共に生きる社会をつくる選挙に 外キ協など8団体が記者会見で声明を発表

移住者と連帯するネットワーク(移住連)、外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)など人権問題に取り組む8団体が呼びかけ団体となり、「参議院選挙にあたり排外主義の扇動に反対する緊急共同声明」を発出した。その記者会見が7月8日、衆議院第二議員会館(東京都千代田区)を会場に対面とオンライン(Zoom)のハイブリッドで行われた。会場に100人、オンラインでは約80人が参加した。

声明は7月20日に予定されている参院選を前に、一部の政党から「違法外国人ゼロ」「外国人優遇策の見直し」が掲げられ、日本社会に外国人、外国にルーツを持つ人たちを敵視する排外主義が急速に拡大していることへの危機感から発出された。外国籍の人たちには選挙権もなく、差別を受けてもその怒りを届ける回路は閉ざされていることから、外国籍の人たちが抱える厳しい状況を直接知っている自分たちが、その声を届けなければならないと考え、急遽(きょ)共同声明を出すことになったという。

記者会見に登壇した8団体=7月8日、参議院議員会館(東京都千代田区)で。

会見で強調したのは、「外国人が優遇されている」というのはまったく根拠のないデマであることだ。まず、外国人は税金も社会保険料も払っている。にもかかわらず、選挙権がなく、意見を表明する権利が制限されているのだ。それどころか、外国人には基本的な人権を保証する法律さえないないという。永住者であっても原則として国家公務員になることはできないし、地方公務員も雇用する地方公共団体は限られている。生活保護の制度は準用されているが、日本国籍者とは異なり不服申し立てをすることはできず、公的な権利としては認められていない。医療・国民年金・奨学金制度などで外国人が優遇されている事実はないと断言する。

さらに、「違法外国人」との用語は、「違法」と「外国人」を連結させ、外国人が「違法」との偏見を煽(あお)るもの。「不法滞在者」という用語も、1975年の国連総会決議で、「非正規」等と表現するように要請していることをあげ、「難民などさまざまな事情があって書類がない人たちをひとくくりで『違法』『不法』として、問答無用で排斥する政策は排外主義そのもの」と力を込めた。

また、「日本人ファースト」というスローガンは、外国人というだけでファーストではなく、蔑(ないがし)ろにしてもいいというメッセージを含み、排外主義につながると指摘する。そして、「物価が上がる一方で賃金は上がらず、生活が苦しいのは、これまでの政策が原因であり、外国人のせいではない。個人を攻撃し、排除しても私たちの生活がよくなるわけではないのに、外国人はそれらの原因のスケープゴートにされてしまったいる」と話し、有権者に向けてこう訴えた。

「外国人への偏見の煽動に乗せられることなく、国籍、民族にかかわらず、誰もが人間としての尊厳が尊重され、差別されず、平和に生きる共生社会をつくるよう共に声をあげ、また、1票を投じられるように訴えます」

続いて、8団体の代表者が発言した。その中で、一部の政党の外国人に対する政策の公約には確かなデータの裏付けが示されていないことや、外国人労働者の現状を理解していないことが語られた。また、国連で定められている人権条約が日本では守られていないにもかかわらず排外主義に陥る人が多いこと、ヘイトスピーチが止まらず、そのことで外国人たちがいかに傷ついているかなど、実際にそれぞれが関わる現場の状況を訴えた。

外キ協からは、佐藤信行氏が登壇した。福島移住女性支援ネットワークにも関わる佐藤氏は、福島に住む外国籍の子どもたちについて触れ、「日本の大人たちがこの子らに向かって、日本人ファーストだから、君たちは招かざるお客さんだよ。いくら勉強しても選挙権はないし、就けない職業もあるよ、と言うのでしょうか。外国籍の子どもたちは今41万人いて、自分のアイデンティティーと向き合いながら日本語を学び、上の学校への進学を目指しています。この子どもたち一人ひとりの夢を大人は奪ってはいけない」と声を震わせた。

共同声明には、この日までに265団体が賛同者として名を連ねている。声明文は日本政府・各政党宛に送付する予定だが、それまで引き続き賛同団体を受け付けている。締切は7月17日(木)。できる限り多くの団体が名を連ねることが社会に訴える力となることから、賛同を広く呼び掛けている。声明の全文と賛同申込みはこちらから

【呼びかけ団体】
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
「外国人・民族的マイノリティ人権基本法」 と 「人種差別撤廃法」の制定を求める連絡会(外国人人権法連絡会)
外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)
人種差別撤廃 NGO ネットワーク(ERD ネット)
全国難民弁護団連絡会議(全難連)
一般社団法人 つくろい東京ファンド
一般社団法人 反貧困ネットワーク
フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)

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