沖縄「慰霊の日」にあたり声明 カトリック正平協が「軍拡」危惧

沖縄戦の終結から79年となる「慰霊の日」を6月23日に迎え、日本カトリック正義と平和協議会(ウェイン・バーント会長、エドガル・ガクタン担当司教)は翌24日に声明を発表した。

「沖縄慰霊の日にあたり」と題する声明で、同協議会は1年前に魂魄の塔(沖縄県糸満市)の前で「戦争の引き金となるあらゆる軍拡競争、核兵器の開発と保有に反対し、日本政府に向け、南西諸島を危険に陥れる長射程ミサイル配備を、直ちに中止すること」を求めたことを振り返り、1年が経過して軍拡がさらに進み、戦争がますます現実的な危機となっていると指摘。「長射程ミサイル配備は中国との緊張状態を一層高めるだけであり、破綻すれば沖縄、南西諸島は戦場とな」り、「その時、真っ先に犠牲になるのは、島々の住民、そしてそこに配備された自衛隊員とその家族に他なりません」と強調。あらためて日本政府に憲法前文、および第9条の厳格な遵守を求めた。

声明の全文は以下の通り。


声明文「沖縄慰霊の日にあたり」

 一年前の今日、6月23日、私たち日本カトリック正義と平和協議会は、魂魄の塔(沖縄県糸満市)の前で「戦争の引き金となるあらゆる軍拡競争、核兵器の開発と保有に反対し、日本政府に向け、南西諸島を危険に陥れる長射程ミサイル配備を、直ちに中止すること」を求め、その実現を祈りました。

 あれから1年が経ちました。「新しい戦前」という言葉が示すように、日本では軍拡がさらに進み、戦争はますます現実的な危機となっています。国内防衛費は2024年、歳出予算で8兆円近くにのぼり、3月には殺傷兵器である次期戦闘機の輸出も解禁されました。1月9日、戦前の国家神道と密接なかかわりをもつ「靖国神社」に自衛隊員が集団で参拝し、自衛隊員が戦争で国家の犠牲になることを美化する道が新たに敷かれ始めたのではないかと懸念されます。 沖縄、南西諸島では対中国防衛の最前線として、過去最大規模といわれる米国参加の軍事演習が繰り返されており、2025年には中国本土に届く長射程ミサイルが配備されることが予測されています。長射程ミサイル配備は中国との緊張状態を一層高めるだけであり、破綻すれば沖縄、南西諸島は戦場となってしまいます。その時、真っ先に犠牲になるのは、島々の住民、そしてそこに配備された自衛隊員とその家族に他なりません。

 しかしながら、現代世界はすでに最悪と言ってよい事態に陥っていることが、イスラエルによるパレスチナ無差別虐殺から明らかです。パレスチナでの昨年10月以降の死者数は4万人とも推定され、その多くが乳幼児を含む子どもであるとも報告されています。日本政府は先の国連総会でパレスチナの国連正式加盟を支持したものの、イスラエルに対して、パレスチナ攻撃に使用されかねない武器を含むさまざまな取引を今なお継続しており、パレスチナ攻撃を一刻も早く止めるために力を尽くしているとは、到底言えません。

 私たち日本カトリック正義と平和協議会は、沖縄慰霊の日にあたり、先の大戦における沖縄地上戦の犠牲者の方々に深く哀悼を捧げ、世界のどこにおいても、再びこのようなことが繰り返されないために、日本政府には、あらためて日本国憲法前文、および第9条の厳格な遵守を求めます。 日本政府は「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」した国の政府として、「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去」するために、率先して働かなければなりません。国際紛争の解決の手段としての戦争を放棄し、軍事力の保持を認めない憲法9条においては、ミサイル配備も、軍事演習も、「新しい戦前」も、武器取引も、断じて許されるものではないのです。

2024年6月23日

日本カトリック正義と平和協議会

会長 ウェイン・バーント

担当司教 エドガル・ガクタン

協議会一同

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