【インタビュー】東京神学大学教授・芳賀力さん 召命共同体が伝道者を育てる(後編)

 

──入学にあたって重視されていることは?

設立から一貫して大切にしているのが「召命感(召命の確信)」です。入学する時はもちろん、大学院の試験でも、召命をきちんと受け取っているかを重視します。その上で、適性があるかどうかが問われます。客観的に見てどうかという確認も必要なので、入学時は出身教会の牧師、大学院の試験では出席教会の牧師の推薦書が必要です。そのどちらも役員会を経たものです。

──いい加減な気持ちでは入学できませんね。

さらに、入学後も進級するごとに召命のチェックがあります。そこでも牧師から文書を出してもらいます。それだけでなく、後期の授業が始まる最初の日には、出席教会の牧師と懇談会をやります。それくらいして神学校と教会が車の両輪となって手を取り合って育てていくというのが、わが校のモットーです。これは、元学長の桑田秀延(くわだ・ひでのぶ)先生が盛んに言っていたことで、それが今では制度化し、明確化されています。

芳賀力さん

──そこまで厳しくするのはなぜでしょうか。

良い伝道者を生み出したいという一念です。教会に遣わされてから揺れ動いてしまったら、迷惑がかかりますから。でも、ここまでしても問題は起こるんですね。本当に申し訳ない。

──そのための対策は取られていますか。

新入生には4月後半に生活倫理講座(90分×3回)を設け、具体的なハラスメントのテーマに触れてもらっています。その一方で、学生の心のケアにも気を配るようにしています。学内にパストラルケア・センターを設置し、誰でも訪ねて相談できるようにしています。

私たちは、信仰と志を同じくする召命共同体なんですね。厳しい面もありますが、多様な学生が互いに気づかい、助け合いながら楽しんで学生生活を送っています。

──神学を学びたいけれども、牧師になるつもりはないという人もいます。

そういう人のために2017年2月から、神学研修志望コースを設けています。授業はまったく同じです。さらに、この中から周りに影響されて、途中から献身志望コースに変える人が現れます。

召命共同体ということが大きな教育効果をもたらしていると感じています。その一方、召命が自分一人の思い込みだったり、伝道者としての適性がなかったりすれば、ほかの道を勧めます。

東京神学大学外観

──共同体として、卒業後もつながりがありますか。

あります。伝道者はしばしば孤独になりますから、牧師同士の交わりは非常にありがたいです。

──同窓会的なものは?

1969年ごろ、東神大にも大学紛争の嵐が吹き荒れました。当時の学長が苦渋の決断をして大学構内に機動隊を入れ、バリケード封鎖を撤去したのですが、そのことで非難され、それが後々まで大きく影響しました。同窓生も、東神大と教団を批判する側と理解する側に分かれて対立し、同窓会が開けなくなってしまったのです。かろうじて代表者で継続していたのですが、同窓会規則は70年代で止まったままでした。

それが昨年、毎年6月に開かれる日本伝道フォーラム(元日本伝道協議会)の後に同窓会総会を約50年ぶりに開催しました。今年、2回目が開かれ、そこで規則を現状に合わせて変更することになっています。

──同窓会には何を期待しますか。

覚えて祈ってもらうと同時に、支援してもらうことです。今、キャンパスの一大プロジェクトとして整備計画をやっていて、教員住宅や学生寮、研修センターを3期に分けて工事していきます。研修センターは、諸教会の研修にも使ってもらえる施設を予定しています。やはり、教会にそういうものを提供し、つながっていくことで、学生募集にも協力してもらえるのではないかと考えています。

──財政面ではどうでしょうか。

諸教会からの献金や、個人が後援会の会員になってもらうことで支えてもらっています。本来、教団立なので、教団が支えてくれればいいのですが、学生紛争の結果、それもできなくなりました。そのため、諸教会にわが校の教育理念を理解してもらうため、各地に40くらい後援会を作りました。そこに私たち教員が出向き、出張講義をするなどして、神学校と後援会が交流するようにしています。

東京神学大学の礼拝堂

──ほかにも外に向けての活動はされていますか。

夏期伝道では毎回40教会に学生を派遣し、インターンシップを実施しています。この体験は大きく、みんな成長して帰ってきます。また、神学校を覚えてもらうための一つの工夫として、10月の第2日曜に神学生を近郊の教会に送って、神学校日礼拝をしてもらっています。その上で、神学生がミッション・スクールで証しをし、後輩たちにアピールします。この証しは『遣わされる日のために──20人の献身の喜び』という冊子になっています。あとは、公開夜間神学講座も銀座教会・福音センター地下で毎年開催しています。

──これからどういう学生に入ってきてほしいですか。

「私は主のために伝道するんだ」という熱いビジョンを持つ学生ですね。いま日本の教会の現状は厳しいと思います。でも、毎年9月の土曜日に東神大主催で「日本伝道を担う青年の集い」を開いているのですが、昨年は150人くらいの若者が集まりました。参加した人たちは、「仲間がこんなにいる」と元気をもらって帰ります。これからは、一丸となって協力して伝道する姿勢が大事になっていくのではないかと思っています。

 






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