──「#MeToo」運動をどのように理解しておられますか。
驚くべき現象だと思います。とても勇気がある行動です。この運動のおかげで、多くの人たちが自分の受けた被害について語る勇気を得ました。この運動で文化が変わり、「もはや、こうしたことについて口をつぐんでいる必要はない」と人々の意識が変革されています。起こらなかったふりをする必要はなく、俎上(そじょう)に載せることができるようになったのです。
こうした問題について話をすることは痛みを伴いますが、そのことによって私たちは力づけられます。あとはただ、白人以外の人たちも同様に声を上げられるようになるとよいなと思っています。
──もう少し詳しく話してください。
「#MeToo」というスローガンを使い始めたのは、アフリカ系アメリカ人の市民活動家タラナ・バークでした。バークは、都市部の貧困地域に住むマイノリティーに声を与えるために活動していました。活動の発端は、バークがキャンプ・カウンセラーとして経験したことでした。年若い女の子が、自分の母親の恋人に性的な暴力を振るわれていると告白したのです。バークは、「私も同じ経験をしたのよ。あなたは独りじゃない」「Me too(私もよ)」と言いたかったのに、言うことさえできなかったと振り返っています。それが「#MeToo」運動のそもそもの始まりでした。
それぞれの人の生い立ちや育った背景を知ることは大切なことです。多くの有色人種の女性はトラウマを日常的に体験しています。それなのに、彼女たちの声はマジョリティーである白人女性の声ほどには聞かれることがないのです。
──有色人種の女性は、自分のコミュニティーの男性が行ったことを公表するのをためらいがちだと読んだことがあります。自分のコミュニティーについてのネガティブな偏見を世間に植えつけてしまうことを恐れるからだと。
そうしたことは問題をさらに複雑にしています。マイノリティーにとっては、トラウマ体験だけの問題ではなく、文化や共同体との関わりの問題でもあるからです。けれども、不正は不正であり、マイノリティーの男性も自分のしたことの責任を取らなければならないのです。(次ページに続く)