WCRP日本委員会 核兵器禁止条約第1回締約国会議に向けて声明を発表 

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は16日、「核兵器禁止条約第1回締約国会議に向けた声明」を政府へ提出した。これは2日、同委員会が理事長名で発表した声明で、日本聖公会主教の三鍋裕氏ら5人が代表として外務省(東京都千代田区)を訪れ、林芳正外務大臣に声明文を手渡した。

林外務大臣(=写真中央)に声明文を手わたす中村憲一郎氏(WCRP/RfP 日本委員会理事、同ストップ!核依存タスクフォース責任者)。(写真提供:WCRP日本委員会)

今回、代表として外務省を訪れたのは、同委員会が核兵器廃絶に関する取り組みを続けている特別事業部門「ストップ!核依存タスクフォース」のメンバー5人。林外務大臣に面会し、声明文を手渡したうえで、日本政府への要望を伝えた。

2日に発表した声明では、同条約の締約国会議が初めて開催されることに対して、「核兵器廃絶 への歴史的な前進」と歓迎の意を表明。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に触れ、「核兵器使 用のリスクが極度に高まっている」との認識を示し、核抑止政策は「相互の憎悪を増長し、むしろ核使用の危険性を一層高める」ものだと警鐘を鳴らしている。

その上で、今回の締約国会議 は「核兵器使用を防ぎ、核兵器廃絶への道を大幅に前進するための至極重要な場となる」と期待を示し、関係各国および日本政府に対して5点の要望を表明した。日本政府には、同条約を 署名・批准し、締約国になるなど積極的に貢献することを求めたほか、「非核三原則」を堅持し、 核兵器に依存しない平和と安全を構築する政策の検討を求めている。

なお、21~23 日に行われる第1回締約国会議に向けて、同タスクフォースメンバーの神谷昌道氏(ACRP シニアアドバイザー)や事務局員がオーストリア・ウィーンへ渡航する。同会議への参加をはじめ、オーストリア政府主催の「核兵器の非人道性に関する国際会議」や ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)らNGO のサイドイベントにも参加する予定だ。

声明文は以下の通り。

WCRP日本委員会
核兵器禁止条約第1回締約国会議に向けての声明

核兵器使用による全人類への破滅的結末を防ぎ、「再び被爆者をつくらない」との揺るぎない信念のもとに核兵器廃絶に取り組んでこられた広島と長崎の被爆者の努力、そして核兵器廃絶に向けて、確固とした人道主義にもとづく多くの人々のたゆまない尽力によって2021年1月22日に発効した核兵器禁止条約は、2022年6月、第1回締約国会議を開催することとなった。これまでCOVID-19の影響によって幾度となく延期されたものの、この度の会合開催は、核兵器廃絶への歴史的な前進として、心から歓迎する。

核兵器禁止条約が画期的なのは、これまでの国際条約にある核兵器数を調整し、管理し、減少させるのみならず、核兵器を完全に禁止し、廃絶することを規定したことである。核兵器の使用、開発、実験、製造、保有、移転、貯蔵、そして使用による威嚇などの行為が、法的拘束力のある国際条約として禁止されたのである。開発されてから70年余、まさに核兵器は完全に違法なものとして、悪の烙印が明白に押されたのである。
この度の締約国会議では、この条約に一層強固な実効性、妥当性、正当性を付与し、そして締約国のさらなる増加によって普遍性を高める議論が行われるのである。

本年2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻したことなどに見られるように、昨今の緊迫化した国際社会は、核兵器使用のリスクが極度に高まっていると認識せざるを得ない状況にある。ウクライナへの軍事侵攻に際してロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアが核保有国であることを誇示し、核抑止部隊を高度の警戒態勢に置くことで、核兵器使用の威嚇といえる行為を示した。さらに4月27日、プーチン大統領は、「他国にない兵器を保有しており、必要な時に使う」との発言をし、核兵器使用をほのめかして他国を牽制したのである。こうした中、これに呼応するように、日本においても総理経験者や有力な国会議員から「核共有(シェアリング)」の導入を推進すべきとの言及があり、日本の国是である「非核三原則」を否定する主張がなされているのである。

核兵器で相手を威嚇し脅すことで安全を確保するという核抑止の考えが、より急速に広まってきている今だからこそ、あらためて、核抑止は取り返しのつかない大惨事を招く大変危険な政策であることを主張したい。核抑止政策は、いざとなったら核兵器を使用することを前提としているのである。このような疑心暗鬼を生み出す政策はかえって相互の憎悪を増長し、むしろ核使用の危険性を一層高めるのである。
こうした核兵器をめぐる現在の厳しい国際情勢であるからこそ、この度の締約国会議は、核兵器使用を防ぎ、核兵器廃絶への道を大幅に前進するための至極重要な場となる。そこで、この会議開催にあたり、WCRP日本委員会は、関係各国及び日本政府に向けて、以下の5点を要望する。

・締約国会議参加国は、核兵器禁止条約が国際条約として、より普遍的かつ実効的に運用されるために前向きな議論をするよう要望する。WCRP日本委員会はそのためのあらゆる協力と支援を行う。

・日本政府は、今回会合に参加しないことが、真の核兵器廃絶を希求する国々や、広島と長崎の被爆者を含めた多くの人々の深い失望と落胆を招いたことを認識し、日本国としてすみやかに核兵器禁止条約を署名・批准し、締約国になること。

・日本政府は、たとえ締約国でなくとも、核兵器禁止条約の動向に注視し、戦争被爆者のみならず核実験被曝者の援助や「環境の修復」など、唯一の戦争被爆国として長年にわたって日本が蓄積してきた経験と知見を、締約国会議での議論の進展に活かせるよう積極的に貢献すること。

・日本政府は、「非核三原則」をしっかりと堅持し、核兵器に依存しない日本の平和と安全を構築する政策について検討すること。

・ウクライナ情勢に関わる関係各国は、即時停戦に向けた適切な措置を継続的に実施すること。対話による事態打開の道を閉ざすことなく、冷静かつ忍耐強く外交努力を続けること。そして、核保有国は、ウクライナ情勢の緊迫化によって、核兵器使用といった不測の事態が起きないよう熟慮した対応を行うこと。

WCRP日本委員会は、WCRP国際ネットワークに属する世界の宗教者とともに、核兵器禁止条約が、国際法としてさらに国際規範と法的効力が高まるよう、締約国会議に強い眼差しを向け、核兵器禁止条約が目的とする核兵器の完全使用停止と廃絶に向け、祈りと行動への決意を新たにする。

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WCRP日本委員会
理事長 植松 誠

 






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