米国カトリック司教協議会(USCCB、ポール・S・コークリー会長=写真)は、教皇レオの戦争をめぐる発言に対する政治的批判が広がる中、教理委員長名で声明を発表し、カトリック教会の「正戦論」に関する理解を改めて明確にした。声明は、教皇の発言が教会の伝統的教えと矛盾しないことを強調し、誤解の是正を図る内容となっている。
今回の問題の背景には、イラン情勢をめぐる対立の激化がある。米国とイスラエルによる対イラン軍事行動をめぐり、教皇レオは一貫して停戦と対話を訴え、「戦争はいかなる形でも神に祝福されない」との立場を明確にしてきた。これに対しトランプ大統領は、教皇の姿勢を「弱腰」などと批判し、SNS上でも攻撃的な言及を繰り返した。
こうした応酬の中で教皇は4月、アフリカ訪問に向かう機内で記者団に対し、自らの発言は「福音に基づく平和と和解の呼びかけ」であり、特定の政治家への攻撃ではないと説明。「トランプ政権を恐れてはいない」と述べつつも、対立的な応酬に加わることは避ける姿勢を示した。
一方、副大統領ヴァンスも教皇の反戦的立場に批判的な発言を行い、宗教指導者は「道徳的領域にとどまるべきだ」との趣旨の見解を示したと報じられている。こうした一連の言動が、教皇の権威や教会の公共的役割をめぐる論争へと発展した。
これを受けて出された今回の教理声明は、教会が千年以上にわたり維持してきた正戦論の基本原則を再確認するもの。すなわち、武力行使は厳格な条件の下でのみ許され、とりわけ「自衛」と「最後の手段」であることが不可欠とされる。実際、カテキズムも「すべての市民と政府は戦争回避のために努力する義務がある」と強調しており、戦争は常に回避されるべきものとして位置づけられている。
声明はこうした伝統に照らし、教皇の発言は正戦論の否定ではなく、その核心にある「戦争回避の優先」と「平和への強い志向」を改めて提示したものだと説明する。すなわち、教皇の発言は個人的見解ではなく、福音と教会の社会教説に根差した教導的発言であると位置づけられている。
さらに、戦争の是非に関する最終的判断が政治指導者の責任領域に属することを認めつつも、その判断は厳格な道徳的基準に従うべきであり、安易な武力行使を正当化するものではないと釘を刺す。戦争がもたらす「悪と不正義」を踏まえ、教会は一貫して非暴力と平和的解決を優先する倫理的方向性を示してきたとする。
こうした神学的整理は、先に米司教協議会が発表した政治的声明とも軌を一にする。同声明は、教皇に対する攻撃的な言説が信徒の分断を招くおそれがあるとして、政治指導者に対し宗教的権威への敬意と発言の節度を求めていた。今回の教理声明は、それを一歩進め、教皇の発言が教会の教えに照らして正統なものであることを明確に示した形となる。
(翻訳協力=中山信之)

