日本基督教団橋本教会 教会員らがパイプオルガンを修復、 新たに12本の低音木製パイプなども製作 

日本基督教団橋本教会(相模原市緑区、須田拓牧師)に設置されているパイプオルガンが、教会員有志によって修復され、これまでにない荘厳な音色を兼ね備えたオルガンに生まれ変わった。そのお披露目も兼ねた演奏会が6月9日(日)に開催される。

橋本教会のパイプオルガン。奥にある木製のパイプが今回新たに製作された12本の低音パイプ。

同教会のパイプオルガンは、2013年の新会堂献堂に合わせて奉献された。「Orgelbau Friedrich Weigle, Opus 821, 1942/58」の銘があるオルガンは、80年以上前にドイツ・シュトゥットガルトで製作されたもので、当初は本国ドイツにおいてハウス・オルガンとして使われていたものであったらしい。そのため讃美歌を支えるバス声部に適したストップ(音色)がない、頻繁な調律を必要とするパイプがメインのストップになっているなど、教会向きの仕様ではなかった。また奉献当初からすでに劣化している部品もあるなど問題を抱えていた。その一方で、自分たちの教会にパイプオルガンがあること、またその音色に合わせて賛美することは教会員たちの喜びだった。

しかし、それから10年近くが経過する中で、消耗部分の劣化はさらに進み、大規模な風漏(も)れも起こるようになった。備えられている13のストップの大半が鳴らなくなり、さらにいくら調律しても追いつかないほど使用困難な状態に陥(おちい)ってしまった。そこで、オルガン製作に携わってきた経験を持つ教会員の重田亮治さんが修復作業(オーバーホール)を申し出た。これまでも幾度かオーバーホールの必要性は議論されてきたが、予算の関係により実現することができなかった。パイプオルガンのオーバーホールは、高度で専門的な技術を要する作業で、そこに費やされる人件費は相当なものだ。そこを重田さんがボランティアで引き受けたことでオーバーホールが可能となった。

風漏れのため膨らまなくなってしまっていた“ふいご”も改良された。

2021年5月に「オルガン改修プロジェクト」を立ち上げ、教会全体でこの作業のために祈りを合わせた。重田さんより今のオルガンの状況と、どのような処置が望ましいのか、さらにパイプオルガンとはどういうものなのかということをレクチャーしてもらい、オーバーホールにかかる費用について教会員全員から了承を得て、オルガン献金を募った。部品や材料、工作機械にかかる予算額180万円が集まり、同年8月よりオーバーホールが開始された。

重田さんは、数年間パイプオルガンを製作する楽器工房で正社員として働いていたが、現在は電気自動車関係のエンジニアで、仕事の合間にオーバーホールに取り組んだ。会堂のすぐ隣にある教育館の奥にある部屋をメインの工房とし、寝泊まりしながら作業に打ち込むこともあった。また、パイプオルガンの修理には広範囲な技術が必要で、大工作業や部品の製作など得意な教会員たちと常に助け合いながらこの3年間作業を進めてきた。さらに専門的な技術が必要な作業については、地域の芸術家などの協力も得た。

教育館に設けた工房で部品製作を分業で行う教会員。

今回のオーバーホールでは劣化箇所の修復だけではなく、礼拝奏楽に適したストップとして12本の低音木製パイプと30本の金属製パイプを新しく製作したり、オルガニストの演奏表現を妨げてきた重いタッチへの対処も行なったりして、ハウス・オルガンから礼拝奏楽向きの仕様に変えた。木製パイプには地域に根ざした教会にふさわしい、地元・津久井の山林から採られた木材も一部使用された。改修項目は50以上に及んだが、一番苦労した点をたずねると、どれも大変な作業で1つに絞ることは難しいと述べた上で、このように語った。

「教会にとって会衆賛美はとても大切なもの。それを導くのがパイプオルガンの役目であり今回のプロジェクトでも、個々の作業においてどのような手段を用いるのが最もふさわしいのか、それを常に考えて改良を心がけました」

また、パイプオルガンにとっての心臓部はパイプに送る風をコントロールする風箱とよばれる部品で、風漏れなどの不具合が生じないよう気を配ったという。新たに製作したパイプも見せてもらったが、金属でありながらとてもあたたかい感触であったことが印象深い。このパイプオルガンへの重田さんの思いを実感した。

パイプを製作する重田さん。

奉献された当初から奏楽を担当してきたオルガニストの横山正子さんは、教会のパイプオルガンについてこう話す。

「一般のコンサートホールでもパイプオルガンは親しまれていますが、教会においてパイプオルガンが果たす役割は大きいものです。会衆賛美もオルガンのリードによって大きく育っていきます。ですので、たとえ小さな教会でも、教会に合ったパイプオルガンがあることが望ましいと思います。このパイプオルガンは、大きさといい、色合いといいまるで橋本教会に合わせて作られたように感じています。そして、オーバーホールによって低音による荘厳さが加わり、いっそう教会にあったオルガンとなりました」

須田拓牧師、重田亮治さん、横山正子さん、須田叔江さん

須田牧師は、最初にパイプオルガンを入れてもらったこと自体が同教会にとって大きな喜びであったと述べ、パイプオルガンによって賛美が成長してきたと力を込める。そして、パイプオルガンは、奉献された時からこれまでずっと教会員の力で守られてきていると振り返り、教会の働きを次のように明かした。

「オーバーホールについては重田さんのような方がいたことは大きいと思いますが、教会は場合によっては自分たちでどうにかしてしまうということがある。会堂脇にある教育館も、購入時は使い物にならない状態でした。築70年ということで床はぶかぶかで。それを教会員が床を張り直し、使える状態にしました。どこの教会もお金がないという共通の問題がありますが、そこを皆でどうにかしてしまおうという力が教会にはあります」

【パイプオルガンコンサート】
日時:2024年6月9日(日)
開演:後1時半〜
会場:日本基督教団橋本教会(相模原市緑区)
奏者:横山正子(桜美林大学名誉教授、橋本教会・めじろ台教会・ロゴス教会オルガニスト)
問合せ:℡042-771-4935(同会場)

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