【あっちゃん牧師のおいしい話】第8回 クリスマスプレゼント 齋藤篤

家に入ってみると、幼子が母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。新約聖書 マタイによる福音書2章11節(聖書協会共同訳)

先週の火曜日、LINEの通知音とともにメッセージがありました。教会メンバーのTYさんからです。

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こんにちは。
先生はターキーを焼いたことがありますか?
冷凍で3.5キロくらいのターキーいりますか?
焼くならプレゼントしますよ。
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おぉー!

ターキー、つまり七面鳥をプレゼントしてくださるというのです。こんな嬉しい話を断る理由はありません。ありがたく頂戴しますとお返事をしました。そして、明くる日曜日の礼拝で、TYさんから冷凍のターキーを一羽いただきました。ラグビーボールのような大きさのターキーはカチカチに凍っています。もし、こんなのをパスされたりしたら立派な凶器になっちゃうんじゃないかというような代物です。

ターキーを焼くのには、結構時間も手間もかかります。いつ焼こうかなと思いつつ、金曜日に決行することにしました。まずは、冷蔵庫のなかでカチカチに凍ったターキーを解凍します。我が家の冷蔵庫には入りきらない大きさなので、教会の台所にある業務用冷蔵庫を拝借して、ターキーさんに休んでいただくことにいたしました。

水曜日の夜、教会の祈祷会が終わったあとに牧師館の台所で「あやしい液体」づくりが始まりました。実はこのあやしい液体こそ、ターキーを焼くのに必要な工程になります。鍋いっぱいのお湯を沸かして、結構多めの塩(これは美味しい塩であることが大事。今回は沖縄産の塩を使いました)と砂糖をたっぷり入れます。調味料入れに眠っていた乾燥ハーブと粒こしょうを鍋に投入します。すでに素敵なハーブの香りが家中にひろがります。火を止めてひと晩かけてハーブとこしょうの香りを液体に移します。水曜日の作業はこれにて終了。

木曜日の朝、解凍されたターキーを袋から取り出して、軽く洗ったら大きな袋にターキーを鎮座させて、昨晩つくった謎の液体を流し込んで袋の封をします。容器のなかに入れてまたまた冷蔵庫で1日休ませます。これにて木曜日の作業は終了。謎の液体は、ターキーに味と香りをつけるのと、お肉の保水効果を高めるために使います。こうすることで、結構パサパサなターキーもかなりジューシーに仕上がります。

金曜日の昼。教会のバイブルスタディが終わって、いよいよ焼きに入ります。謎の液体に漬けられていたターキーを取り出して水気をふいたあと、皮にたっぷりのオリーブオイル(ベンブラヒムさんの美味しいオリーブオイル!)をたっぷり塗って、いざオーブンへ。最初は高温に、そして低温でじっくりと焼きます。その時間たるや2時間30分!肉の焼けるいい香りがまたまた部屋じゅうにただよいます。なかまで焼けたことを確認して、オーブンから取り出して美味しい肉汁が外に出ないように落ち着かせてターキーのロースト、つまり七面鳥の丸焼きが完成しました!日曜日から6日間の旅路を経て、かくして僕たちのお腹のなかに導かれるときがやってきました。

と、ここまではよろしい。

しかしまだ肝心な「誰と食べようか」という最重要課題が残されています。そこで、このターキーをともに食すために白羽の矢を当てたのは、クリプレでおなじみのMAROさん。早速、MAROさんにメッセージ「ターキー焼くから食べにこない?」。すぐにお返事。「行くー!」。これで交渉成立!そして、たまたま教会を訪ねてくださるという妻ちゃんの友人であるSCさんもお誘いして、4人の楽しい夕食が始まりました。

オーブンに残った肉汁でグレイビーソースをつくって、お肉にかけるオリーブオイル・YAさんからいただいた砂糖大根のシロップを添えて、切り分けたお肉にかけていただきます。なぜかターキーには甘いソースが抜群に合うのです。うーん、ターキー!美味しすぎてたまりません。いみじくも教会メンバーのOSさんからいただいたおでん種も煮込んで、おでんとターキーという不思議な取り合わせではありますが、舌鼓を打って、楽しくおしゃべりして、気付いたら日付が変わる直前まで楽しんでいました。さらにクリスマスプレゼントをもらったような気分にさせられたのは言わずもがな。本当に感謝感謝なひとときでした。

そもそもクリスマスとか、収穫感謝祭(サンクス・ギビング・デイ)に七面鳥が焼かれるようになったのは、イギリスからアメリカ大陸に入植した人たちがなかなか収穫に恵まれなかったときに、先住民の助けによって生き延びることができたことへの感謝から、その人たちを招いて七面鳥を焼いたことが始まりと言われています。つまり、人々に対する感謝の心が食にあふれているっていうわけです。私たちは自分だけで生きているんじゃない。神様がいろいろな人の助けとか思いやりを通して、愛を差し出してくださるのだなと考えたら、なんとも胸が熱くなるではありませんか。

皆さん、どうぞ素敵なクリスマスをお迎えください。

あっちゃん牧師のおいしい話、第8食目はこれにておしまい。次は年明けにお目にかかりましょう!

齋藤篤

齋藤篤

さいとう・あつし 1976年福島県生まれ。いわゆる「カルト」と呼ばれる信者生活を経て、教会に足を踏み入れる。大学卒業後、神学校で5年間学んだのち、2006年より日本キリスト教団の教職として、静岡・ドイツの教会での牧師生活を送る。2015年より深沢教会(東京都世田谷区)牧師。美味しいものを食べること、料理することに情熱を燃やし、妻に料理を美味しいと言ってもらい、料理の数々をSNSに投稿する日々を過ごしている。

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