震災から10年、サンタプロジェクト九州が記念集会をオンラインで配信

サンタプロジェクト九州(福岡市、代表理事:横田法路)は7日、「あの日から10年ー3・11東日本大震災特別記念集会」をユーチューブによるオンラインで開催した。

サンタプロジェクト九州は、東日本大震災発生直後に、日本イエス・キリスト教団福岡教会(油山シャローム教会)牧師の横田法路(よこた・ぽうろ)さんが、南三陸町に入り、ボランティア活動に従事したところから始まった。キリストの愛の精神に基づき、東北の子どもたちに、クリスマスプレゼントを届け、それをとおして東北と九州の心と心をつなぐ活動を10年にわたって続けてきた。

「苦難の日には、私に呼びかけよ。私はあなたを助け出しあなたは私を崇めるであろう」(詩篇50:15、聖書協会共同訳)が、同プロジェクトの働きに与えられた御言葉。これは、横田さんが10年前の3月11日の朝に読んだ御言葉で、この数時間後に東日本大震災が発生した。横田さんは、「神様は、この御言葉を通して前もって語りかけてくださった」と話す。

宮城からのビデオメッセージに登場するのは、キリスト聖教団西仙台教会牧師で、地域支援ネット架け橋の代表も務める中澤竜生(なかざわ・たつお)さんと、会津聖書教会牧師の高橋拓男(たかはし・たくお)さん。

中澤牧師は、震災当時のことについて、津波で家を失った夫妻の話を紹介する。高台に住んでいたため「まさかここまで来るとは思っていなかった」と当初は考えていたという。また、一瞬の判断が生死の分かれになったことなどが明かされた。夫妻は、避難所や仮設住宅での暮らしを経て、5年前に現在の場所に家を建てて、新しいコミュニティに馴染もうと努力しているが、精神的に不安定になることもしばしばだと言う。

被災地の景色を映しながら中澤牧師は、「物的な復興は進んでいるが、被災者の心はそれについていけてない」と述べ、「10年経ってもまだ苦労している人たちの良き伴走者であり続けたい」と話す。そして、「震災前の故郷に立つことは、現実にはもうできませんが、心の故郷を実現したいと思う」と力を込めた。

高橋牧師は、福島での原発事故が終息するのに30年はかかるという事実の中で、失った生活の土台を回復することや、失われた人とのつながりを取り戻すことは今なお難しく、その現実はこれから深刻な問題となっていく。被災者が抱える大きな欠けをどのように埋めていけるかが、キリスト教会が今後向き合っていく課題であり、そのためには、痛みを共有することができるクリスチャンの仲間とつながりを深めていくことが大切となるだろうと話す。そして、5年前に熊本地震が発生した折に、サンタプロジェクト九州が福島に来てくれたことに触れ、次のように語った。

「大変な事態にありながら、福島に来てくださった九州の皆さんと今も繋がっているという事実が、今も励ましになっている。私たちはその事実から多くのものをいただいた。そして、そのいただいたものを持って、大きな欠けを持つ人たちと関わることができる。九州と距離は離れていても、共に祈りあい、励ましあっていく。その関係を大切に保ち続けていきたいと願います」

音楽ゲストとして出演したのは、仙台市出身のアーティスト、大宮香織さん。大宮さんは、宮城学院女子大学音楽科で声楽を専攻した後、東京バプテスト神学校教会音楽マスターコース修了。東日本大震災を機に、ファーストアルバム「しあわせのおきて」をリリース。2016年春より北九州市に在住し、コンサートや音楽制作活動を行っている。10年前、仙台市の実家で被災した。ここでは、震災後に気仙沼を訪れた時に作った「雨ニモマケズ」、2年前に愛する娘を失い、悲しみの中で気づかされた神様の大きな愛を謳(うた)った「毎日が奇跡」などを披露した。

サンタプロジェクト九州は、震災から10年ということで、その活動に1つの区切りをつける。とはいえ、被災地でのニーズはまだまだ多くある。代表理事の横田さんは、今後も被災地のために祈り、支援を続けていく考えであることを伝え、個人でも教会単位でも現地での働きを支えてほしいと呼びかけた。

あの日から10年ー3.11東日本大震災特別記念集会 サンタプロジェクト九州

この記事もおすすめ