2月24日にロシアのウクライナへの全面侵攻が3年を迎えるにあたり、各国の教派・教会が改めて停戦を呼び掛けた。
世界教会協議会(WCC)のジェリー・ピレイ総幹事は、戦争が終結の兆しがすぐには見えないまま続いていることを、悲しみをもって指摘。「民間人や多くの子ども、難民の命が莫大に失われたことで、この戦争の無益さを悲しむべき」とし、「学校、病院、給水施設など、重要な民間インフラが、標的を絞った攻撃によって、被害を受けたり破壊されたりしている」と述べた。
侵攻と、それに伴う戦争犯罪や人道に対する罪、そして破壊された命、地域社会、将来の希望の増大する犠牲は続いていると振り返った上で、「持続可能な公正な平和を確保するために、対話と交渉」を改めて求め、「WCCは、この地域で持続的な平和を真に求める正当な取り組みを歓迎する。ただ、これまで犯されてきた侵略行為や、第二次世界大戦後に強者の略奪から弱者を守るために確立された国際法の多くの原則に違反した行為を、単に報いるようなことはしない」と宣言。
このように法の支配を弱体化させることは、さらなる侵略を招くだけだと加え、「私たちは即時停戦、暴力と不正に対するキリスト教の一致団結、そして私たちの主であり救い主であるイエス・キリストが私たちに呼び掛ける平和を祈る」と表明した。
世界改革教会共同体(WCRC)とルーテル世界連盟(LWF)はそれぞれ2月17日と24日に、「ウクライナ侵攻3年についての嘆きと希望の祈り」を公式サイトに掲載した。WCRCによると、この祈りはオーストリアのロイエンベルク教会連合と、ウクライナのドイツ福音ルーテル教会が、侵攻3年にあたって執筆したものだという。
WCRCは17日、「この壊滅的な紛争は、数え切れないほどの命を奪い、何百万人もの人々を苦しめてきた。この厳粛な記念日を思い起こしながら、平和、正義、癒やしのために一緒に祈ってほしい」とFacebook上で呼び掛けた。
LWFは24日、この祈りについて「毎日新たな悲しみがもたらされるが、同時に揺るぎない希望ももたらしている。ウクライナの人々は勇気と、苦しみから目を背けようとしない国際社会の結束に支えられ、しっかりと立ち向かってきた。今日、私たちは声を合わせて集団で祈りをささげる」「平和は一方的に押し付けられるものではないことを心に留め、ウクライナの人々のために正義と平和につながる真の対話への道を開いてくださるよう神に祈る」と説明した。
ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会の最高指導者であるスビアトスラフ・シュフチェク総大司教は2月23日、カナダのトロントにあるネイサン・フィリップス広場で、ウクライナ侵攻3周年を記念する集会で、この戦いは独立のためだけでなく、「真実と正義のためでもある」と強調した。
この集会には、ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会常設シノドの司教ら、カナダのウクライナ人コミュニティの多数の代表者、そしてウクライナの自由のための闘争への支持を表明する国際パートナーが集まった。
総大司教は、ウクライナを支援し、国民のために祈るすべての人々に深い感謝の意を表した上で、「ウクライナを破壊しようとする侵略者をなだめることは不可能」「彼らはウクライナ国民の存在を否定し、ウクライナは単なる領土だと主張している」と非難。「今日、私たちはウクライナ国内と海外に住む6000万人のウクライナ人が、自由、独立、真実、そして未来を守るために団結していることを証明した。神は常に真実の側にいるので、私たちは神が私たちと共にいることを知っている。神が私たちに忍耐力を与えてくださると確信している」と締めくくった。
東方正教会のコンスタンディヌーポリ全地総主教バルトロメオ1世は2月23日、トルコのイスタンブールにある聖ニコラオス・ツィヴァリオス教会で行われた聖体礼儀後の演説で、ウクライナは和平プロセスに平等に含まれなければならないと指摘。聖体礼儀の最後には、祖国の独立と領土保全を守るために命を落としたウクライナ人のための追悼式が行われた。
ロシア正教会モスクワ総主教庁から分離した、独立系ウクライナ正教会の総主教であるキーウと全ウクライナのエピファニオス大主教は2月24日、首都の聖ミカエル黄金円蓋大聖堂で祈祷を執り行った。正教系英文ニュースメディア「オーソドックス・タイムズ」の報道によると、同大主教は祈祷に先立ち、「真実は勝つ!」と題して演説を行い、「ウクライナ国民は真の平和を達成し、真実が勝利し、悪とその創造者は非難され、罰せられると信じている」と強調。同大主教とともに、ヴィシュゴロドのアガピット大主教、リヴネとサルヌイのガブリエル主教、ヴァシルキフのエフライム主教とともに、多くの聖職者と祖国の擁護者が祈った。
祈祷会の最後に、エピファニオス大主教は、真実の勝利と公正な平和の確立のために、疲れを知らずに主に祈りを捧げるよう皆に呼びかけたという。
(エキュメニカル・ニュース・ジャパン)