11月3日の米大統領選を前に、22日、候補者選びの第3戦となるネバダ州の予備選が行われた。共和党は今回の選挙を行わないことを昨年9月に議決しており、無投票でトランプ現大統領(73)の選出が決まっている。
民主党のおもな選挙結果は以下のとおり。
バーニー・サンダース氏 得票率46・8%(代議員数22)
ジョー・バイデン氏 20・2%(7)
ピート・ブティジェッジ氏 14・3%(3)
エリザベス・ウォーレン氏 9・7%(0)
今回はサンダース氏(78)の圧倒的な勝利となった。注目されていたのは、ネバダ州人口の4分の1を占める南米系有権者が誰に投票するかだ。これまでに選挙が行われたアイオワ州、ニューハンプシャー州は圧倒的に白人が多い(それぞれ91%、94%)。そのため、その二つの投票結果には、移⺠国家である⽶国における⼈種の多様性が反映されにくいと⾔われていた。しかし今回のネバダ州投票では、南⽶系有権者の半数以上がサンダース⽒に投票しており、とりわけ南米系の若者層がサンダース氏をあつく⽀持していることが投票後の調査で分かった。
サンダース氏の快進撃が続く中、予想をはるかに下回る苦戦を強いられているのはウォーレン候補(70)だ。ウォーレン氏は昨年後半までは、最有力候補として挙げられるほどの人気を得ていた。
社会保障などの政策や国家予算の捉え方が似ているサンダース氏と票を争っているウォーレン氏だが、今回のネバダ州選前に行われた二つの州での選挙結果も思わしくない(アイオワ3位、18%、ニューハンプシャー4位、9・2%)。これまでの結果から、「ウォーレン氏は選挙から降りたほうがいいのではないか」という声も上がっていることを、いくつかのメディアは伝えている。
貧しい家庭に育ち、やがて法律を勉強した彼女は、破産法の専門家となり、経済的に苦しい状況に置かれた人々を助ける働きに従事するようになる。
オクラホマのマクファーリン・メモリアル合同メソジスト教会で育ったウォーレン氏は、「隣人を愛する心を聖書から教えられた」と語っており、日曜学校の教師を務めていたこともある。愛唱聖句に「この最も小さな者の一人にしたのは、すなわち、私にしたのである」(マタイ25:40)を挙げ、「私たち一人ひとりの命はかけがえのないもので、神は一人ひとりに行動を起こすよう促していることをこの聖句が思い起こさせてくれる」と語っている。
(動画中では「マタイ26章」と言っているが、25章の間違い)
マタイ25章でイエスは、「すべての国の民がそ(神)の前に集められると、羊飼いが羊と山羊を分けるように、彼らをより分ける」(32節)というたとえを用いて話している。その選別の基準となるのは、貧しい者、病者、旅人、牢獄にいる者に対してどういう行為をしたかだ。
ウォーレン氏が訴えている主要な政策の一つに、学生ローンに苦しむ層の救済がある。1970年から現在までの米国人の平均収入は67%増加しているが、1980~2018年の学費増加率は公⽴で213%、私⽴で129%となっており、平均収入の増加率よりも多い。結果として、4500万人が平均で3万5359ドル(約390万円)の借金をかかえた状態でキャリアをスタートさせている。その総計(およそ155兆円)は、米国史上最も大きい金額だ。金利もかかるために「ドミノ効果」で、学費の完済まで次のライフ・ステージに移ることが難しくなるなど、特に中流階級が受ける影響は大きい。
なお、ウォーレン氏が属する合同メソジスト教会は独自のプログラムを組んで、低金利の学生ローンを貸し出すサービスを行っている。ほかにも多くの民間団体が同様の取り組みを行っているが、過去5年間で学費ローンの総額は3500億ドル(およそ39兆円)増額しており、抜本的な改革なしに改善する見込みはない。そのためウォーレン氏は、「税改革を行えば、学生ローンの95%は救済できる」と有権者に訴えている。
ウォーレン氏はディベートにはめっぽう強い。2月20日に行われた公開討論でウォーレン氏は、マイケル・ブルームバーグ候補を激しく責め立て、話題を呼んでいる。
2005年には、ハーバード大学の法律学教授として、上院司法委員会の委員を務めていたバイデン候補と討論したこともある。中流階級の経済力を守るために長年闘ってきたウォーレン氏は、その後13年から上院議員として登壇することとなる。
戦況は不利だが、ウォーレン陣営には多くの支援金が寄せられており、特に候補者同士の公開討論が行われた後にその額は上昇している。力強いスピーチでウォーレン氏が逆転勝利を手繰り寄せることができるか、それともこのままレースを降りるのか。今後の動きにも注目したい。