日本基督教団、NCC 国会議員らの「靖国神社参拝」に反対する声明

敗戦から77年を迎える8月15日は、内閣閣僚および国会議員らの靖国神社参拝の有無が毎年議論となるが、日本基督教団(石橋秀雄議長)と日本キリスト教協議会(NCC、吉髙叶議長)はそれぞれ声明を発表し、国会議員らの靖国神社参拝に対する反対の意向を表明した。

日本基督教団は「国会議員の靖国神社参拝に憂慮する声明」を8日、同教団宣教委員会委員長と同教団社会委員会委員長の連名で発表した。同教団では、国内外において尊い命を犠牲にした戦争指導者を受け入れることはできず、そのような戦争指導者に対して、国会議員らが崇敬の念を抱くことを断じて受け入れられないとする。また、靖国神社と旧統一協会との関係にも言及し、「その観点からも国家指導者たちが、賢明に靖国神社と距離をとり、参拝すべきではありません」と訴える。

同教団の声明に先立ちNCCも7月8日、「首相・閣僚は、靖国神社への参拝・『真榊』『玉串料』等の奉納をしないでください 」と題する声明を、NCC靖国神社問題委員会委員長名で発表した。

声明では、日本国憲法がきわめて厳格な政教分離原則を定めながらも、靖国神社が、戦没者を神として祀(まつ)り、その死を殉国行為として無条件に美化する思想を推し進めていると指摘。また、閣僚や国会議員らによる靖国神社参拝や、「真榊(まさかき)」や「玉串料」の奉納などは、憲法によって明白に否定されたはずの「国家神道体制」を支持していると非難したうえで、それらの行為をしないよう強く要請する。

声明の全文は以下の通り。


国会議員の靖国神社参拝に憂慮する声明

8月15日は1945年に帝国主義下にあった日本がポツダム宣言を受領し、第二次世界大戦が終結するに至った日です。私どもは、この日に多くの国会議員が靖国神社に参拝することを憂慮し、反対します。

靖国神社にはこの侵略戦争を指導し、A級戦犯とされた人々が祀られています。彼ら指導者たちは大東亜共栄圏構想の下、韓国を武力によって支配し、満州国に対して傀儡し、そこの人々の自由を奪い、人権を蹂躙してきました。また、国内においても思想信条の自由を奪い、将来ある若者たちを戦場に駆り立て、尊い命が犠牲になることを強いてまいりました。とりわけ沖縄においては、生きて恥を晒すなとの思想を強いて、多くの市民を自死に追い込むカルト的なものでもありました。私どもはそのような指導者たちの姿を到底受け入れることができず、また国家の指導的な人々がそれらに崇敬の念を抱くことは断じて受け入れられません。そのようなことは世界に誇るべき憲法9条の精神からもあり得ないことです。

また、靖国神社は2013年に統一協会とともに慰霊祭を行い、統一協会と友好的な立場と見られています。その観点からも国家指導者たちが、賢明に靖国神社と距離をとり、参拝すべきではありません。

ここに私たちは国会議員の靖国神社参拝を憂慮し、反対します。

2022年8月8日
日本基督教団 宣教委員会委員長 岸 憲秀
社会委員会委員長 森下 耕


首相・閣僚は、靖国神社への参拝・「真榊」「玉串料」等の奉納をしないでください

内閣総理大臣 岸田文雄様

私たち日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会は、歴代の総理及び閣僚に対し、憲法第20条の「政教分離原則」を厳格に守ることを求め、靖国神社・護国 神社・伊勢神宮等、戦前・戦中における「国家神道」の中心的な施設への関わりを持つことのないよう一貫して要請してきました。

これらの宗教施設は、「明治」政府によって新設また改変され、「祭政一致」を唱える「宗教国家」たる「大日本帝国」の一機関として、政府による国民統制の手段として利用されたものです。

歴史の改変また捏造と言うべき「万世一系」「皇記2600年」といった、歴史的根拠 も客観的視点も持たない一方的な主張によって国民を洗脳し、帝国主義を「五族協和」、植民地支配を「大東亜共栄圏」等の美辞麗句で覆い隠し、ついには撤退を「転進」、全滅を「玉砕」、自爆攻撃を「特別攻撃」と言い換えるような、現実から目を背 け、願望を事実と見なす無責任きわまりない政府による誤った政策によって、2000万 人に及ぶアジア諸国の人々のいのちが奪われ、自国においても310万人を超える犠牲者が出ました。この災禍を生み出すことになった国家神道体制と侵略戦争への反省から、日本国憲法はきわめて厳格な政教分離原則を定めています。

戦後、靖国神社は、一宗教法人となりましたが、侵略・加害への反省はなく、戦前・戦時下と変わらず戦没者を神として祀り、その死を殉国行為として無条件に美化する思想を推し進めています。

「国民の僕」であるはずのあなたや閣僚、国会議員が、靖国神社に参拝したり、「真榊」や「玉串料」を奉納するなど、様々な形で関わることは、憲法によって明白に否定されたはずの「国家神道体制」を支持することに他ならず、見過ごすことはできません。

私たちは、憲法によってその地位が与えられ、憲法尊重擁護義務を課せられている 内閣総理大臣以下の閣僚、国会議員である政党役職者らが、憲法の理念を否定する靖 国神社や護国神社、伊勢神宮へ参拝をしないよう、また「真榊」「玉串料」奉納等の関わりをもつことのないよう改めて要請します。そして、憲法の定める「政教分離原則」を厳格に遵守するよう、加えてここに求めます。

2022年7月4日
日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会
委員長 星出卓也

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