ユネスコ世界遺産登録や博物館開設などの取り組みを通して、教会が過去の悲劇的な恥の歴史を記憶し、そこから学び、日本におけるキリスト教の悲しい歴史を記憶することは、今の時代の潮流に沿った動きだ。
「クリスチャニティー・トゥデイ」で2017年に組んだ特集に、アメリカの負の遺産であるアフリカ系アメリカ人へのリンチ(私刑)と、それを記念した「平和と正義のための国家記念碑」を扱ったものがある。神学者の故ジェームス・H・コーンは、リンチで首を吊る縄をかけた樹を、「キリストの十字架を映す生きた現実であり象徴」と呼ぶ。
奴隷の所有者だった支配者層や、現代の倫理では肯定することのできない考えの持ち主と結びついてきた過去の歴史に、米国の歴史ある教会も向き合いつつある。「クリスチャニティー・トゥデイ」の昨年の記事によれば、こうだ。
「記念碑を『世に誇る遺産』と見る者もいれば、『過去の罪の告白』と見る者もいる。最近、マルティン・ルターの反ユダヤ主義に関係する像を教会から撤去しないよう求めたドイツのラビたちは、後者の立場だ」
「建国初期の米国の海外宣教を記念した記念碑についても、現代の価値観から問い直す作業が進んでいる。昨年、ウィリアムズ大学(マサチューセッツ州ウィリアムズタウン)は、構内の『ヘイスタック記念碑*』を歴史的文脈の中で再検証する作業を始めた。同碑は、学生の世界宣教への召しをたたえるものとして建てられたが、こうした宣教の働きが『文化帝国主義』と見なされることを、同大学の一部の学部は懸念している」
*1806年、同大学の学生が野原に集まり、アジアを中心とする海外宣教への決意を固めたヘイスタック祈祷会を記念した碑。同祈祷会はその後、長年にわたる米国プロテスタントの海外宣教に影響を与え、その働きは現代に至るまで続いている。
キリシタン迫害の歴史をとどめる日本の遺跡群は、自らの信じることのために苦しんだ人々の信仰、強さ、そして決意を究極的に表すものだ。
「ジャパン・ニューズ」(読売新聞社の英字新聞)によれば、日本史の専門家である服部英雄氏(九州大学名誉教授。長崎世界遺産学術委員会の委員長として推薦書を作成した)は次のように語る。「キリスト教弾圧があったにもかかわらず、宗教に寛容な日本の風土が、長期にわたって潜伏しながら宗教を実践することを可能にしました。政治権力が人の心を完全に支配することはできません。これが、キリシタン関係の遺跡群から学ぶことのできる教訓です」
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ケイト・シェルナット
本記事は「クリスチャニティー・トゥデイ」(米国)より翻訳、転載しました。
出典URL:
https://www.christianitytoday.com/news/2018/may/japan-unesco-hidden-christian-persecution-world-heritage.html