5月8日「どうしてそうなるのか、知らない」

人が土に種を蒔いて、夜昼、寝起きしているうちに、種は芽を出して成長するが、どうしてそうなるのか、その人は知らない。土はひとりでに実を結ばせる...(マルコによる福音書4章26〜28節)

主イエスは冒頭のたとえで「神の国」の秘密を語った。福音という種が蒔かれるところに、神の国は現れる。福音を聞いて、主イエスを信じる者たちが起こされるところに、神が真実と愛によって支配する神の国が始まっている。教会は地上においてすでに始まっている神の国である。

農夫は種を蒔くが、どうして種が芽を出し、成長するのか知らない。同じように、福音の種を蒔く伝道者も、どうして主イエスを信じる者が起こされるのか知らない。「土はひとりでに実を結ばせる」。信じる者を起こし、成長させるのは神である。ここに、神の国である教会の秘密が語られている。教会が進展してゆくのは、人間の業によるのではなく、神の業、聖霊による。聖霊は宣べ伝えられる福音を通して、イエスを主と告白するキリスト者を生み、ご自身の教会において育む。こうして神の国は進展してゆく。

神の国の進展が人間の業によらず、神の業によるのであるなら、私たちキリスト者はただ手をこまねいていればよいのか。そうではない。先に神の国に招かれた私たちは、主の僕(しもべ)として、主に託された福音の種まきをするのである。伝道する私たちにとって大事なことは、福音の種を芽生えさせ、成長させるのは神であるという信仰である。「神は、すべての人々が救われて真理を知るようになることを望んでおられます」(Iテモテ2・4)。私たちは神の御心を知る僕として、「御心をなさせたまえ、御国を来たらせたまえ」と祈りつつ、種まきにいそしむ。

内藤淳一郎

内藤淳一郎

西南学院大学神学部卒業後、日本バプテスト連盟の教会で牧会、鹿児島大学哲学科のカトリックの神学の学びから、鹿児島ラ・サール高校でも教える。日本バプテスト連盟宣教室主事、日本バプテスト連盟常務理事を8年間務める。

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