国際基督教大学(ICU、岩切正一郎学長)は5月24日、キリスト教強調週間にあたる「C-Week」のイベントとして「伝道者証し集『われら主の僕』を巡って」と題するパネル討論会を同大学(東京都三鷹市)で開催した。新教出版社から今春発行された『われら主の僕』を巡り、卒業生の伝道献身者たちと現役学生が語り合うというもの。登壇者は伊藤節子(元明治学院中学・東村山高校校長)、小林宏和(日本キリスト教会世田谷千歳教会牧師)、小宮一航(ICU学生)、三宅栄実(ICU大学院生)、焼山満里子(ICU準教授、ICU教会協力牧師)の各氏で、司会は梅津裕美氏(ICU伝道献身者の会事務局)が務めた。冒頭、同書の出版に代表として関わった有馬平吉氏(ICU伝道献身者の会支部長)から本が生まれた経緯の報告とともに、「現役学生を含め、広く若者に呼んでほしい書である」との思いが語られた。
同大学を卒業し、現在は学校教育の現場で働く伊藤氏は、教育関係者である川田殖氏、安積力也氏、有馬平吉氏、鵜崎創氏の寄稿に触れながら「本の中に11名の教育関係者がいるが、その方々の言葉に深い感銘を受けた。ICUでのリベラルアーツの教育、ICUの先生方との人格的な交わり、私自身の教員生活もこれらICUでの貴重な経験に支えられてきたと確信している」と述べた。
同じく卒業生の小林氏は、「入学時にキリスト者でなかった者が、このICUで変えられたという観点(同書内で12名)から読んだ。クリティカル・シンキング(批判的思考)がICUのUの基礎であり、それは実はCの基礎にもある。疑いつつなお残るものがある、そして最終的に自分が人生と世界の主ではなくイエスがキリストであることを受け入れるようにされたと思う。Cを避けていた自分が、現在牧師となっている」と振り返った。
小宮氏はかつてのICUと現在のICUを比較しながら、「今の学生も主体性を手放すことなく、これからの大学のあり方を創っていく主体となって、時には自らの実存に触れるような形で新しい活気を生み出していければと思う。ICUにおけるCの意義を皆が見つめ直すような空気感がもっと強まれば、これ以上に嬉しいことはない」と期待を語った。
「ICU創立当時から多くの方々の『平和への祈り』が捧げられてきた」と三宅氏。「平和の働きと使命が受け継がれてきたことによって、私は今ここに立っていると感じる。『平和を創り出す人』として、いま世界各地で活躍中の先輩方の後を追い、私もキリスト者として、またICU出身者としてその働きに加わりたい」と抱負を述べると、焼山氏は「多くのチャレンジを受け、より自由に人間として成長できるのはICUの森であり、先生方や仲間との真剣な交流が可能な環境だと思う。その根幹にあるのがCコード(キリスト者であることを教員資格の条件とする制度)だと思う。教員と学生が真剣に対話できる環境は、どの科目を教えておられる先生もキリスト者であるということで守られてきたし、これからもそうではないかと思う」と話した。
その後、フロアからは学生たちの応答もあり、また会場に参加していた初期の卒業生(日本基督教団隠退教師である棟居勇氏と伊藤瑞男氏)からの発言もあった。昨年のC-Weekでも教派間を巡るパネル討論会がICU伝道献身者の会と現役学生との共同企画として行われたが、今後も母校愛から、この「対話的かかわり」を継続することを望んでいる。
(報告・有馬平吉=ICU同窓会「ICU伝道献身者の会」支部長)