無人島に持って行く一冊の本【本のひろば.com】

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評者: 髙橋貞二郎

「もし、あなたが無人島で暮らすことになり、一冊だけ本を持って行けるとしたら、どんな本を持って行きますか」。
小学生の頃、何かの雑誌でそのような質問を見た。読者の答えとして、当時売れていた本、サバイバル関係の本などが紹介されていたように思う。その中で、忘れられない答えがあった。
それは「聖書」である。売れていた本を選んだ人たちは、一人になった時間を利用して読むのだろうと思った。また、生活に必要な知識を与えるサバイバル関係の本を持って行くというのも納得できた。しかし、聖書となると、励ましになるだろうくらいしか理由が思いつかなかった。
さて、昨年のこと。無人島ではないが、冒頭のような選択を迫られることがあった。病を患い、一ヶ月近く入院することになったのだ。着替えなどを用意すると、他の物はほとんど病室へ持って行けない。持ち物の選択を迫られ、選んだのが聖書だった。毎日読む習慣があったのと、これまで困難な時に度々励まされてきたからだ。
入院中、「これから先、どうなるのか」と不安になることがあった。そんな時「心をつくして主に信頼せよ」(箴言三章五節)の聖句が、今までよりもさらに心に響いてきた。また、一人病院のベッドで孤独を感じた時は「いつもあなたがたと共にいる」(マタイ二八章二〇節)の聖句を通して、改めて、どのような時も共におられて語りかけ、平安を与えて下さる主と出会った思いがした。まさに「聖書の中において、キリストは私達に出会い、また私どもに語りたもう」(E・ブルンナー『我等の信仰』豊澤登訳)である。この体験は、小学生の頃には考えつかない程、自分を力づけ、試練の中で生きる希望と勇気を与えた。冒頭で聖書と答えた人も、何かで似た体験をしたのかもしれない。
今後、もし無人島に持って行く一冊の本を尋ねられたら、以前より確信を持って「聖書」と答えるだろう。
(たかはし・ていじろう=東洋英和女学院副院長)

 

髙橋貞二郎

たかはし・ていじろう=東洋英和女学院副院長

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