NCC平和・核問題委 反撃能力保有・原発政策案、安全保障に関する方針の見直しを要請

Defence-ImageryによるPixabayからの画像

日本キリスト教協議会(NCC)平和・核問題委員会(内藤新吾委員長)は12月12日、「現政権より出されている『反撃能力保有』案および『原発政策』案について、断固抗議し撤回を求めます」とする申し入れ書を、岸田文雄首相、浜田靖一防衛相、西村康稔経済産業相、西村明宏環境相宛てに送付した。(エキュメニカル・ニュース・ジャパン)

これに先立ち、岸田政権が防衛費の増額を指示し、新たな防衛政策を作ろうとしていることを受け、NCC(金性済)は12月8日、岸田文雄首相と浜田靖一防衛相に宛てて、「防衛政策の抜本的見直しを求める要望書」を提出した。要望書では、「関連三文書」の改定や防衛費増額などの政府の計画に対して、「『専守防衛』を『反撃能力/』という『先制攻撃』的戦略に切り替えることがより確かな安全保障の道と考える思考は、結果的にはむしろ現実のより深い洞察を欠落させた、の負の連鎖の罠にはまり込む選択であることに、わたしたちは気づかなければならない」と述べ、「日本には、大国間の〝新冷戦〟的対立構造における米国戦略から平和的中立国として自立して、9条の理念に立脚した平和外交によってこの東アジアにおける平和構築に努める大きな責任があり、またからそのように日本は期待されています」と主張。安全保障に関する抜本的な方針の見直しを求めた。

申し入れ書、要望書の全文は以下の通り。


内閣総理大臣 岸田文雄 様
防衛大臣 浜田靖一 様
経済産業大臣 西村康稔 様
環境大臣 西村明宏 様

日本キリスト教協議会(NCC)平和・核問題委員会
委員長 内藤新吾

「反撃能力保有」案および「原発政策」案の撤回を求めます

私たち日本キリスト教協議会(NCC)平和・核問題委員会は、現政権より出されている「反撃能力保有」案および「原発政策」案について、断固抗議し撤回を求めます。

なお、「反撃能力保有」案は政府与党案として現在審議されており、「原発政策」案については経済産業省より出された段階ではありますが、両方とも政府与党の指示にて進められていることは明らかであり、並記して扱わせていただきます。

それらの撤回を求めるのは簡潔に以下の理由によります。

1.「反撃能力の保有」は、安倍政権より口に出されていた「敵攻撃能力の保有」の言葉を変えただけで、先制攻撃となる危険性が大です。また、相手国にとって先制攻撃を受ける恐れを与えることで、さらに軍備増強を互いに競わせるだけとなり不毛です。これらは、他国の脅威を煽って武器を買わせたい人たちを喜ばせるためにしか役に立ちません。今回も、まずはアメリカが武器を売り、その次には国内の大企業が長年求めていたことに応える形にしかなりません。そのようなことはやめ、日本は、前文および九条に記された精神を貫き、平和外交に力を注ぐべきです。

2.「原発政策」の大転換案は、とても受け入れられません。震災後に政府が与野党一致して、原発の運転期間を原則40年、最長60年と規定し、また今後の新増設は考えないとしたことに対し、原発の停止期間を数えないことをはじめとする今回の案は、国民への問いかけもなく、あまりにも拙速で、震災の教訓を忘れてしまった愚かな案です。次世代型原子炉の開発についても、死の灰が増えることには変わりなく、これ以上未来世代に負わせてはなりません。サイクル整備の加速についても、ナトリウムを扱う危険な高速炉技術は手放し、たとえ事故がなくとも海空に膨大な汚染を及ぼし爆発と放射能大放出の恐れもある再処理工場は一刻も早く廃止すべきです。

以上


内閣総理大臣 岸田文雄 様
防衛大臣 浜田靖一 様

防衛政策の抜本的見直しを求める要望書

「主は国々の争いを裁き、多くの民を戒められる。彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない。」(イザヤ書2章4節)

日本が再び、この東アジアにおいて戦争を起こすことがあってはならないという祈りと思いに立ちながら、81年前の日米開戦を思い起こす12月8日の今日、岸田首相と浜田防衛相に以下のことを切に要望いたします。

自民党政務調査会の安全保障調査会が去る4月21日に「新たな国家安全保障戦略等の実施に向けた提言(案)~より深刻化する国際情勢下におけるわが国及び国際社会の平和と安全を確保するための防衛力の抜本的教化の実現に向けて~」を公表したことを受けて、岸田首相は、「安全保障関連三文書」(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)の改定の計画を明らかにされました。言葉としては、日本の防衛における「反撃能力」と言い換えられましたが、それは以前から言われた「敵基地攻撃能力」と内実は変わらず、本質的には先制攻撃論としての意味をもっています。これは、日本が戦後一貫して憲法9条に基づき、貫いてきた「専守防衛」という立場を放棄する重大な路線転換となります。

来る12月16日には、上記の安保関連3文書が公表されると、わたしたちは聞き及んでいます。先月30日には、日本が米国製巡航ミサイル「トマホーク」を2027年までに500発購入することが報道され、今月3日には、自衛隊の沖縄南西諸島第15旅団が「南西防衛集団」として格上げされることが明らかとなりました。また、5日には、首相、防衛相に鈴木財務相が加わり、来年から5年以内に防衛費総額を43兆円にまで増額することが協議されました。この途方もない防衛費増の暴走は、これから国民の負担としてどのようにのしかかるのでしょうか。さらに、小野寺五典安全保障調査会会長は今月2日、ブルームバーグのインタビューに答え、今後日本政府は、防衛産業を国有化していく構想さえ明らかにしています。

米国学者バリー・シュトラウス(コーネル)は、2017年8月のフーバー研究所の論説の中で、世界史において「先制攻撃」がどれほど負の結果をもたらし、成功した場合でもその後その国にどれほど大きな負担をもたらすことになったか。その具体的事例として、日本の日露戦争勝利と真珠湾攻撃の最終的顛末について言及しています(“Preemptive Strikes and Preventive Wars: A Historian’s Perspective,” by Barry Strauss,Hoover Institution, August 29, 2017)。すなわち、「専守防衛」を「反撃能力/敵基地攻撃能力」という「先制攻撃」的戦略に切り替えることがより確かな安全保障の道と考える思考は、結果的にはむしろ現実のより深い洞察を欠落させた、戦争の負の連鎖の罠にはまり込む選択であることに、わたしたちは気づかなければならないのです。

わたしたちは、日本国憲法第9条がかつての日本によるアジア・太平洋戦争の悲惨な歴史経験から深く学び、生み出されたものと信じます。そして9条の理念は、戦争の負の連鎖を起こさせない、人類が“敵意”を乗り越えていくために今こそ最も必要とする普遍的な平和構築の道しるべとしてその意義を輝かせていると確信します。日本には、大国間の“新冷戦”的対立構造における米国戦略から平和的中立国として自立して、9条の理念に立脚した平和外交によってこの東アジアにおける平和構築に努める大きな責任があり、また世界からそのように日本は期待されています。

日本政府が今のまま、9条を踏みにじる“先制攻撃”的路線を突き進み、取り返しのつかない破滅的現実に人々を引きずり込んでしまう新たな歴史の悲劇をつくり出すことがないように、安全保障に関する抜本的な方針の見直しをされますことを、岸田首相と浜田防衛相に心より強くここに要望する次第であります。

2022年12月8日
日本キリスト教協議会
総幹事 金性済

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