「香港教会調査」で報告会 礼拝出席者は5年前から約7万人減 

香港における近年の社会的・政治的変動は、キリスト教会の教勢にも大きな影響を与えている。香港のプロテスタント教会に関する調査を5年ごとに継続的に実施している団体「香港教会更新運動」は3月27日、「2024年香港教会調査」の報告会を開催した。報告によれば、5年前と比較して礼拝出席者は約7万人減少し、特に青年層の著しい減少が見られるなど、厳しい状況が数字に如実に表れている。

同団体の総幹事である梁国全(りょう・こくぜん)氏は、調査結果の分析概要を踏まえた上で、困難な現実を直視しつつ、香港の教会が新たな再出発を図るべきであると訴えている。

以下、同団体の公式サイトに掲載された分析要約を、梁国全氏の同意を得て日本語に翻訳した。香港の教会を祈りに覚えるとともに、文脈は異なるものの、教勢の低迷に悩む日本の教会にとっても、多くの示唆を与える内容となっている。

(報告・翻訳=松谷曄介)


「2024年香港教会調査」の概要―― 低きより立ち上がり、再出発を

香港教会更新運動・総幹事 梁国全

「このキリストのお陰で、今の恵みに信仰によって導き入れられ、神の栄光にあずかる希望を誇りにしています。」(ローマの信徒への手紙5章2節)

はじめに

香港において初めて本格的な教会全体の調査が実施されたのは1989年であり、当時は「香港福音2000」がその主催団体であった。その後、1993年に同団体は「香港教会更新運動」と合併し、それ以降は「香港教会更新運動」が5年ごとに調査を実施してきた。今回の「2024年香港教会調査」(以下「本調査」)は第8回目にあたり、2025年3月27日に発表された。

本調査において特筆すべき点は、過去5年間に香港社会および教会が急激な変動に直面したことである。多くの信徒が困難を経験し、将来への不確実性が増すなかで、本調査はその実態を明らかにし、教会が今後の方向性を定めるうえでの一助となることが期待されている。

もっとも、教会が変動期にあることから、データの収集には困難が伴い、対象となる1,318教会(プロテスタント教会)のうち、回答が得られたのは約6割にとどまった。それでもなお、研究チームおよび関係者の尽力により、データは可能な限り高い精度で推定され、過去5年間の変化を把握するのみならず、これまでの調査との比較を通じて、時代ごとの教会の盛衰を検討することが可能となった。

本稿では、紙幅の関係上、すべての分析を紹介することはできないが、今後もさまざまな情報発信が予定されている。今回は主に7つの観点から、2019年と2024年の調査結果を比較し、初歩的な観察結果を提示するにとどめたい。なお、教会の経済状況、伝道戦略、海外宣教などの詳細については、『2024年香港教会調査簡報』および関連報告を参照されたい。

また、調査結果をいかに実践へとつなげ、具体的な行動計画に結びつけていくかは、各教派・各教会がそれぞれの状況に応じて判断し、計画を立てるべきである。我々は今後も関係者と連携し、知恵を出し合いながら、香港教会の未来に変革をもたらしていく必要がある。

一.人数の減少と教会離れ

礼拝出席者数の変化は、牧会、伝道戦略、資源配分を考えるうえで極めて重要な指標である。今回の調査では、平日・土曜・主日礼拝を含む「対面礼拝」と「オンライン礼拝(同時配信を含む)」の区別を設けた。対面礼拝の出席者数は19万7,935人、オンライン礼拝は2万6,326人(955回の視聴)であった。ただし、オンライン礼拝の集計には一定の誤差が含まれていると考えられる。

2019年調査時の26万8,822人と比較すると、2024年の礼拝出席者数は7万887人(26.4%)の減少である。この減少には、移民の増加、オンライン礼拝への移行、信徒の死去や流出など、複数の要因が関係している。洗礼者数は過去5年間で4万6,487人にとどまり、2014年の8万1,004人、2019年の6万2,400人から継続的に減少している。洗礼を受けた信徒の流出率は、2014年が27.2%、2019年が34.1%、そして2024年が27.4%と、いずれの時点でも高い水準にあり、信徒の定着率の低さが大きな課題となっている。

とりわけ青少年層の減少は顕著であり、出席者数は4万7,326人から3万3,634人へと28%減少し、全体に占める割合も13.2%にまで低下した。また、信仰を持つ家庭に育った「クリスチャン二世」のみで構成される教会と、そうでない教会との間で二極化が進んでいる。

2014年の礼拝出席者数30万5,147人(1,318教会)と比較すると、2024年の19万7,935人(1,287教会)への減少は、10万人近くにも及び、非常に深刻な状況である。

 小結:2009年以降、香港教会は教勢低下の道をたどっており、度重なる社会的衝撃の中で、教会共同体の内部分裂、霊性の低下、次世代への信仰継承の失敗、信徒の流出や教会離れが顕著になっている。今こそ教会の本質と使命を見直し、健全な教会共同体の再構築を図るべきである。

二.移民の急増とその衝撃

2021年に香港教会更新運動が実施した追跡調査によると、「すでに移民した信徒」は3万646人、「これから移民を予定している信徒」は3万377人とされ、合計6万1,023人と推定されていた。当時は移民への関心が非常に高く、教会側の見積もりがやや過大であった可能性も否定できないが、その後数年を経て、移民の流れはやや沈静化してきている。

2024年調査では、「すでに移民した信徒」は4万5,999人、「これから移民を予定している信徒」は6,219人と、後者の数が前回調査に比べて大幅に減少している。すなわち、2021年から2024年にかけて、移民の累計数は増加しているものの、そのスピードには落ち着きが見られる。

小結:移民の波が徐々に沈静化しつつある今、教会は現状の危機に真正面から向き合い、互いに耳を傾け、傷ついた心を癒やし、信頼と関係性を再構築していく必要がある。

三.世代継承の課題と女性牧師の増加

伝道者・牧会者など教会スタッフの人数は、有給職が4,252人から3,492人へと760人減少した一方で、無給の伝道者・牧会者は261人から711人へと急増した。しかし、全体としては4,513人から4,203人へと310人の減少となっている。有給者の離職理由を見ると、移民以外の理由による離職は1,851人から1,435人へと減少した一方、移民による離職は525人、退職は317人から621人へと増加している。多くの空席は、退職した牧師が再び有給あるいは無給で奉仕することで補われていると見られる。

華人教会では長年にわたり、リーダーシップの継承が時代の変化に追いついていない。主任牧師が不在の教会は148教会から240教会に増加し、主任牧師の年齢構成を見ると、41〜60歳の割合は69.5%から56%に減少し、61歳以上は16.7%から22.5%へと上昇している。有給の主任牧師の71.3%は、近いうちに退職する予定はないと回答している。その結果として、引退すべき時期を迎えながらも退けない主任牧師と、急ぎ按手を受けた経験の浅い主任牧師とが混在する状況が生じており、双方に対して支援と適応が求められている。

その一方で、女性主任牧師の割合は明らかに増加している。女性牧師が牧師全体に占める割合は21.0%から24.5%へ、女性伝道師においては39.1%から46.0%へと上昇している。また、女性伝道者・牧会者のうち、按手を受けた牧師である者の割合も30.1%から37.4%へと増加しており、これは喜ばしい発展である。

神学校における全日制学生数も顕著に減少している。香港の神学校に在籍する全日制学生は929人から716人へ、教会が運営する信徒訓練学校では54人から12人へと減少した一方で、海外留学者は59人から102人に増加した。全体として、全日制神学生は1,042人から830人へと約20.3%の減少、2014年の1,211人と比較すると、31.5%の大幅な減少となっている。

また、教会の中心的リーダーおよび奉仕者の人数も大きく減少しており、特に35歳以下および35〜44歳層でその傾向が著しい。中心的リーダーは2万1,828人から1万612人へ、奉仕者は10万3,468人から8万602人へと減少した。とはいえ、教会は長老や執事のリーダーシップ育成を依然として重視しており、それを実施している教会は23.9%から30.5%へと増加し、今後3年以内に実施を予定している教会も24.3%に上る。

言うまでもなく、地元の神学生が全日制神学課程に進学する状況は、神学校の発展に大きな影響を与えている。しかし、それだけでは伝道者・牧会者の不足を補うには不十分である。近年では、複数の職務を兼任する、いわゆる「スラッシュ牧会」(二つの肩書の間にスラッシュを入れることに由来する俗語)の形で奉仕する伝道者が増えているが、これが明確な傾向となっているわけではない。

小結:香港教会は、加速する高齢化と人材流出という構造的困難に直面している。使命を担う共同体として、若手人材の育成とリーダーシップの刷新が急務である。

四.規模の縮小と生き残りをかけた苦闘

礼拝出席者数の減少に伴い、教会の規模も全体的に縮小傾向にある。信徒数の増加が見られたのは100教会以下にとどまり、大多数の教会では減少傾向が続いている。2019年と2024年を比較すると、信徒数50人以下の教会は191から308へ、51〜100人の教会は384から434へと増加した。一方で、101〜200人、201〜500人規模の教会は減少しており、これは大規模教会における信徒数の減少によって規模が縮小した結果であると考えられる。特に、移民の影響を強く受けた大型・超大型教会では、信徒数の大幅な減少が顕著に表れている。

今回の調査では初めて、教会の「土地・建物の縮小」に関する質問が設けられた。「過去5年で礼拝スペースの縮小を行ったか」という問いに対し、106教会が該当し、その内訳は、24教会がより小さな場所への移転、61教会が借用スペースの解消、その他は物件の売却や教会の統合であった。また、今後3年以内に縮小を予定している教会は78教会に上る。重複を考慮せず単純に合算すれば、184教会が過去または将来において礼拝スペースの縮小を経験・予定しており、これは全体の約14%に相当する。

小結:教会規模の縮小は紛れもない現実であり、小規模教会の統合、未独立教会の母教会への回帰、大規模教会におけるスペース削減や人員調整など、さまざまな対応が求められている。今こそ、リソースの再配置と戦略的再編が急務である。

五.多様なスペース拡張と柔軟な変革

教会の開拓数は過去最低を記録した。今回はわずか18教会にとどまり、2009年の71教会、2014年の43教会、2019年の35教会から漸減傾向が続いている。今後5年間に教会開拓を「予定なし」とする教会は、436から620へと増加し、「未計画」と回答した教会も758から622へと減少したものの、「計画中」および「計画あり」を含めてもわずか77教会にとどまっており、教会開拓への意欲は著しく低下している。

確かに、過去20年間においては、社会および教会の発展にともなって教会開拓が急速に進展した時期もあった。しかし時代の変化とともに、学校運営や社会福祉を通じた従来型の教会開拓は、もはや主流ではなくなっている。

その一方で、近年では教会のスペース拡張など新たな形態による教会開拓・コミュニティ形成が広く見られるようになってきた。たとえば、2019年に会堂スペースの拡張経験があった教会は148教会(11.3%)であったのに対し、今回は232教会(17.6%)へと増加し、56.7%の増加率を示している。その多くは、新たな会場の借用によるものである。この傾向は、多くの教会がより柔軟な手法を取り入れ、発展を模索し始めていることを示している。

小結:従来型の教会開拓から、より柔軟かつ創造的な教会形成への移行が進んでいる。このような動きは、教会の本質を再考し、変革を推進する力となり得るものであり、十分に評価に値する。

六.教会間ネットワークと協働事業

今回の調査では、困難な状況にもかかわらず、牧師たちによる地域・教派を越えたネットワークへの参加や交わりが安定を保っていることが確認され、これは喜ばしい結果である。教会間の協働も、2019年の825教会から今回の976教会へと増加しており、主な連携分野は、伝道(44.5%)、祈り(27.5%)、青少年活動(23.7%)であった。

また、新たに設けられた質問項目では、教会と社会福祉機関との連携に関する12の選択肢が提示され、その中で上位を占めたのは、高齢者支援(47.1%)、貧困支援(44.7%)、地域貢献(42.0%)であった。さらに、地域教会やキリスト教関係機関との協力の具体的な方法としては、会場の共有(77.2%)、人的資源の共有、必要な信徒への紹介などが挙げられている。

小結:1970〜80年代に形成された地域教会ネットワークや牧師会は、今日の低迷する教会状況のなかにあっても、相互の協力・連携・支え合いを継続的に必要としており、その重要性は今なお失われていない。

七.牧会の堅持と貧困層への配慮

社会の急激な変化に伴い、教会が関心を寄せる社会的課題も変化してきている。前回の調査では、「宗教の自由」「社会正義」「ジェンダー」「貧困」「家庭問題」が上位5項目であったが、今回は「家庭問題」「貧困」「メンタルヘルス」「移民」「国際問題」が上位を占めた。特に「学生の自殺」に関する関心は、15.8%から25.4%に増加した。

これらの変化は、教会の牧会の現場における実情にも反映されている。信徒が抱える悩みの中で、情緒的・精神的困難が増加しており、伝道の方法も、従来の活動重視型から、説教や奨励といった聖書的メッセージの伝達や、牧会的奉仕の重視へとシフトしている。地域貢献の分野では、貧困層や香港への新移民への支援、訪問活動の増加が目立っている。

また、教会の財政における「貧困層支援費」の割合も増加しており、これはコロナ・パンデミックや近年の経済的困難が地域の家庭に与えている影響を示唆している。一方、この分野に「支出ゼロ」と回答した教会の割合は、28.3%から30.2%へとわずかに増加しており、経済的または意識的な理由から、地域奉仕に十分に取り組めていない教会も依然として存在している。

小結:伝道者・牧会者および信徒数の大幅な変動により、教会の経済力や動員力には限界がある。それでもなお、パンデミック前後の困難な状況下において、多くの教会が隣人に心を寄せ、訪問や物資支援といった具体的な行動に踏み出してきたことは、十分に評価されるべきである。

結語

以上の七つの観点から、この5年間における香港教会の変化の一端を概観することができた。本調査は内容が極めて豊富であり、今後、さらなる分析と洞察が深められていくことが期待される。

最後に、『教会生態学──Let the Church be the Church: an Ecclesiology』(台湾の神学者・林鴻信による著作、校園書房出版社、2012年)所収の一章「厳冬の枯木が春に芽吹く──改革されつつある教会」より、カルヴァンの一節を引用して本稿の結びとしたい。

 「厳冬の中、木々は枯れ、硬直し、死んだかのように見える。しかし春が来れば、徐々に殻が取れ、柔らかさを取り戻し、新たな枝が芽吹く道が開かれる。教会も同じである。表面的には衰退し弱く見えるが、その力は決して失われていない。神の御手の中で、弱さの中にも命が宿り、再び新しくされる。主は、表面的な腐敗の中から、御民の回復を導き出される。要するに、教会が死にかけているように見えても、それが最終判断ではない。神は十字架の苦しみを通して、不滅の栄光を備えられるのである。」(278–279頁)

主の導きのもと、香港教会がこの困難な時代にあってもなおキリストを見上げ、力を得て走り続け、低きから再び立ち上がることを心より願ってやまない。

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