「島」の教会が立ち続けるために 福田 哲 【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】

地方教会に仕えることを主の召しと受け止めた私は、導かれるままに島しょ部教会にたどり着きました。

豊島、直島、さらに小豆島の教会を牧会する上で、公共の船もありますが、乗り継ぎなど時間の制限があり、ルートも遠回りする必要がありました。島の教会に転任するにあたって、多くの方とのあいさつは「島なら船が必要だね?」「そうですね。誰か船ください」が定番でした。半分冗談、半分本気でしたが、ある出会いによって実現したのです。

岡山を中心とした超教派の牧師が集まる「(イエスさまがいないと)ダメな牧師の会」通称「ダメ牧」で、実際に瀬戸内の教会を船で移動している牧師がおられ、刺激を受けてまず船舶免許を取り、その牧師を通して中古の船も手に入れることができました。自分の船があれば移動もしやすくなるし、あわよくば公共のルートにない有人の島に出ていけるのではないか、と思ったのです。しかし実情は、車と違って思い通りに動かない難しさ……というのは建て前で、小心者のため雨風にビビッて直島しか行けていないのですが。さらに昨年、エンジントラブルで漂流するという経験もしてしまい、なおさらビビるという……主を信頼して眠ってしまわれるイエスさまの心境にはほど遠い……。

さて、いくつかの媒体でも取り上げていただいた「教会カフェ」は、島の教会をアピールするのに有効でした。香川豊島教会は主要道路から外れた道の行き止まりにあり、礼拝や祈祷会に来られる方以外で教会を訪れるのは、迷子の観光客かイノシシくらいでした。なんとか島民にも教会を知ってほしいと思っていたところ、「先生、カフェとかやってみたらどうですかね?」という役員のひと言がきっかけになりました。観光地として人気が上がってきていたものの、私が赴任したばかりのころはまだまだ飲食店も少なく、今でも洋生菓子を提供するお店は多くありません。そこで月1回、原則第3土曜日の午後に2時間だけ開催することになりました。

初めは人が来るだろうかという心配をしましたが、古くから教会員とつながりのある方が来てくださり、口コミも広がったおかげで、多い時は島民の1割が訪れるほどになりました。島民同士や観光客も交えた「社交の場」としても用いられました。「牧師の手作りスイーツ」が売りですが、教会員も飾りつけやお客さまの話し相手になるなど、それぞれができる奉仕をしてくださっています。

コロナ禍で中断した時期もありますが、それでも要望に応えてテイクアウトのみの提供もあり、これまで56回開催できました。現在は、台所があった別館を老朽化により取り壊したため休止中となっています。再開を願う声があることも感謝ですし、地域の皆さまに有効に用いていただけるような建物を新たに建てたいという思いもあります。

また、地域に仕える働きとして消防団にも加入しました。日曜日は行事に参加できないことを了承していただき、それ以外のところで、できる限りお手伝いさせていただいております。

世界的観光地の直島との兼務、豊島の10倍以上の面積がある小豆島の代務と、体がもういくつかほしいところでありますが、主のご用のために喜んでお献げした身ですので、お前の役割は終わったとの声を聞くまで、伝道最前線の働きを続けさせていただきます。

ふくだ・てつ 1975年東京都生まれ。8歳の時に交通事故で父を失い、お受験戦争に巻き込まれ家計を助けるため国立を目指すもなぜか青山学院中等部のみ合格。そこでキリスト教と出会う。日本基督教団能代教会、多度津教会を経て、2016年より香川豊島教会と香川直島伝道所を兼務、23年より内海教会を代務。丸亀少女の家(女子少年院)教誨師も務める。

【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】 主が与えてくださった賜物を用いて 福田 哲 2024年7月11日

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