偉大な教育家は、立派な教育を受けたわけではなかった

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◆1712年6月28日 ジャン・ジャック・ルソーの誕生日

ルソーはフランスの哲学者、教育学者、作曲家で、後の多くの思想や、現代の教育にも大きな影響を与えている人物です。主著『エミール』は特に多くの思想家に愛されていますが、一方で当時の教会からは禁書とされました。

ルソーは、神を理性的に捉えようとするいわゆる理神論者で、神のことを「ある意志」とか「ある英知」と表現しました。これらはキリスト教に限らず、あらゆる宗教に共通の基盤であり、キリスト教もイスラム教も仏教も、これをそれぞれの文化基盤に従って表現したものに過ぎない、と、ルソーは考えました。これは現代の「宗教多元主義」の元祖ともいえる主張で、特に日本人には親しみやすい考え方かと思えます。あまりにも親しみやす過ぎて、「これこそが宗教の真理だ!他は間違ってる!」と多元主義を主張する方もいらっしゃったりしますが、しかし、世界的には多元主義を肯定する人は少数派です。ルソーが述べたことはあくまで仮説であって、真理そのものではありません。

ルソーに限らず、どんな偉大な思想家であっても、その人が人間である以上、真理そのものを提示することはできず、その主張はあくまで推論や仮説にすぎません。このことを忘れてしまうと、要らぬ争いを招くことになります。

ルソーは「教育の目的とは、徳を教えることよりも、悪徳から守ることである」と子どもの自発性を重視した教育論を説き、教育論者として非常に有名ですが、実は彼自身は決して「教育に良い」生き方はしませんでした。若い頃は定職につかずに放浪し、年上の愛人の家に転がり込み、その愛人が世話してくれた仕事もすぐにやめ、手配してくれた神学校もすぐにやめ、愛人に愛想を尽かされるとまた放浪し・・・と、ずいぶんな生活を送っていたのですが、しかしこの時期のこうしたことに対する後悔から「人間は本来善良であるのに、堕落を正当化する社会制度によって邪悪になってしまう」という考えにたどり着き、ここから後の『エミール』が誕生したのだとも言われています。

それではまた明日。

横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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