東京神学大学の大住雄一(おおすみ・ゆういち)学長・教授(旧約聖書神学)が5日、64歳の若さで召天し、9日には葬儀が執り行われた。
東京神学大学で学び、大学院時代には大住氏から直接指導を受けた山畑譲(やまはた・じょう)氏(日本基督教団・千歳船橋教会牧師)に話を聞いた。山畑氏の専門は大住氏と同じ旧約聖書学で、エゼキエル書についての論文などを書いている。
──今のお気持ちは?
大住先生が体調を崩され、芳賀力(はが・つとむ)先生が学長代行をなさっているという東神大の現状は聞いていましたが、くも膜下出血で亡くなられたと聞いて、たいへん驚いています。
──大住学長との出会いを教えてください。
私が国際基督教大学(ICU)を卒業した後、東神大に進学し、旧約聖書を研究したので、先生から直接教えていただきました。ただ、先生はICUでも教えられていたので、大学時代から授業は受けていたんです。
──研究者としての大住氏は?
日本の旧約聖書学において非常に大きな貢献をされた先生だと思います。第一線で活躍されていた方でしたので、先生が天に召されたのは、東神大だけでなく、日本全体にとって非常に大きな痛手だと思います。
──大住氏は『VTJ旧約聖書注解』(日本キリスト教団出版局)の「申命記」を執筆中でしたし、昨年12月に刊行された新しい礼拝用聖書「聖書協会共同訳」の翻訳者(旧約担当)のお一人でもありました。
注解書や聖書翻訳もそうですし、学会でも非常に多くの論文を公表されていました。先生ご自身が論文を発表されない時でも、学会にいるだけで場が引き締まる感じでした。質疑にしても、たいへん鋭いものをお持ちでしたし、そういう意味でも非常に残念です。
──牧師としての印象はいかがでしょうか。
先生の教会に行ったことがないので、実際の牧師としての姿は分からないのですが、先生から「牧師として教会に仕えていく」ということを教えていただいたと思っています。そういう意味では、研究と牧会の両方のお立場で、心を砕きながら、祈りながら歩まれた先生だと思います。
──印象に残っている出来事はありますか。
一つの出来事を挙げるのは難しいのですが、やはり先生にいちばん感謝していることは、「教会に仕える」ということを教えてくださったことです。先生は牧師と研究者という二つの側面をお持ちでしたが、研究だけではなく、教会にも責任を持っておられました。先生から教えを受けていく中で、「教会に遣わされ、仕えていく」ということを、その姿勢や言葉を通して教えていただきました。
私自身も牧師をしながら研究を続けていますが、東神大の教授陣の先生方はみんな牧師であり、研究者です。東神大の場合、教会に仕えることが最大の目的であり、そのための研究なのです。そういったことを自ら示しながら、聖書を学んでいくことを教えてくださった先生です。
──同じ分野の研究者として引き継いでいかれることはありますか。
旧約聖書学は領域が非常に広く、先生がやられていたことと私の研究は直接のつながりはありません。しかし、「神学」という言葉をあえて使いますが、「旧約聖書神学」のやり方や考え方を大学院時代に丁寧に教えていただいたことは、今後研究を続けていく上での大きな力だと思っています。