【インタビュー】泉バプテスト教会付属いづみ幼稚園園長 城倉啓さん(前編)

 

東京・世田谷の下馬(しもうま)で70年近く地域の幼稚園として親しまれてきた日本バプテスト連盟・泉バプテスト教会付属いづみ幼稚園。その牧師であり園長である城倉啓(じょうくら・けい)さんに話を聞いた。

城倉啓さん

同園の前身は、米国人宣教師、E・B・ドージャー(1908~69)によって始められた「幼児クラス」。父親は西南学院の創始者であるC・K・ドージャー(1879~1933)で、1947年、日本バプテスト連盟が結成された時の呼びかけ人でもある。日本で生まれ、戦時中は他の米国人宣教師と同じようにスパイ容疑をかけられ、ハワイに逃れていたが、戦後、日本に戻り、49年、下馬の自宅を解放して幼児教育を始めた。その2年後、「恵泉バプテスト教会付属いづみ幼稚園」として認可され、恵泉バプテスト教会が中目黒に移ると、59年、新しく泉バプテスト教会が設立され、その付属幼稚園として今に至る。

──この教会の牧師と幼稚園の園長になられて5年、最初の頃と何か変化はありますか。

いづみ幼稚園は、E・B・ドージャーによって設立された由緒ある幼稚園です。幼稚園と教会の最盛期は1966~87年にかけての21年間。葛生良一(くずう・りょういち)牧師が園長として一生懸命やられていた頃です。

しかし、2013年に私が赴任してきた時には、幼稚園は定員を満たして元気だったのですが、教会の礼拝は4人の高齢者だけという状況でした。教会存続の危機、ひいては幼稚園の存続の危機だったと思います。それが今は盛り返して、信徒も30人以上に増え、礼拝も毎回20人以上が出席しています。

──何かきっかけがあったのでしょうか。

3人の子どもを育てている共稼ぎのYさん夫婦の転入会がきっかけでした。後で聞いたところによると、「小さい子どもと一緒に礼拝に出られる教会を探していた」とのこと。ちょうどその頃、託児なしで全員が同じ場所で礼拝するようにした時だったので、Y家にとってここはぴったりの教会だったのです。その後、Y家の人たちが積極的に友人に呼びかけ、さらに人数は増えていきました。

泉教会に集まる人には特徴があります。既成の教会に通えなくなっていた人たち、しかも小さな子どもを育てている働く女性たちが多いことです。

Y家の2番目のお子さんが2015年イースターにバプテスマ(洗礼)を受けました。実にこの教会では17年半ぶりのバプテスマです。その時の4人のオリジナル・メンバーの喜びはたいへんなものでした。今では、毎年のように子どもがバプテスマを受けています。

すべては神様のご高配によるものですが、大人も子どもも分け隔てなく、みんなが一緒に出られる礼拝を目指していることも、信徒が増えた要因かなと思っています。「小さい子どもを連れて行くと他の人の迷惑になる」と考えて、礼拝に来ることを遠慮してしまう人もいるので、その人たちが自由に来られる教会にしたいと思っています。

教会のホームページの写真に子どもがたくさん写っているのを見て、幼稚園にお子さんを入園させたいと思っている保護者の方が、安心して子どもと一緒に礼拝に来られたとも聞きました。その中には、20年前にバプテスマを受けたけれども、ずっと教会生活を送っていなかったという男性もいました。彼は2015年のクリスマスに泉教会に転入されました。

木製遊具とマテバシイ

──幼稚園は最初、どうでしたか。

教会付属幼稚園には固有の課題があります。教職員に「クリスチャン・コード」(信徒であることを就職の条件の一つとすること)を課すことの可否について、どこの教会も苦慮しているのではないでしょうか。特に教会員の人数が少なくなると、教会側は非キリスト者の教職員に礼拝出席義務や奏楽奉仕などを求めたくなるものです。できれば教会員になって、教会学校の幼稚科の教師などになってほしいからです。

極端に人数が少なくなっていた泉教会も、幼稚園に働く者たちにある種のプレッシャーをかけていました。月に1度の礼拝出席義務を課したり、奏楽の奉仕を依頼していたりしていたからです。

私のとった策は、幼稚園と教会のよい意味での分離です。両者の結節点にあたる「園長・牧師」として、適切な距離を保って相互に尊重する関係づくりに心を砕きました。

教会付属幼稚園の教職員が、その教会の日曜礼拝に出席することは、月曜から金曜まで仕事をし、休みの日も同じ場所にある教会で奉仕をするということです。それではリフレッシュの時間がまるでありません。礼拝が魂の休みにならない場合があるのです。また、園長の言うことは業務命令なのか、牧師が教会の都合で言っているのか、区別をつけることも必要だと考えました。

それで、月1度の礼拝参加を労働契約書業務規約から取り除きました。一切の教会奉仕を依頼しないことにもしました。思い切って縛りをなくしたことで、逆に自然に教諭たちが教会に来る機会が増えたように感じます。信じない自由を保障することで、逆に自由な意思で信仰を求める者たちが集まるので、礼拝の雰囲気はよくなります。

──大規模な労働改革ですね。

幼稚園は女性が多い職場ですから、女性たちが働きやすい職場にしたい。そのためには、産休、育休、さらに短時間労働を実現したいと思っています。また、一度辞めても、再び気軽に戻ることができ、キャリアが途切れない仕組みなど、給与も含めて、経営者として労働者の権利を守っていきたいと考えています。クリスチャンだからこそ、人権に関わる労働についてはしっかり取り組んでいく必要があると思うのです。(明日につづく)

 






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