「分断された教会は、社会に語るべきメッセージを持っていない」 東京都板橋区の教会が合同で防災セミナー

 

東京都板橋区にあるさまざまな教会が合同で2月21日、「防災セミナー」(主催:いたばし教会防災ネットワーク)を開催した。講師は、NPO法人・九州キリスト災害支援センター(九キ災)理事長で、日本イエス・キリスト教団・油山シャローム教会牧師の横田法路(よこた・ぽうろ)さん。「教会は地域に対して何ができるか──九キ災の経験をとおして」というテーマで話をした。

横田法路さん

東日本大震災が発生した後、横田さんは宮城県の南三陸に入り、何もかも砕け散った光景を目にした。そこで、「生涯をかけて東北に仕えていきたい」と思ったという。その後、教会の強みである教会間ネットワークを生かし、「サンタ・プロジェクト九州」を立ち上げた。そのときに開催したのが「LOVE東北チャリティ-・バザー」で、それまで教会に対してあまりいい印象を持っていなかった教会周辺の人たちが大勢参加してくれた。その後、2016年に熊本地震が発生し、地元の教会が協力して「九キ災」を立ち上げることに。

「サンタ・プロジェクトの働きがなければ、九キ災はなかったでしょう。社会が抱えている問題に教会が取り組むことによって、地域の人と一緒に取り組んでいくという道が開かれていったのです」

災害援助は「キリスト」の働きであると横田さんは語る。

「『九キ災』という名称でこだわったのは『キリスト』という言葉を入れることでした。『キリスト教』ではありません。私たちのすべての働きは、生きるキリストから流れているものであり、そこにキリストの御名だけがあがめられるようにと名づけたのです。

被災地の人が、クリスチャンのボランティアをまとめて『キリストさん』と呼ぶ現象は、東北で始まり、今では熊本や広島、岡山でもその現象が起きています。その意味するところは深いのではないでしょうか。私は『キリストさん』の地道な働きの中で、日本の宣教の土壌が変えられていくと思っています」

また、災害支援を通して救われる人には男性が多いことにも触れた。教会はどちらかというと女性中心だが、災害支援の現場では、男性が同じ課題を持って一緒に行動する。それを横田さんは、一つのゴールに向かって横パスをするラグビーにたとえた。

「今まで福音に心を開かなかった人が、緊張しないで伝道を受け入れてくれているのです。災害支援はまさに宣教の場であることを教えられます」

教団・教派を超えた各教会から集まった参加者

次に、「神様はどんなものでも用いられることを証しするため、災害支援の働きをしている」と述べた。

「私たちは数々の失敗を繰り返してきました。しかし、神様はその失敗を失敗だけで終わらせることはなさいません。その中には必ず意味があります。今は分からなくても、やがて分かる時が来ます」

福音書の「5つパンと2匹の魚」の箇所を引用し(ヨハネ6:1〜15)、災害支援を続けている動機についても話した。

「あるとき、8カ月の赤ちゃんの葬儀をしました。ケーキ箱のような棺(ひつぎ)を火葬したのですが、骨が見当たらない。でも、親はピンセットで必死になって捜すんですね。それは誰も止められない。彼らが捜しているのは骨のかけらではなく、愛なんですね。

私はそのことを思ったとき、少年がイエス様にささげたのは魚やパンではなく愛だったのだと思いました。だからイエス様は、『少しも無駄にならないように、余ったパン切れを集めなさい』と言われたのだと(12節)。

日本が戦わなければいけないのはニヒリズムとの戦いです。そして、そのニヒリズムを乗り越えさせるものこそ愛だと思うのです。やっていることは計算上、無駄だけれども、イエス様との関係の中で災害支援をやっている限り、イエス様は一つも無駄にされない。そういったことが大事ではないかなと思わされています」

最後に、台湾の教会指導者が語ったという言葉で話を締めくくった。

「分断された教会は、分断された社会に対して語らうべきメッセージを持っていない」

つまり、キリストの体なる教会がキリストにあって一つになるとき、分断された世界に対して希望のメッセージとなるという。

首都直下地震に備えて、5年前、板橋区で超教派の教会ネットワークが立ち上がった。今回のセミナーは2回目で、日本同盟基督教団・徳丸町キリスト教会(朝岡勝牧師)、日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団・志村キリスト教会(横山唯一牧師)、日本基督教団・板橋泉教会(渡邊義明牧師)、日本キリスト合同教会・板橋教会(大井満牧師)らが世話役となって準備を進めてきたもの。

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