映画「僕はイエス様が嫌い」の上映試写会が22日、クラフター試写室(東京都港区)でキリスト教会や伝道団体を招いて行われた。数々の国際映画祭で受賞した23歳の奥山大史(おくやま・ひろし)監督も参加した。
あらすじは次のとおり。少年ユラは祖母と一緒に暮らすため、東京から雪深い地方のミッション系小学校へ転校してきた。新しい同級生と行う礼拝なるものに戸惑いを感じつつも、次第にその習慣や友だちにも慣れていった。ある日、お祈りをするユラの目の前に、とても小さなイエス様が現れる。そのイエス様にお願いしたことは、たとえば親友ができるなど、必ず叶(かな)えられ、ユラはイエス様の持つ力をだんだん信じるようになるが、そんなユラに大きな試練が降りかかる……。
カンヌやベルリン、ベネチアに次いで権威ある国際映画祭、スペインのサンセバスチャン国際映画祭で昨年9月、日本人としては20年ぶり、二人目となる最優秀新人監督賞をこの作品で奥山さんは受賞した。同映画祭で史上最年少受賞者だ。カトリックの国スペインで「僕はイエス様が嫌い」という映画がどう受け止められるか注目が集まったが、予想を超えた感動を与えたことが評価された。
11月にはスウェーデンのストックホルム国際映画祭で最優秀撮影賞、12月にあった中国のマカオ国際映画祭では審査員特別賞も受賞。フランス、スペイン、韓国ですでに劇場公開が決まっている。
同作は、奥山さん自身の子どもの頃の体験がベースとなっている。題名から、ややもすれば反キリスト的な映画かと思われがちだが、そこには遠藤周作の「沈黙」にも似た逆説的なメッセージが隠されていると評価されている。奥山さんは7月に洗礼を受ける予定だ。
脚本、撮影、編集も手がけた奥山さんは、1996年、東京生まれ。キリスト教主義の青山学院大学4年だった昨年、卒業制作として撮影した長編デビュー作だ。奥山さんは幼稚園から大学まで青山学院で過ごし、同作を「青山学院での生活の集大成」と語る。大学を卒業して、今は大手広告会社に務めながら、映画監督として活動の幅を広げている。
子どもたちの自然な演技を導き出した演出、的確に対象を捉えるカメラワーク、宗教や死生観が関わる重みのあるテーマをユーモア込めて詩的に描いた本作は、上映後も大きな余韻を残し、一人ひとりにさまざまな思いを抱かせた。
試写上映後、参加者からの質問に奥山さんが答えた。
──英題を「JESUS」としたのはどうしてですか。
邦題の「僕はイエス様を嫌い」は、あくまで子どもが主体となって言っている言葉で、そこには「嫌い」と思えるほどイエス様の存在を認めているという意味があります。それを単に「I hate Jesus」としてしまうと、そのニュアンスが消えてしまうと思いました。また、特にヨーロッパなどの海外では、タイトルをつける場合、一つの単語で、そこからストーリーを連想させるという題名のつけ方をします。このことから、あえて英題では、ストーリーを説明するような題名のつけ方はせず、ただ「JESUS」としました。
──使われている音楽がすべて賛美歌でしたが、1曲1曲にどのような思いが込められているのでしょうか。
友情とは別にキリスト教がテーマに含まれているので、音楽には賛美歌だけを使おうと、企画の段階で決めていました。シーンによって編曲したものを使っていたりしますが、それもあまりアレンジしていないものを選び、どれも賛美歌と分かるシンプルなものになっていると思います。初等部の思い出ということにしたかったので、当時、自分が好きだった賛美歌をリストアップし、その中でシーンごとに合うものを選んでいきました。(後編に続く)