6月9日はペンテコステ

 

今日6月9日はペンテコステです。キリストの死と復活(イースター)から50日目(ギリシア語で「ペンテコステ」)、聖霊が使徒たちに与えられ、そこからキリスト教会が始まりました。それを記念してキリスト教会では毎年、イースターから7週間後の日曜日、「教会の誕生日」としてペンテコステを祝います。

ペンテコステの典礼色である赤で飾られた聖餐卓(プロテスタント教会)

最初のペンテコステ(使徒たちに聖霊が降る出来事)が「五旬祭の日」(使徒2:1)に起こったとありますが、ユダヤ三大祭りの1つ「五旬祭」は、「過越祭」から50日目(「旬」は10日間)の祭り。小羊イエスが献げられたのが「過越祭」で、聖霊が与えられるのが「五旬祭」であることには、旧新約を貫く意味があります。

「五旬祭」は「七週の祭り」とも呼ばれますが、聖書で「7」という数字は象徴的な意味があります。天地創造の7日目が安息日であり(創世2:3、出エジプト20:10~11)、7年目が安息年(レビ25:4)。そして、「あなたは安息の年を七回、すなわち七年を七度数えなさい。七を七倍した年は四十九年である。……この五十年目の年を聖別し、全住民に解放の宣言をする。それが、ヨベルの年である」(同8~10節)。ペトロが「兄弟がわたしに対して罪を犯したなら、何回赦すべきでしょうか。七回までですか」と問うたのに対し、イエスが「七回どころか七の七十倍までも赦しなさい」と答えた箇所もあります(マタイ18:21~22)。このように、7にさらに7を掛けるその回復の徹底ぶりは、この「五旬祭」も同様です。

「五旬祭」は、出エジプトから50日目に十戒が授けられたことを祝う祭りでもありました。「エジプトの国を出て三月目のその日に、シナイの荒れ野に到着した」(出エジプト19:1)。「三月目」は「第三の月の新月」で、エジプトを出てから「7週目」、つまり「50日目」となります。旧約においては「出エジプト」という救いの実現が「十戒」ですが、新約ではそれが「ペンテコステ」、「聖霊降臨」なのです。

「突然、激しい風が吹いて来るような音が天から聞こえ、彼らが座っていた家中に響いた。そして、炎のような舌が分かれ分かれに現れ、一人一人の上にとどまった。すると、一同は聖霊に満たされ、〝霊〟が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話しだした」(使徒2:2~4)

それはイエスが約束したことでした。「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そして、エルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリアの全土で、また、地の果てに至るまで、わたしの証人となる」(同1:8)。それを象徴するように「ほかの国々の言葉で話しだした」のです。また、そこにいた全員、「一人一人の上に」聖霊が与えられました。

エル・グレコ「聖霊降臨」(プラド美術館蔵)では、鳩が聖霊の象徴として描かれています。それは、イエスが洗礼者ヨハネから洗礼を受けた時、「聖霊が鳩のように目に見える姿でイエスの上に降って来た」ことによります(ルカ3:22)。青いヴェール(アトリビュート、その人物を特定する属性)を羽織ったイエスの母マリアを中心に、右隣にマグダラのマリア、そのまわりを使徒たちが取り囲んでいます。

雑賀 信行

雑賀 信行

カトリック八王子教会(東京都八王子市)会員。日本同盟基督教団・西大寺キリスト教会(岡山市)で受洗。1965年、兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。90年代、いのちのことば社で「いのちのことば」「百万人の福音」の編集責任者を務め、新教出版社を経て、雜賀編集工房として独立。

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