に教授として招聘された。日本が高度成長の向かう中、その急激な経済成長から取り残され苦しんでいる人たちを目の当たりにした神父は、神学教育と社会福祉の教育を結ぶことの必要を強く感じ、その教育機関の設置はカトリック大学である上智大学の使命だと確信したという。

自身の研究室を事務所にあて、教員の招聘や許認可のための手続きを先頭に立って行い、文部省(現文部科学省)や厚生省(現厚生労働省)などに粘り強く働きかけるなどし、63年に、社会福祉主事養成機関としての夜間課程が認可された。66年に専修科は上智社会福祉専修学校として大学から独立。その後、76年に社会福祉専門学校と改称され、キリスト教ヒューマニズムに基づく全人教育を通して、高い志を有する専門職業人材の育成に努めてきた。

ハイリッヒ神父(=前列右から2人目)と教職員。1970年頃。(写真提供:ソフィア・アーカイブズ)

創立25周年にはマザー・テレサから次のようなメッセージが贈られている。

「人生は愛すること、そして、愛されることの喜びそのものです。愛は与えることで、一番良く表現されうるのです。そして、いま学びにあるあなた方はこの与えることを痛むまで与えることを学ぶのです。なぜならば、これこそが本当の愛の証しだからです」

上智学院理事長で、同校の校長も務める佐久間勤氏は、社専発行の機関紙「社専だより」(最終号)の中で、このメッセージを取り上げ、「『与えることが傷むまで与えることが、本当の愛の証し』だとする精神性を重視する伝統は、社専の魅力だった」と語る。実際、創立当初から、単に知識や技能の習得だけでなく、専門職としての精神的支柱を会得して卒業することも大切にされ、それは「社専精神」と呼ばれていた。その精神的支柱とは、現在の上智の教育精神となっている「他者のために、他者とともに」生きるという「仕えるリーダーシップ」。専門学校としては独特なあり方に、入学時には戸惑う学生も、後に専門職として活躍する中でその魅力に気づく学生も少なくない。

しかしながら、ここ20年は、社会福祉領域における専門職育成の動向は近年大きく変化し、社専も社会の求めるに応える道を模索してきた年月だった。社会福祉分野の専門学校がいずれも縮小傾向にある中、幼稚園教職員免許併修制度の導入、介護福祉科の昼間過程への移行などを試み、教育内容の改革に努力を重ねてきたが、さまざまな状況を鑑み、将来の継続は困難と判断された。2018年度から保育士科、その他の科は21年度から学生募集を停止していた。

 






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