【インタビュー】日本聖書神学校校長・神保望さん 召命に応えて献身したい社会人の受け皿に(後編)

前編を読む)

──神学校の特色を教えてください。

まず、夜間部のみであることです。日本基督教団認可神学校で、夜間開講しているのは本校だけです。最初は昼間部もありましたが、49年から夜間部のみとなりました。

授業は、月曜から金曜の午後6時15分から行っており、遅い場合には10時まで行われています。設立当初から、「社会人にも神学教育の機会を与えたい」という志を掲げていました。牧師になる召しを与えられたけれども、すでに社会人となり、家族が複数いたり、仕事を辞めることができないなど、事情を抱えた人の受け皿になってきました。中には、昼は大学で教鞭を取り、夜はこちらで学んでいる学生もいます。「誰が教授で学生なのか分からない学校」と笑い話で言われることもあります。

神保望さん

──どのような方が教えているのでしょうか。

教授(敬称略)として、実践神学の神保望(じんぼ・のぞみ、日本基督教団・神学教師)、旧約神学の稲垣千世(いながき・ちせ、同・甲府中央教会牧師)、実践神学の古谷正仁(ふるや・まさよし、同・蒔田教会牧師)、歴史神学の柳下明子(やなした・あきこ、同・武蔵野緑教会牧師)、実践神学の荒瀬牧彦(あらせ・まきひこ、カンバーランド長老教会・めぐみ教会牧師)、新約神学の菅原裕治(すがわら・ゆうじ、日本聖公会・聖パトリック教会司祭)がいます。また講師陣も、各大学や神学校の教師が兼務してくださっていますし、日本基督教団教師をはじめ他教派の教師にもご協力いただいています。

「昼間は別の大学や神学校で教えているけれども、夜は神学校のために」ということで来てくださる講師もいます。これは夜間開講の特権ですね。

──学生寮の利用状況はどうですか。

現在、家族寮と単身寮を合わせて20人が寮に住んでいます。神学生だけだと13人です。年々増えています。寮では、聖書研究祈祷会を月〜土曜の早朝に開いていて、これがすごく力になっていると思います。

当校はJR目白駅から徒歩10分のところにあるので、通学の便もいいのですが、遠方の人だけでなく、誰でも寮を活用していただきたい。そこはただ住むところではなく、霊性が養われる場、祈りの場、御言葉を学ぶ場だからです。私たちのほうでも、寮の役割を広めようと力を入れているところです。

学生寮内の共有スペース。

──何か特徴的な学びはありますか。

「フィールド・スタディー」でしょうか。今年で開講3年目となります。社会の諸課題に取り組むことを通じて福音宣教の働きをしている教会や諸団体を学生自身が見つけ、そこでどういうことをしたいかを立案し、その企画書を教授会に提出します。そこで通ったら、週に1回か月に1回の割合で、実際に働くか、部分的に参加するようにします。中には、卒業までずっと続ける場合もあります。そこでの宣教的取り組みの経験は、神学校に持ち帰って報告し、全校で共有します。そういう授業を1年生のカリキュラムに加え、学問としての神学教育に体験的学びをプラスしています。この学びは、伝道者となったとき、福音宣教の働きの豊かさをイメージするのに非常に役立っています。これまで、東京・山谷地区や横浜・寿地区など日雇い労働者が暮らす町、子ども食堂、高齢者福祉の事業を行う教会などで活動しています。

また、献身を考えている人や神学校入学を検討している人のために、「献身志願者の集い」を毎年7月に開いて、今年で8回目となります。1泊2日で、「召命と献身とはどういうことなのか」、「神学校ではどういうことが行われるのか」など、勉強というかたちで聞いたり、音楽会と証しを通じて感じたり、祈りの中で献身の思いを確信したりしてもらうなど、参加型の集いです。神の召しを自覚してもらう機会でもあります。今年は8人の入学生がいましたが、その半分がこの集いの参加者でした。これに参加したから入試に合格するというわけではありませんが、迷いのある方にはぜひ来ていただきたい。5000円で国内どこからでも参加でき、交通費は神学校が負担し、宿泊希望者には寮を提供します。

礼拝堂。クリスマスには外部の人も招いて礼拝を行っている。

──最後にメッセージをお願いします。

「仕事をしながら学べる」というのが本校の大きな特徴ですが、卒業後は仕事をやめて伝道者になるケースが多いです。いろいろなキャリアを持つ人を伝道者として世に送り出していくことは、本校だからこそできることだと考えています。また、フィリピンの神学校との交流を通じて、アジアとの相互理解や和解を進める宣教にも取り組んできました。

教師も、学生一人ひとりのキャリアやこれまで歩んできた人生を尊重しますし、学生の皆さんも教師を尊敬してくださっている。相互に尊重し合う成熟した関係を双方が持ち、それが神学教育の中で良い機能として働いていると感じて感謝しています。

 






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