「福音の旅人」「励ましの牧会者」「慰めの語り手」――。20問の質問に答えると、自分の牧会スタイルが16タイプのいずれかで示される「牧師タイプ診断」が、XやフェイスブックなどSNSを中心に牧師やキリスト教関係者の間で広がっている。利用回数はすでに1千回を超え、「#牧師タイプ診断」のハッシュタグとともに結果を共有し、互いのタイプを見比べる投稿も相次ぐ。
診断を開発したのは、牧師紹介派遣、リサーチ&コンサルティング、メディアなどの事業を手がける株式会社グレープヴァイン(後宮嗣代表取締役)。「SIXTEEN LIGHTS」と題した専用サイトでは、「光が映す、あなたの牧会のかたち。」をキャッチコピーに、20問、約3分で診断できる。
開発の背景には、後宮氏自身の経験がある。大学卒業後、10年間商社に勤務。その間は一人のキリスト者として、自分の教会で出会う一部の牧師しか知らなかった。その後牧師となり、教派や地域を越えて多くの牧師と接する中で、「牧会や奉仕のかたちは、こんなにも多様なのか」と驚いたという。
一方で教会には、「牧師とはこうあるべきだ」という型にはまった牧師像が根強くあるとも感じてきた。「若くエネルギーにあふれ、知的でありながらユーモアもあり、細やかな気遣いができて指導力も発揮する。教会の中では信徒と集会を大切にし、外に出ては伝道して求道者を増やしてくれる。まるでメシア待望論のように、一人の牧師にすべてを期待する空気があるのではないでしょうか」
そうした理想像と自分自身との落差に苦しむ若い牧師が増えているのではないか――。その問題意識が開発の出発点になった。
「本来、人はそれぞれ異なる賜物を授かり、神さまから固有の使命を与えられています。限られた『模範的な牧師像』に自分を押し込めるのではなく、実に多様な牧師像があることを知れば、自分らしい牧会に踏み出せるはずです」と後宮氏。自身も牧師であり、福音宣教に携わる会社の代表として、「教会のために役立つものを届けたい」と開発を始めた。
設計の土台にしたのは、MBTIに代表される性格類型論の考え方。「交わり/静まり」「具体/構想」「原則/共感」「計画/臨機」という四つの軸を設定し、AIを活用して検討を重ねながら、礼拝後の過ごし方、説教の準備、役員会での振る舞いといった教会ならではの場面に置き換えて設問を作った。
診断結果も一般的なアルファベットではなく、「神学の建築家」「励ましの牧会者」など16の牧師像として表現し、パウロやバルナバ、マルタなど聖書の人物になぞらえた。
「16という数は、人の多様さを表すには決して多くありません。それでも、実績のある理論の上に組み立てることができますし、これまでのいくつかの型にはまった牧師像を押し広げるには十分な数だと考えました」
公開にあたっては、答え方の癖によって特定のタイプに結果が偏らないよう、数十万人分の回答をコンピューターで試算し、検証したという。
公開後はSNSで診断結果を共有する投稿が相次いだ。「励ましの牧会者」と診断された利用者が「目指している牧師像ドンピシャでビビった」と投稿するなど、自分の結果を楽しむだけでなく、互いのタイプを見比べるやり取りもみられる。「慰めの語り手」と診断された利用者からは、牧師という特殊な設定の診断でありながら、自分の状況に置き換えて答えることで、自身について考える機会になったとの反応もあった。
利用回数が1千回を超える反響について、後宮氏は「正直なところ、想定をはるかに超えています」と話す。
特にうれしかったのは、長いキャリアを持つ先輩牧師たちが数多く診断し、その結果をSNSで共有したことだったという。「その結果がSNSで次々とシェアされることで、若手牧師や信徒の方々が抱く牧師像そのものが広がっていく。まさに願っていたことが起きています」
広がった背景には気軽に楽しめる遊び心もある一方、牧師という働き特有の事情もあるのではないかと見る。「正解のない道を歩み続けなければならない牧師が、『自分は何者なのか』という存在そのものへの問いを、心のどこかで抱えているからなのかもしれません」
16タイプといえば、若い世代を中心に広く知られるMBTIを連想する人も少なくない。ただし、この診断は正式なMBTIそのものではない。サイトでも「性格類型の考え方を参考にした独自の設問」であり、「心理検査ではありません。自己省察と語らいのきっかけとしてお使いください」と明記している。
後宮氏が期待するのも、タイプによって牧師の適性や優劣を判定することではない。「教勢の低下が語られる時代にあって、牧師は多くの期待と重圧の中にいます。この診断を通して、自分の特性を生かした牧会のあり方、信徒との関わり方、説教のスタイルに気づき、『これが自分に与えられた賜物だ』という自信を持っていただけたらうれしいです」
診断結果には、疲れた時に表れやすいサインや、支え合える同労者のタイプも盛り込んだ。「自分とは違うタイプの牧師を知ることは、他者の賜物を尊ぶことにもつながります」と話す。
牧師版に続いて、すでに「信徒版」も公開した。こちらでは聖書に登場する16人になぞらえた「異名」が与えられる。
「教会は牧師一人が担うものではなく、多様な賜物を持つ一人ひとりから成る『キリストの体』です。目立つ奉仕ができない自分には価値がない、と感じている方にこそ、自分にしかない役割があることを知ってほしい」と後宮氏。牧師と信徒が互いの違いを知り、認め合うことが、教会内にある見えにくい分断や孤立を和らげる一歩になることを期待している。
現在はさらに、牧師と信徒の要素や、礼拝・祈祷会など各種集会のあり方から「教会の16タイプ」を見出す診断も開発中だ。
「うまくいくかはまだ分かりませんが、それぞれの教会が、自分たちらしい宣教の姿を見つける助けになればと願っています」
「牧師タイプ診断|SIXTEEN LIGHTS」
https://shindan.grapevine.co.jp/index.php
「信徒タイプ診断|SIXTEEN LIGHTS 信徒編」
https://shindan.grapevine.co.jp/shinto/
