日本聖書協会(東京都中央区、具志堅聖総主事)主催による「聖書 聖書協会共同訳 点訳聖書」奉献式が6日、日本基督教団銀座教会(東京都中央区)で開催された。これは、同協会がすすめていた「聖書 聖書協会共同訳」の点訳事業が完結したことを記念し行われたもので、関係者など54人が参列した。
式典は礼拝形式で行われ、司式を同協会総主事の具志堅聖氏が務めた。会衆賛美、同協会副理事長の菊地功氏(カトリック東京大司教区大司教)の開会祈祷に続き、具志堅氏が「聖書 聖書協会共同訳 点訳聖書」についての事業報告を行った。
それによると点訳聖書は、墨字版の「聖書 聖書協会共同訳」が出される1年前に、同協会出版部と点字図書の製作・販売を行っている東京点字出版所(東京都三鷹市)によって出版の準備が始まった。2018年12月に墨字版が発行されると同時に、点訳作業が開始され、校正、亜鉛版製作、印刷、製本の過程を経て、創世記と出エジプト記が納品されたのが2019年5月。8月には新約聖書のマタイによる福音書が完成した。その後毎月数冊ずつ出版し、20年5月には全40冊が出版された。さらに22年10月には、読者の要望に応えるかたちで、用語解説の点字版を出版し、この日の奉献式に至っている。
式典では、点字聖書の製作全般を請け負った東京点字出版所の理事長・肥後正幸氏があいさつに立った。1926年創業の東京点字出版所は、同協会がこれまでに刊行した「口語訳」「新共同訳」の点訳聖書も製作している。聖書の点訳作業は、他の図書と違いすべて手作業で行われるため非常に時間と手間がかかる作業だ。このような作業ができるのは東京点字出版所だけだと肥後氏は自負し、「今後も視覚障がいの方の読書環境のためによりよい点字を提供していきたい。点字聖書が視覚障がいの方の助けになればと願っています」と力を込めた。
続いて、日本盲人キリスト教伝道協議会(=盲伝)議長の田中文宏氏が祝辞を述べた。盲伝の関係者代表としての祝辞と前置きした上で田中氏は、障がいの有無に関わらずキリストの福音を述べ伝えることは、主イエスのご命令に従うことであり、神さまの栄光を表すものだと話し、点字聖書の出版に関わったすべての人に感謝を伝えた。また、小西信八(1854〜1938)が考案した国際性のある6点字には、光となって人生の闇を導くという意味があることを伝え、「あなたの言葉は私の足の灯/私の道の光。」(詩篇119編105節)を引用し、「点字が視覚障がい者の人生の闇を照らす光となることを、この聖書をとおして期待し祈ります」と語った。
次に、式典のハイライトともいえる点字聖書による朗読が行われた。日本基督教団神泉教会会員の西山春子氏が、奉献された点字聖書からルカによる福音書4章16〜21節を朗読した。その朗読箇所をとおして、同協会理事長の石田学氏が「福音が全ての人にとどくために」と題してメッセージを行った。
この箇所の中では、貧しい人、抑圧されている人、目が見えない人など神の言葉を届ける必要がないと思われていた人たちに福音が述べ伝えられるようになったことを宣言し、そのことがこの先もずっと続いていくということが約束されている。しかし、今もなお神の言葉から阻害されているという現実があることを指摘した。「主イエスが語る人々は象徴であり、今日のわたしたちは、主イエスの弟子として福音をすべての人に届けるためにできるだけのことをしていかなければならない」と話し、こう締めくくった。
「日本聖書協会が点字聖書を刊行し、その普及に力を注ぐことは、すべての人に福音が届くための象徴・証です。点字聖書はわたしたちのそのような思いの確信と、主イエスに従う者であることの具体的な表れで、その印が目の前にあるこの点訳聖書なのです」
日本聖書協会では一人でも多くの人に点字聖書を届けるため1千万円を目指し、2019年度から募金活動「SIチャレンジ」を展開している。今年5月までに寄せられた合計額は9,213,605円。募金は現在も受付中。詳細はこちらから。