孤独に疲れている日本人がキリストにつながっていることを伝えたい 救世軍司令官ケネス・メイナー氏に聞く

 

2015年に日本伝道120周年を迎えた救世軍。制服や階級章、帽子などを着用し、教団本部を「本営」、教会を「小隊」と呼ぶなど、軍隊を模した組織形態を持つことが特徴だ。創立者のウイリアム・ブースが、「Not volunteer army, but Salvation army(義勇軍にあらず、救いの軍なり)」との天啓を受けたことによる。日本では、山室軍平が伝道や廃娼運動に取り組んだことや、社会福祉において先駆的な働きをしてきたこと、また年末の風物詩ともなっている街頭募金運動「社会鍋」がよく知られている。

ケネス・メイナー日本司令官とシェリル夫人

2016年に日本に司令官として着任したケネス・メイナー氏に話を聞いた。

──幼少の頃から救世軍で育ったのですか。

いいえ。私が初めて救世軍を知ったのは、物心がついた頃、街角の大きなクリスマス・ツリーの前で、トラクト(伝道用パンフレット)を配っている制服を着た人たちを見た時です。クリスマスのきれいな街並みと、にこやかに活動していた彼らを何となく覚えています。

──救世軍の小隊(教会)に足を運んだのはいつですか。

高校3年生の時でした。自宅からそう遠くない小隊へ従妹に誘われて、半ば嫌々足を運んだのです。そこには5人くらいのメンバーがいました。1ドル50セントだけ献金をして、メッセージを聞き、賛美して、「二度と来ないだろう」と思いながら、ドアを開けて外に出ようとしたのです。

すると、ある男性が私の肩を叩き、「イースター劇に出てみないか。よければ、来週の水曜日、夕方6時からここで練習するから来てほしい」と言うのです。その瞬間から私の人生が大きく変わりだし、私はその小隊へ通うようになりました。

初めは小さかった小隊が徐々に大きくなっていく様子を私は見ることができました。神様の愛によって多くの人が小隊へ集い、互いに愛し合う姿を見て、私自身も士官学校(神学校)へ導かれました。

──日本の生活はいかがですか。

言葉の壁はありますが、とても快適です。このオフィスには、創立者であるウイリアム・ブースの写真と一緒に踏み絵が飾ってあって、その踏み絵を通して日本人がかつて守ってきた信仰の強さを見ることができます。

現代の日本の人々を見ていると、とても疲れているように見えます。ただ肉体的に疲れているということではなく、「孤独」でいることに疲れているのではないでしょうか。私たちクリスチャンは教会に属し、イエス様に属していて、決して孤独ではありません。そのことを日本の人々に伝えていきたいと思っています。

──救世軍の信徒になる時には特別な誓約があると聞いています。

救世軍では、一般の教会で行われる洗礼式の代わりに入隊式というのを行います。その際に信仰告白とともに6つの誓約を立てます。「酒」「たばこ」「薬物」「ギャンブル」「オカルト」「ポルノ」の一切をやらないという誓いです。

──救世軍は、社会に対する働きも積極的にされています。

救世軍は、「心は神に、手は人に」をモットーに活動をしています。米国では、社会鍋と同様に、6月第1金曜日の「ドーナツの日」も有名です。これは、第一次世界大戦時、救世軍の女性メンバーが戦場の最前線にいる兵士にドーナツを届けたことを記念した日で、大恐慌時代に貧困者を救済するための資金集めのイベントとして救世軍が1938年に制定しました。この日には一般のドーナツ・ショップもドーナツを無料で配ります。

──日本の社会福祉の働きにはどのようなものがありますか。

二つの病院をはじめ、保育園、児童養護施設、特別養護老人ホーム、ケアハウス、婦人保護施設、アルコール依存症者支援施設など、19の施設があります。杉並区と墨田区にはバザー会場があり、皆さまからいただいた献品で毎週土曜日、バザーを行っています。日本全国各地、地域に根ざした働きを目指しています。また、9月15日からは感謝祭募金も始まります。そうした資金を元に、小隊の活動や社会福祉活動、災害が起きた際などの救援活動も行っています。

守田 早生里

守田 早生里

日本ナザレン教団会員。社会問題をキリスト教の観点から取材。フリーライター歴10年。趣味はライフストーリーを聞くこと、食べること、読書、ドライブ。

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