「広島・長崎は私たちを勇気づける」 被爆地訪問要請にフランシスコ教皇から返書

 

広島市の松井一実市長は5日、定例記者会見の中で、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇から広島・長崎両市長宛てに返書が届いたと発表した(最後に全文を掲載)。

フランシスコ教皇(写真:Jeffrey Bruno)

松井市長は昨年の11月15日、長崎市の田上富久市長は今年5月2日にそれぞれバチカンを訪問し、フランシスコ教皇に謁見した。そこで両市長連名による親書を手渡し、「高齢化が進む被爆者を励ましていただきたい」と被爆地訪問を要請。返書は駐日ローマ教皇庁大使館を経由して郵送され、5月30日に両市に届いた。

会見の中で松井市長はこう述べた。

「この書簡は、被爆者や被爆地の思い、核兵器廃絶、世界恒久平和の実現への思いを受け止めていただいたもの。『私たちを勇気づける』という言葉が書簡の中にあったが、かえって両市が勇気づけられたように思う。しかし、被爆地訪問に対しての言及が記されていない。その点については、今後のローマ教皇庁の検討に期待していきたい」

教皇フランシスコ紋章の盾
モットー:“Miserando atque eligendo”(憐れみ、そして選ばれた)

広島市長 松井一実殿   長崎市長 田上富久殿

バチカン、2018年5月11日

拝啓

原爆被爆者の方々の思いのこもったお二人からの手紙、そして命、対話、出会いと平和を促すための積極的なお働きとご尽力に感謝いたします。

広島と長崎は、暴力と戦争が引き起こす極度の苦しみと死を思い出させるかたわら、立ち上がり、命を守り、平和を蒔(ま)き、兄弟愛の絆(きずな)を築く力が備わっていることを示し、私たちの世界に希望の光をもたらします。原爆の惨事を生き抜いた被爆者の皆さんは、その生きた証しであり、その経験は、同じような惨事を許さないために取り組みを続けるよう私たちを勇気づけるものです。

皆さまのお一人お一人、そのご家族、そしてお二人が代表なさる両市の市民の方々のために、私は個人として祈りをささげることを約束します。最後に、私のためにもぜひ祈ることを忘れないでください。主が皆さまを祝福し、聖母マリアがお守りくださいますように。

愛を込めて

敬具

フランシスコ(教皇フランシスコ署名)

教皇の返書。スペイン語で書かれた書簡の文末には、教皇のサインが記されている(広島市提供)。

守田 早生里

守田 早生里

日本ナザレン教団会員。社会問題をキリスト教の観点から取材。フリーライター歴10年。趣味はライフストーリーを聞くこと、食べること、読書、ドライブ。

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